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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第1章】 お互いの気持ち
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会議室にて

これからは、また平穏な日々が送れると思っていたのに……。



 次の日、多少の残業はあったが、19時には会社を出ることができた。仕事中は忙しくて、帰りに待っているイヤなことは考えるヒマがなくて良かった。いざ仕事が終わって帰ろうとしたときに、ふと思い出してしまった。

 やはり『友達』には会いたくない。どうすればいいか少し考え、いつも使っている正門ではなく、南門から出て少し遠回りになるが、ひとつ遠い駅まで歩いて行くことにした。


 たまにはいつもとは違う道を通るのもいいものだ。おかげで学生時代の友人にバッタリと出会うことができたから。仲が良かったのだけど、お互い社会人になってから忙しく、なかなかゆっくりと会う機会がなかったので、久しぶりの再会に、軽くお茶でも飲もうと近くのカフェで話に花を咲かせた。

 また近いうちに会おうと約束し、帰路につく。



 ようやく家に帰り、今夜は早く休もうといつもより早い時間に眠りについた。

 ……と言いたいところだが、寝る時間になって、また思い出した。今日のことが気になってなかなか寝つけない。

 そもそも『友達』は、その場所に来ていたのだろうか。

 もし来ていたのなら、本当に私が行くと思って待っていたのだろうか。来なかったことの意味を理解してくれたのだろうか。そして来なかった私のことを諦めてくれたのだろうか。



 なんて、ひと月半前にはそんなことをいろいろと考えていたなぁ、などと思っていると印刷終了のブザーが鳴り、我にかえった。



 そうだ、会議の準備の為に印刷室に来ていたのだった。


 大急ぎで資料をセットして会議室に向かう。

 1部20ページの小冊子にして25人分用意し、会議室の机に配置するのだ。


 全ての準備が整ったのが15時すぎ。これから一度デスクに戻り、各部署に招集をかけ雑用をすませてから、お茶の準備を始める。


 15時50分、会議室に全員揃ったのを確認して、会議室横の給湯室から会議室までお茶を運ぶ。

 お盆にのせて運ぶときは、自分の身体に近い場所に重たいもの、この場合はお茶の入った湯飲み茶碗を配置する。その方が安定がいいからだ。


 お盆に茶托を重ねて置き、湯飲み茶碗はお盆に5客。そのくらいが丁度運びやすく、失敗も少ない量だ。2人で手分けして25人分を運ぶ。


 そのお茶をのせたお盆を片手に、会議室のドアを『コンコンコン』と3回ノックした。

 会議室に限らず入室の際のノックは3回。


 『コンコン』とする2回のノックは『トイレノック』と言って、入室の際は使わない。社会では3回ノックが正式なノックなのだ。


 「どうぞ」と言う声にドアを開け、「失礼致します」と軽く会釈をして会議室に入る。


 上座から順にお茶をおいてゆく。お盆の上で1客ずつセットし、5客を机のそれぞれの場所に置いて、部屋を出ようと出入り口に向かう途中に、ある人物と目が合った。ここは会議室。お偉い方も集まって、もうすぐ会議が始まる。


 お互い気づいて一瞬目をまるくしたが、そのまま知らぬふりで会議室を後にした。


 どうしてだろう、妙にドキドキする。

 まだ入社2年目の彼がなぜこの会議に出席しているのか。転勤となにか関係があるのだろうか。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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