意外な一面
今更後悔しても、もう遅い。
2人は無言のままに、車はもと来た道を走り続けた。
その間もずっと後悔していた。嫌なことを聞かせてしまって怒らせたのかと。
同じ道程なのに、行きよりもずっと長く感じられる。
暫くして車はゆっくりとスピードを落とし、見覚えのある場所で停車する。
え、ここは……。
「どうして?」
「あそこだな?」
「そうだけど」
「ちょっと待ってて」
龍也くんがドアを開けようとする。
「どうする気?」
「別に」
車を降りて1人歩いて行く龍也くんを思わず追いかけた。
龍也くんはある車の運転席側で立ち止まった。白のセダン。
そう、『友達』の車だ。
『友達』は、龍也くんの隣に私の姿を見つけ、車から降りてきた。
え、ちょっとまって!
これってよく言う、『私のために、言い争わないで!』みたいな?
どうしたらいいの?
緊迫したムードが辺りを包む。
その時『友達』が開口一番こう言い放ったのだ。
「海彩ちゃん、来てくれたんだ。さあ乗って」
「えっ」
いきなり腕を掴まれて引っ張られた。
突然のことに何をどうすればいいのやら。
「おい!」
龍也くんの呼びかけにも動じない『友達』
「ち、ちょっと待ってよ。引っ張らないで」
「早く乗れよ」
「いやだ」
本当にやめてほしい。
嫌だといっているのだから。
「もういいだろう! 彼女は嫌がってるんだ」
「なに言ってんだ?」
「彼女の手を離せよ」
龍也くんは私の腕を掴んだアイツの手を振りほどいてくれた。
そして私との間に割って入って、睨みをきかせている。
「お前誰だよ」
「誰だっていい。彼女にもう構うな」
「横からごちゃごちゃうるせえんだよ!」
そう言って腕を大きく振りあげ、龍也くんに殴りかかろうとする。
「やめて!」
次の瞬間、龍也くんは拳をかわしアイツにひと言突き刺した。
「お前、カッコ悪いんだよ」
「はん? なんだと!」
「嫌がる相手をムリに引き留めるなんてさ」
「……」
「お前も男ならさ、好きな女の幸せを願ってやるくらいでないと、モテないよ」
「なんだと!」
冷静な龍也くんの言葉になにも言い返せないアイツ。悔しそうに唇を噛みしめている。
アイツは手を上げようとしたのに、龍也くんは気迫でそれを打ち負かした。
最後に龍也くんはアイツにグッと顔を近づけて、低い声でダメ押しをした。
「解ったな」
「あ、ああ」
龍也くんの気迫に負けたのか、アイツは慌てた様子で車に乗り、その場を離れた。
いつもの楽しい龍也くんとはまた違った龍也くんの姿に、頼もしさを感じた。
ああ、この人は、いざとなったら私を守ってくれる人なんだ。
「海彩ちゃん大丈夫?」
いつも気遣ってくれるし、彼の優しい笑顔を見ると安心する。
「うん。大丈夫」
私も笑顔で返す。
「よかった」
ホッと胸をなで下ろす彼。
「龍也くんは?」
「オレ? 大丈夫、大丈夫」
笑いながら言う彼に、ひと言謝ろう。
「嫌な思いさせてごめんね」
「え、何が?」
「だって……」
「嫌な思いなんかしてないよ」
「ほんと?」
「海彩ちゃんが笑顔になるためだったら、嫌なことなんてないよ」
彼の言葉に少し目が潤む。
「龍也くん……」
「あ、もしかして泣いてる?」
「泣いてないもん」
「もう~、泣くなよー」
笑いながらそう言って、頭をなでてくれた。
「ありがとう。とっても頼もしかった」
「どういたしまして」
「大切にされてると感じた」
「当たり前じゃん。海彩ちゃんはオレの一番大切な人だから」
今度は涙があふれてきた。彼の言葉に胸が熱くなる。
「うん」
「よしよし」
彼は頭をポンポンとして、そっと抱きしめてくれた。
「さ、ちょっと遅くなったけど、ご飯でも食べに行こっか」
「行くー」
「夜景はおあずけだなー」
「今度絶対に行こ!」
「おう! 絶対な!」
それから私達は、近くにある和食の店に行った。
またいつものように、たわいない話に花を咲かせ、楽しい時間を過ごした。
本当に彼に出逢えて良かった。心の底からそう思う。
龍也くん、私の大切な人。
あなたに出逢えて良かった。
お読み下さりありがとうございました。
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