ある梅雨の日
梅雨のある日のデート。
雨の日ってなんだか……。
あの綺麗な夕陽を眺めてから、もう何度目のデートだろう。
私のお気に入り、龍也くんの黒のSUVで、今日もお出かけ。
でも、あいにくの空模様。
梅雨だしね。仕方ないよね。
「みごとなドライブ日和だね~」
「ほんっと。見渡す限りのこの清々しい雨雲!」
「まあ、梅雨だしね」
「屋内が無難だね」
雨脚も強くなり、遠出はやめて近くのショッピングモールをぶらぶらすることになった。
「うーん、どうしよっか」
「そうだなぁ。ま、とりあえず早めの昼食といきましょうか」
「ふふふ、まずはご飯ね」
フロアーガイドを見ながらああだこうだと言い合って、結局パスタを食べることに。
サラダに、オニオンスープ、ガーリックトースト。そしてメインのナスときのこのミートスパゲッティ。
スパゲッティが席に運ばれると、その場でチーズを削りながら、好みの量を麺の上にかけてくれる。
チーズ大好きな私は、いっぱいかけてもらって大満足。
「いただきま~す」
と、スプーンの上でスパゲッティを絡めたフォークをクルクル回す。
アツアツのスパゲッティを『ふうふう』しながら口に運ぶ。
う~ん、美味~。
2人とも同じものを頼んだから、2人でクルクルとスパゲッティを絡めたフォークを回し、食べやすい大きさに上手く巻けたら口に運ぶ。
「美味しー」
「美味しいねー」
会話も弾み、調子に乗ってクルクルクルクル。
クルクル……。
きゃあ!
ミートソースがブラウスの胸元に!
わ、どうしよう。おろしたての白のブラウスの一部が焦げ茶色に。
慌ててウエットティッシュでつまみ取る。
こういうシミを取るときは上からこすってはいけないのだ。
まず、つまみ取る。でも、ミートソースは強烈で、うっすらと跡が残ってしまった。
一気にテンションが下がった私。
昼食後もウインドウショッピングなどを楽しんだが、その間もずーと気になっていた。
あることが私の頭から離れない。
ああ、もう今日は早く帰ろう。
「ごめんね。なんか」
「そんなに気にすることないのに」
「でも、気になって気になって、いつもの調子がでない」
「そうだな、テンションだだ下がりだもんな」
家の近くまで送ってもらって、雨の中玄関へと急ぐ。
早くブラウスのシミを取らなきゃ。
あーあ、今日はついてないなぁ。折角のデートが台無しだ。
午後7時、自宅に帰っても真っ暗だ。あ、そうだ。皆は夕飯を食べに行くって言ってたっけ。
玄関からリビングへ。サイドボードの上で赤いランプが点滅している。
リビングの電気をつけてボタンを押してみる。
『メッセージを、1件再生します』
ドキン
大きな鼓動が私の中に鳴り響いた。
今頃……。
私は留守番電話のメッセージを聞いて驚愕した。
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