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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第8章】 目まぐるしい日々
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N700系の後ろ姿

 1月5日。

 今日龍也たつやくんは転勤先の千葉県に帰る。いや、帰るとは言いたくない。帰るのはあくまで地元であってほしい。なら、どう言えばいいのだろう。戻る? それも違う気がする。

 私には「行く」という表現がいいのかもしれない。それなら地元には帰ってくると言えるから。

 どちらにしても、また離ればなれになることには変わりない。心も揺れるのは仕方ない。



 今日は、久しぶりに浩ちゃんも一緒に見送りに来てくれることになった。

 年明け早々、哀しい見送りなんて切なすぎる。浩ちゃんが来てくれることで、楽しい見送りになりそうだ。


 浩ちゃんとはあの寂しいもの同士・・・・・・・一緒に楽しく・・・過ごしたクリスマス以来の対面である。


 浩ちゃんはまだ入社1年目ということもあり、研修期間中。新入社員は、昨年4月に各部署に仮配属されてから3ヶ月間、それぞれの部署で実際に仕事をしながら大まかな流れを把握してゆき、その間に学生気分からしっかりとした社会人としてのマナーを身につけていったはず。


 そうして社会人としての自覚が芽生えてきた頃、そう、3ヶ月後の7月からまた3ヶ月周期でいろいろな職場で実際に働きながらの研修期間に入った。工場研修のあとは、販売会社での営業研修など、1年間は研修づくめだ。

 昨年末までの販売会社での営業研修も無事終了したようだし、今年からは1月単位で部品センター、お客様相談室、海外企画部での研修が待っている。それを終えれば、4月からは本社での配属先にて本格的に仕事に勤しむことになる。

 2年目。そう、先輩になるのだ。

 しっかりと自覚して、後輩から信頼される良き先輩になってほしいものだ。


 と、偉そうに言っているが、自分がそうできているかは、棚の上の方に追いやっておこう。

 



 N700系の美しい流線型のフォルムがホームに入ってくる。

 いよいよかと思うと少し寂しい気もするが、また会えるし電話でも話せるし。

 そう言い聞かせて笑顔を作っていると、龍也くんが察したのか、そっと抱きしめてくれたけど。


「もう、浩ちゃんがいるのに」


 そう。人前でいきなりそんなことをされると戸惑ってしまう。

 私は素早く彼の腕をすり抜ける。 


「寂しそうな顔するからだよ」


 いくら仲良しだといっても浩ちゃんに見られていると思うと……。


「恥ずかしいよ」


 他人の前で抱きしめられるなんて、恥ずかしいに決まってる。


「実はオレも」


 人差し指でほっぺをかきながら照れた感じで言う彼の言葉で、場が明るくなった。

 けど、恥ずかしいならやめておけばいいのに、と思ってしまうけど。


「実は俺も」


 浩ちゃんまで。見ている方が恥ずかしいよね。

 みんなで大笑いして、寂しい気持ちもどこかに消えていった。


 ドアが開き、龍也くんが乗り込む時には「またな」とハイタッチで。


 別れ際は、明るく笑顔で見送ることができてよかったと思う。

 それでもN700系の後ろ姿はどことなく寂しげで。


 私はそのブルーのラインが入った車体が見えなくなるまで見つめていた。


 とその時……。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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