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マイナス1-02

 誰も見ていないのは確認済み。

 ミルド国の首都はすぐ近く。

 枠沢はその首都ワードへ向けトボトボと。

 人々の容姿、様子をつぶさに観察する。

 姿形は地球人と少し異なるのみ。

 道行く人々がお互いに交わしている言葉も何とかわかる。

 「これなら大丈夫だ」

 枠沢はこの惑星の交通機関を使い

首都ワードへ。

 目指すはーーーーー。

 政府直属の研究機関はガードが厳しい。

 だから大学関係の研究所。

 事前の連絡は地球から直接行っておいた。

 ワード国立大学。

 地球風に訳すとそうなるのか。

 とにかくそこの遺伝子研究所へ。

 この惑星ラーグの国の一つ、

ギーメル国の

ドレグ大学教授イーレスと名乗って。

 あまり名の知れた人物の名を使うと

顔を知られている恐れもある。

 そのため。

 そのあたりの調査もしたつもりだ。

 中へ案内される。

 応対にはボーレムという教授が出て来た。

 「初めまして」枠沢。

 「こちらこそ」

 ボーレムは枠沢を値踏みするようにーーーーー。

 一瞬。

 しかしすぐに笑顔で応じた。

 「それで今日はどういう御用で。

 私どもが今度は発表した

遺伝子理論について

質問がおありだとか」ボーレム。

「はい。

 私も前々から第二周期生物を第五周期、

金属周期へと変える研究を行ってきましたが。

 先生の今回の研究を見ましてぜひ」枠沢。

 枠沢がうまくリークしたものだ。

 第五周期云々という研究内容は。

 この惑星の研究者たちは

その第五周期にうまく飛びついてくれた。

 他の多くの惑星では

リークしても

全く相手にもされなかった。

 ボーレムは異国の名もない大学からの客に

どうしたものか。

 しかしまあーーーーーせっかく。

 「こちらへどうぞ」

 研究室内を。

 「これは」

 枠沢はある装置を。

 「これは顕微鏡ですが。

 もちろんご存知で」

 「はいーーーーーもちろん。

 ですがーーーーー。

 この装置で」

 内部を覗き込む。

 たいしたことはない。

 良くこんな。

 アッ!、イヤ。

 「実際、どうやって」枠沢はごまかした。

 「それには少しテクニックがありまして。

 論文をお読みになられた。

 それなら」

 そう言って実際に見せる。

 電気泳動装置が作動し。

 DNA内の酵素を。

 まだ第二周期の段階だが。

 それをどうやれば

置き換えられるかの基礎実験の段階だ。

 分子合成装置に至っては

影も形もない。

 あれだけリークしたのに。

 どうして。

 まあ地球でのリークは今のところ控えてはいる。

 モンローの奴。

 何をするか。

 DNAの構造解析にしてもーーーーー。

 基本的な考え方が間違っているため

お話にならない。

 DNAというのは

四、五種類の基本分子の結合体だと考えているらしい。

 全くーーーーー。

 しかしそれは何もこの研究所だけの話ではない。

 この惑星の人々全てが

そう信じ込んでいるのだから

始末が悪い。

 とにかく一通り説明を受ける。

 「いかがですか」ボーレム。

 「いえーーーーー。

 素晴らしい」枠沢。

 他に言う言葉はない。

 地球でもそうしてきた。

 そうしないと大変な事に。

 モンローの二の舞だ。

 「これでまた一歩」枠沢。

 「そうなれば光栄ですな。

 しかし先はまだまだです。

 顕微鏡にしても

さらに精度を上げていかなければ」

 「なるほど」枠沢。

 「それで先生の御研究は」ボーレム教授。

 彼にしてみれば

ただ単に儀礼的に聞いてみたに過ぎない。

 枠沢はーーーーー。

 言いたくて仕方がない。

 のど元まで出かかった言葉を

何とか飲み込んだ。

 「いえ、私の研究などはまだまだ。

 到底先生には」

 と言うのがやっと。

 自らの研究成果を

他人に知ってもらいたいというのは

研究者のどうしようもないさが

とでもいうべきか。

 「いえ。先生の方法とはまた別の方法で。

 アッ、イエ」うっかりと。

 「どのような」

 枠沢はボーレムの顔を。

 “地球でこれをやった時にはーーーーー

散々叩かれたからなあ。

 相手にされなかった。

 自前の顕微鏡でーーーーーDNAの構造を解析し。

 それを発表したのだがーーーーー。

 そのせいで。

 しかしまあここならば。

 その手の研究も盛んらしいしーーーーー。

 それにもしそうなってもーーーーー。

 他の惑星に行けば済むか”

 「これをご覧ください」

 枠沢は持っていた研究資料を差し出した。

 資料と言っても一部だ。

 既にこの惑星のインターネットにも載せてある。

 「これは」

 「イエ、私が造った顕微鏡。

 構造はその一枚目に。

 それで調べた結果はーーーーーこのページに。

 どうも-----。

 どう調べてもそのようになりましてーーーーー。

 このように方々の研究室を」枠沢。

 「これかね」ボーレムは。

 急に険しい表情に。

 「本当にこうなったのかね。

 何かのミスではーーーーー。

 DNAは君も知っているだろう。

 特定の構造を持つ

数種類の基本分子によって構成されているんだ。

 それが多数集まって。

 それがーーーーー。

 こうなるはずはない。

 実験のミスではーーーーー。

 ンー。

 これが顕微鏡か。

 ンー」考え込んでしまった。

 「やはり、そうですか」枠沢もガッカリ。

 少し考えて。

 「いえ。先生のご意見をお伺いしたくて」

 「意見と言われてもーーーーー。

 とにかくまあ検討はしてみてあげるが」

 「それはーーーーーどうも」

 枠沢は他の研究所へも足を運ぶことにした。

 「私はこれから少し用が。

 このような形で押しかけて来て

まことに失礼ですが。

 ーーーーー。

 これで」枠沢。

 「用と言いますと」

 「はいーーーーー。

 他の大学にも約束が」

 「他のーーーーー。

 ああ、そういう事か」

 「はい、ご意見を。

 私の国もだいぶ回ったのですが。

 全く」

 「なるほど。

 しかしこの顕微鏡の実物というモノも

見てみないとねえ。

 本当に機能するのかね」

 枠沢はニコリと。

 「それはーーーーーありますか」

 枠沢はそこを後に。

 その日のうちに数大学を回った。

 そして地球へと。

 枠沢は地球の玄希大学で教授をしている。

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