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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【序章】 それは突然にやってきた。
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出逢い(1)

そう、あれは3ヶ月前……。

 我が社では、毎年新入社員は半年間の仮配属の間に適性などをみられ、半年後の10月1日から正式な配属先での仕事が始まる。

 しかし、最初の1年間はある一定の期間ごとに、さまざまな部署での研修がある。

 その1年の間にいろいろなことを学び、学生から社会人へと変身――いや、成長してゆくのだ。


 


 そう、あれはちょうど3ヶ月前、新入社員が入社式を終え仮配属される4月の半ばのこと。

 入社式の後、まず初めの1週間は、社内で過ごす上で社会人としての心構え、接遇マナーなどを学び、その後仮配属先にて研修を受ける。


 そして毎年5月に開催される新入社員歓迎ボウリング大会。4月になるとその参加者募集が行われる。

 去年は私も新入社員として参加した。


 ボウリング場を貸し切って盛大に行われるが、参加は新入社員以外は任意で、事前に参加申し込みをして参加するということだった。当然ボウリングが苦手な私は今年は不参加のつもりでいた。なのに……。




 今から3ヶ月前の4月半ば。デスクに向かって仕事をしている私の背中越しに、大きな声で話しかけてくる人物がいた。

 張りのある特徴的なその声は、滑舌のいい大きな声は、振り向いて顔を確認せずとも誰の口から発せられたのかは解る。


葉月はづきさん、5月15日の新入社員歓迎ボウリング大会、参加してくれる?」

 

 ドキッとして振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべた係長が立っている。


「え、あ、係長。でも私ボウリング下手なんで、ちょっと無理です」


 苦手なボウリング。今年は不参加のつもりでいたのだ。当然断りたい。


「いや、いいよいいよ下手でも。やったことはあるでしょ?」


 別に謙遜をしているわけではなく、本当に下手なのだけど。


「まあ、ありますけど」


 猪突猛進タイプの係長は、自分がこうと思ったら聞く耳を持たない。


「じゃ、申込用紙に名前書いておくね」


「すっごい下手ですよ」


 これ、マジで言ってるんですけど。


「またまた。下手でもいいよ」


 七三分けの髪型が印象的な係長は、にこにこしながら言う。


「係長は私の実力を知らないんですよ」


 明らかに私の実力をナメている。


「3人1組で申し込まないといけないんだ。よろしく。絶対優勝するぞ!」


 そう言うと係長はそそくさと立ち去った。


「あ、いや、だから下手だって言って……あ、係長!」


 真面目を絵に描いたような係長。あんなに楽しそうにして。わざわざ下手だって言ってる私じゃなくて、他に誘う人いるでしょう!?







 そしていよいよ5月15日。待ちに待っていない新入社員歓迎ボウリング大会当日が訪れてしまった。憂鬱ではあるけれど、申込用紙を出してしまったからには行かないわけにはいかない。

 この催しは、社内のレクリエーションクラブ(若手社員が中心となって社内の色々な催しを計画、実行しているところ)が主催している。

 結構大勢の参加者で、大きなボウリング場も狭く感じるほどだ。

 


 ええっと、私は第6レーンか。メンバーは係長と私と、あと男女1人ずつ。

 よりにもよって係長と同じチームになるなんて、なんか気が重い。


「おはようございます」


「ああ、おはよう!」


 大きな声でハキハキとした挨拶。身長は私より少し高い位なのに、態度が堂々としているからか、実際よりは大きく見える。係長の張り切った嬉しそうな顔……ううっ、ごめんなさい。チームでの優勝はムリです。どうぞ個人での優勝を狙って下さい。申し訳ないやら情けないやら。


 あとの2人は知らない顔だな。


「おはようございます。総務の葉月はづきです。よろしくお願いします」


「おはようございます。工務の佐藤です。よろしくお願いします」


「おはようございます。国営の和田です。よろしく」


 佐藤さんはどうも同じ年みたい。ふんわりしたタイプで話が合う。

 和田さんはよく見ると……ん? イケメン!?

 はあ、本当に私ボーリング苦手なんです。ミゾ掃除 (ガーター)ばっかじゃ恥ずかしいな。折角素敵な人と同じチームになったのに!



*国営……国内営業部



お読み下さりありがとうございました。


次話「出逢い(2)」もよろしくお願いします!

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