後悔
あの留守番電話から2日。
あんな留守番電話を聞いてから、2日が経った。
龍也くんと一緒に帰ろうと待ち合わせをしていたが、ふと思い出した。
『今度の火曜日、会社の帰りに待ってるから。絶対に来いよ』
『友達』からの留守番電話に入っていた『今度の火曜日』、即ち今日だ。
いつもと変わらぬようにと努めて振る舞ってはいたが、龍也くんには見抜かれていた。
「どうした?」
「え、なにが?」
「いや、なにか心配ごとでもあるのかな、なんて」
どうして解ったのだろう。龍也くんには心配をかけたくないし、第一『友達』の存在すら知らないのに。
「ううん、特にないよ」
「そう? じゃ、夜景でも見に行く?」
「わあ、素敵!」
ゆっくりと車を走らせながら、彼はもう一度私に尋ねた。
「やっぱヘンだよ。気になることがあるなら話してほしいな」
「え?」
「海彩ちゃんはいつもと変わらず明るくって、一緒にいると楽しいよ。でも今日はなんかムリしてる感じがする」
「ムリなんかしてないよ。いつもと一緒だよ」
「一生懸命楽しくしようとしてるじゃん」
……鋭い。
どうしよう。いっそのこと話してしまおうか、それともはぐらかすのか。言いにくい話しでもあるし。
でも、私の態度で不快な思いをさせているなら申し訳ないし。
「オレになにか言いたいことでもある?」
「特にないけど」
「気になることはオレのことじゃないの?」
ああ、龍也くんは自分に対して私がなにか思うことがあると感じたんだわ。
嫌な思いをさせてしまったのかな、これはもう話すしかないかな。
龍也くんとはこれからもずっと仲良くしたいし、一緒にいたい。だから話す。
でも、どう言おう……。
正直に全て話してみよう。それはそれで嫌な思いをさせることになるかもしれないけど、今のままうやむやにしてしまうのも後味が悪い気がする。
そう思って、正直に全てを話した。
龍也くんは黙って話を聞いてくれていたが、『友達』の指定した日が今日だということを話すと、ハザードランプを点滅させゆっくりと路肩に停車した。
彼は、ふうと大きくひと息ついて口を開いた。
「ちゃんと確認しておきたいんだけど」
「うん」
「海彩ちゃんは、『友達』とは、もう関わりたくないんだな。ちゃんと嫌だって気持ちは伝えてあるんだな」
「うん、キッパリと言ったよ。もう二度と会いたくもないし」
「わかった」
彼はそう言うとゆっくりとサイドブレーキを戻して、ハザードランプを消し、SUVをUターンさせた。
「え、龍也くん、どうしたの?」
「……」
「夜景を見に行くんじゃ……」
「ごめん、急用ができた。また今度にしよう」
彼の言葉になにも言うことはできなかった。
どうしたのだろう。あんな話を聞いて、私のことが嫌になってしまったのかな。
もしそうだとしたら……言うんじゃなかった。
今更後悔しても、もう遅い。
でも、龍也くんに隠し事をするのも嫌だ。話さないでいるのは胸が苦しくなる。
でも、話したことによって、彼に嫌な思いをさせてしまったのなら、切ない。
2人は無言のままに、車はもと来た道を走り続けた。
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