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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第8章】 目まぐるしい日々
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思いもしなかったこと

 今日龍也たつやくんは転勤先の千葉県へ行った。そう。帰ったとは言いたくない。帰るのはあくまで地元であってほしいから。

 だから私は敢えて「行く」と言いたい。それなら地元には帰ってくると言えるから。



 浩ちゃんが一緒に見送りに来てくれたお陰もあり、別れ際は明るく笑顔で見送ることができてよかったと思う。

 それでもN700系の後ろ姿はどことなく寂しげで。


 私はそのブルーのラインが入った車体が見えなくなるまで見つめていた。


 とその時……。



 ぐうとお腹の虫が鳴く。


「あれ? なんか虫が鳴いたみたいだよ」


 冗談っぽく言ってみる。


「実は朝からなんも食べてなくて、お腹ぺこぺこなんだよ」


 お腹をさすりつつ照れ笑いをしながら言う浩ちゃんは、たった1歳しか違わないけど、それでも年下には変わりなくて。

 ちょっと癒やされるというか、可愛いというか。

 お寝坊して食べる時間がなかっただなんて、子供みたい。


「そういえば、お腹すいたね」


 微笑みつつ、今になってお腹がすいていることに気づいた私。


「じゃ、行きますか」


 浩ちゃんのその言葉で、結局ご飯を食べて帰ることになって。


 なんてことはない普通のおそば屋さんで軽くすませたけれど、話は盛り上がって。

 龍也くんと離ればなれになる寂しさを一時いっときは忘れることができた。


 その後喫茶店に場所を移し、またとりとめのない話をする。

 ああ、なんか楽しいなぁなんて思ったりして。

 でも、また家に帰って自室でひとりになると、龍也くんと会えない寂しさが押し寄せてくるんだろうな、なんて考えたりして。


 帰りはやはり紳士的に自宅近くの公園まで送ってくれた。

 年下、年下と思うからだろうか。少しのことでも紳士的に大人びて感じてしまうのは。

 性格や態度に、年齢なんて関係ないのだけどね。


 もっとそのひと自身を見つめて感じていかなければならないと思う。

 ひとそれぞれ。性格に年齢は関係ないと、改めてそう感じた。


 ああ、浩ちゃんとだったら、いつも一緒にいられるのにな……なんて。


 なんか今まで思いもしなかったことが頭をよぎる。


 公園での別れ際に「あの……」と、なにか言いにくそうに話す浩ちゃん。


「なに?」と聞き返すと、「いやっ、なんでもない」って打ち消す彼。


 うっ。

 なにか言いたいことがあるなら、言ってよ!


 とは言いだせず「そっか」って答えたけど、その様子が気になって。


 言いかけたのなら、最後まで言ってほしいし、言えないのなら最初から言わないでほしい。

 中途半端はもやもやして気になるから。


 家に帰ってからというもの、龍也くんと浩ちゃんのことが交互に頭をよぎる。


 もう、どうしたらいいの!?



お読み下さりありがとうございました。


本日でこの『遠距離恋愛の果てに』は、連載一周年を迎えました。

今後ともよろしくお願いします!

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