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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第1章】 お互いの気持ち
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楽しいひととき

どうしてだろう、妙にドキドキする。

入社2年目の彼が、どうして会議に?

 16時、いよいよ会議が始まった。 少し緊張している自分がいる。

 彼の他にも若手社員が数名出席していたようだが、転勤前の会議という名の説明会なのだろうか。


 解らないことでいろいろと思いを巡らせても仕方がない。今は目の前の仕事に集中して、後で彼に聞けばいい。



 18時の会議終了後、お茶を引き上げに会議室に向かう。

 途中、彼とすれ違った。


「お疲れ様でした」


「お疲れ様でした」


 そう挨拶を交わし、お互い余計なことは言わず自分のするべきことに向けて歩いて行った。

 内心穏やかではない。19時の待ち合わせに間に合うように、残業も早々に切り上げる。


 正門を出てすぐ近くにある『社員専用駐車場』まで歩きながらも、つい憂鬱になってしまう。

 

 考えても仕方がないと解っているのに。

 全ては彼の話を聞いてからのことだと。



 


 それは突然やってきたこと。


『オレ、転勤決まった』


『え』


『オレ、転勤することになった』


 お昼過ぎのデスクでのやり取りを思い出す。



 駐車場で彼が車を止めている場所まで行くと、もう彼は先について車の中で待っていた。

 軽く会釈をして車に乗り込む。


「お疲れ。早かったね」


「うん、会議終わりが仕事終わりだったから」


「そっか」


 お互いまだ転勤のことについては話さない。むしろその話題を避けている。

 ちゃんと落ち着いた状態で話をしたいというのを、お互いに感じ取ったからかもしれない。


「ご飯行く?」


「そうだね」


「どこ行く?」


「うーん。今日は忙しかったし、もうお腹ぺこぺこだからどこでもいいよ」


「ホントにどこでもいいの? オレが連れて行ったら『え~、こんなとこヤダ~』なんて言わない?」


「ふふふ、言わない言わない」


「じゃ、びっくりしろよ!」


「え~、なんか怖いんですけど~」


 なんて言っていつものように笑い合いながら、彼は車を出した。


 彼の運転は穏やかで、とても安心できる。

 自動車メーカーに勤めているので、事故や飲酒運転は以ての外。

 常に安全運転を心がけている。


 さあて、どこに連れて行ってくれるのかな。楽しみ。


 20分ほど車を走らせると、サーモンピンクの外観で駐車場の広いオシャレなレストランに着いた。


「ここでいい?」


「うん、素敵なところね」


 サーモンピンクで彩られたその米国風レストランは、アメリカの西海岸がモチーフになっているようだ。

 出入口のドアの横には船の『舵』をモチーフにしたオブジェが飾られて、床はサンタモニカのビーチにある桟橋を思い起こさせるよう。

 店内は広く開放感のある木造。四角や丸のテーブルが区域ごとに配置されている。


 壁にはサンタモニカの風景写真が飾られていて、その海岸沿いの椰子の木や街並みが、どこか南国を思わせるアメリカ西海岸の穏やかな気候がうかがえる。そして壁際のスペースには碇のオブジェ。


 お店の人に席まで案内され、窓際のテーブルにつく。


 まずは食事を楽しもう。聞きたいことは山ほどあるし、話したいことも山ほどあるはず。


 だが、まず食事を楽しもう。話はそれからだ。


 妙に緊張しながらも、楽しい時間をお互いに過ごせた。

 食後のコーヒーが運ばれてきて、いよいよ今日の本題だ。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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