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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【序章】 それは突然にやってきた。
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出逢い(2)

折角イケメンと同じチームになったのに、ボウリングが下手な私は……。

 ボウリング大会当日、私たちのチームは係長、ふんわりした雰囲気が可愛い佐藤さん、そして高身長でイケメンの和田さんの4人。

 私の身長は160センチ程度なのだが、見上げて話をする感じなのできっと180センチは超えているであろう。そのイケメンぶりはひときわ目立っているようで、女子社員が見つめてはヒソヒソと話している。


 はあ、本当に私ボウリング苦手なんですよ。ミゾ掃除 (ガーター)ばっかじゃ恥ずかしいな。でももうここまできたら開き直って、下手は下手なりに頑張るしかない。あとはご愛敬あいきょうということで。





 いよいよゲーム開始のアナウンスとともにボウリング大会が始まった。

 係長、佐藤さん、私、和田さんの順で2ゲーム。その合計得点で、団体の順位、個人の順位が決まる。


 やはりあれだけ楽しみにしていただけあり、係長は上手い。次々とスペアやストライクを出している。

 佐藤さんも和田さんもまあ、普通に楽しんでいる感じ。


 私は……。聞かないでっ!

 係長の顔がだんだん強張ってきた気がする。団体優勝なんて本気で狙っていたのかしら?


 佐藤さんとは同じ年の女子同士ということもあり、話が弾んだ。

 和田さんはなんと、年下でした。大人っぽくみえたのに、もうびっくり。

 ……ということは、今年の新入社員ってことか。


 イケメン新入社員の和田さんは、ずっと隣のレーンの少し日に焼けた中背の男性と仲良さそうにしゃべっているけど、同じ職場の人なのかな? うん、きっとそうだ。

 なんか普通な感じの人だけど、優しそう。年上かなぁ。

 

 あ、目があった!


「調子はどう?」


 笑顔とともに気さくにしゃべりかけられ、私も笑顔で答える。


「あ、いえ、私は全然ダメです。ボウリング苦手なので」


「うーん、どれどれ」


 その笑顔がキュートだけれど、それ以外は普通な感じの先輩らしき人は、私のスコアをまじまじと見てはニヤリとしてひと言。


「向いてないな」


 がーん……。


「そうなんですよ、もう、笑って下さい」


 これは冗談っぽく言うしかないよね。


「いやいや、オレも同じようなもんだからさ。向いてない」


 そう言いながら笑う、少し細身だけれど筋肉もしっかりありそうに見える以外は、普通な感じの先輩らしき人。


「なんだぁ、そうなんですか?」


「そうなんですよ」


 その場が一瞬で明るくなった。

 『向いてない』なんて言われてちょっとびっくりしたけど、きっと私に気を使ってくれたのだろう。そしてその優しさを笑いに変えることで、私に気を使わせないようにしてくれたのだ。いい人みたい。

 それに何よりその普通な感じの先輩らしき人の周りには、笑いが絶えないみたいだし。


 それからは、係長そっちのけで若者4人で大いに盛り上がった。

 初めは敬語で話していたけど、その普通な感じの先輩らしき人は同じ年だったことが発覚! ということは同期だったの? 毎年何百人と入ってくる新入社員。『同期っていってもいちいち顔なんて覚えてないよね~』なんて言いながら、もう敬語使いはなくなった。




 楽しいお喋りの時間とともにあっという間に2ゲームが終わり、いよいよ結果発表の時間。


 やはり団体優勝は他チームだった。ちょっと機嫌が悪くなっている係長。なるべく目を合わさないようにしよう。

 でも、私は悪くないよ! 苦手だって散々言ってたんだからね。……でもごめんなさい。

 一応心の中で謝っておきます。


 そしていよいよ個人優勝者の発表。係長は少し緊張した面持ちで待っている。

 ああ、係長頑張って! 優勝して下さい。って言ってももうゲームは終わっているのだけれど。


 結局係長は2位で、なんか微妙な空気が漂っている。


「じゃ、そろそろ帰ろうか」


「はい」


 係長に促され同じ職場から参加した3人で歩き出した時、また目が合った。


「帰り、みんなでご飯食べようよ!」


 ちょっと声が大きいよ、普通な感じの同期くん。係長が恐い顔でこっちを見ているんだから。


 どうする?


 

お読み下さりありがとうございました。


次話「どうする?」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
社内での思い出があるのは、少しうらやましいです。でも、良いことも悪いことも目の前の出来事として映るから大変かな?がんばって!
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