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第123話「天職?」

 コンちゃんはいつも「ポヤン」としているの。

 わたしはいつも仕事をしてるのに…

 って、学校ではみどりが「委員長」になりました。

 ポン太も「級長」任命なの。

 むむむ、みんな、押しつけられてないですか?


 今日もパン屋さんはのんびりした時間が過ぎているんです。

 のんびりした……

 のんびりした時間でも、やる事はあるんですよ。

 花壇の手入れとか駐車場脇の草むしりとか。

 トレイやトングをきれいにしとかないといけないの。

 草むしりは店長さんがやってくれてます。

 わたしはトレイを拭いているんですよ。

 で……コンちゃんはどうしてるかというと、定位置でぼんやり。

 細めた目でテレビを見てるんです。

 まぁ……いつもの事と言えばいつもの事……なんですけどね。

 あんな女キツネ、いないと思ってお仕事お仕事。

「これ、ポン」

「!!」

「お茶」

「!!」

 わたし、笑顔、引きつるの。

 お茶をいれてコンちゃんのテーブルへ。

 湯呑を置く手にもついつい力、こもっちゃうの。

「コラー!」

 うわ、コンちゃんなに大声あげて!

「なんじゃ、ポン、丁寧に置かぬか、お茶がこぼれる」

 む~、今度はわたしが怒る番ですよ。

「コンちゃん、ちょっとは手伝ったらどーですかっ!」

「は?」

 わたし、怒ってるんだけどコンちゃん「ポヤン」とした顔なの。

 すごい怒って言ってるのに、どーしてこうも「ポヤポヤ」した顔が出来るんでしょ。

「わたし、さっきからトレイ拭いたりしてるのに!」

「ご苦労」

「ご苦労じゃなーい!」

「なんじゃ、さっきからプリプリ怒りおって」

「コンちゃんぼんやりしてないで仕事したらって言ってるの!」

「ぼんやりなどしておらん、テレビ見ておる」

「怒るよ!」

「もう怒っておるではないか」

 モウ、チョップなんだから!

「痛いではないか、よすのじゃ」

「解って言ってますよね! ね! ね!」

 わたしがチョップしていると、店長さんが草むしりから戻って来ました。

「ふう、草むしっても、すぐに生えてきちゃうよなぁ~」

「店長さん店長さん!」

「何? ポンちゃん? 麦茶ある、冷たいの」

「ちょっと聞いてください、コンちゃん何もしないんですよ」

「……」

 わたし、コンちゃんにチョップしながら言うの。

 店長さんあきれた笑みを浮かべて、

「ポンちゃん、それって前もあったよね」

 そーなんですよ、106話の事ですね。

「神さまは何もしないもんだよ」

 って、店長さん言いながら一緒になってコンちゃんの頭にチョップするの。

「でもでもでも!」

「ポンちゃん、そんなに怒らないでも」

「わたしがトレイ拭いていたら『お茶』ですよ」

「あ、そりゃ怒るわ、怒っていいよ」

「でしょ! でしょ!」

 店長さんが味方についてくれました。

 今日こそはコンちゃんをやっつけちゃうんだからモウ。

 コンちゃんは……さっきからチョップ受け続けて「怒りマーク」はじけまくり。

 ああ、髪がうねってきましたよ。

 爆発寸前、爆発しちゃう!

「コラー!」

「……」

「おぬしら、わらわを何と心得ておるのじゃ」

 店長さんニコニコ顔で、

「女キツネ」

 わたし、先に店長さんに言われちゃったから、ちょっと考えて、

「ナマケモノ」

「コラー!」

「なに、コンちゃん、店長さんの『女キツネ』はスルーでわたしの『ナマケモノ』には『コラー!』なんですか」

 コンちゃん、頬をプウと膨らませながら、

「わらわ、キツネなので女キツネはいいのじゃ!」

「ナマケモノですよね?」

「ポン、わらわは神ぞ神っ! なんたる言いようっ! 無礼者っ!」

 今日は負けたくない気分です、攻めちゃいましょう。

「じゃ、神さまだったら術でトレイを綺麗にしてほしいなぁ~」

「なんじゃとー!」

「神さまだったらできますよね~」

「むうっ」

 わたし、思うんです、コンちゃんの術を使ったらきっとトレイを拭くのなんて「朝飯前」。

 でもでも、なんでそれをやってくれないんでしょうね。

 コンちゃん、ギュッと拳を作って震えています。

 術を発動するのかな?

 それとも怒って逃げるのかな?

「わ、わらわ、ここでは後輩なのじゃ」

「は?」

「ここで一番先輩なのはポンなのじゃ」

「はぁ……」

「一番先輩が、一番仕事出来るものなのじゃ」

「……」

「わらわの術など、ポン先輩にはかなわんのじゃ」

 いきなりどこからともなくハンカチ出てきました。

 コンちゃん、そんなハンカチで涙を拭うしぐさをしながら、

「わらわなぞ、いつまでたってもポン先輩には及ばんのじゃ」

「……」

「クスン」

 あー、久しぶりに出ました「クスン」。

「クスン」はウソ泣きなんですね。

「わらわなんか、仕事も出来ないで、いらん子なんじゃー!」

 って、お店を飛び出して行っちゃいます。

「逃げ……ましたね」

「逃げたな……」

 わたしと店長さんため息まじりで言うの。

「じゃあ、先輩として頑張りますか」

「ポンちゃん、それでこそ先輩」

「店長さん、持ち上げてないでコンちゃんにお説教してほしい」

「前も言ったよね、コンちゃんに何か期待する方が」

「でもでも、いつもゴロゴロ・グダグダは許せない」

「その気持ちもわかるんだけどね」

 店長さん笑いながら、

「でもでも、ポンちゃん、コンちゃんに復讐できるかな?」

「やってみせます、あの女キツネに仕事させるんです」

「ポンちゃんには無理な気が」

「そうですか?」

 店長さん笑いながらバスケットを出して、

「村長さんから注文あったから行って来て」

「はーい」

 わたし、バスケットを持って出発です。


「配達でーす」

「ポンちゃんいらっしゃい、せっかくだからお茶していかない?」

「いいんですか? じゃ、ゴチになりま~す」

「ふふ、ちょっと暇で、話相手が欲しかったのよ~」

「わたしなんかでいいんですか?」

「いいのよ……で、ちょっと聞きたい事があるんだけど……」

「?」

「あの髭、最近何か悪さ、してない?」

「は? 髭? 吉田先生?」

「そう、吉田先生」

「悪さ……」

 吉田先生はいつも授業やってはいます。

 めんどうくさそうな顔で。

 でも、嫌々でも、とりあえずはやっているんです。

「悪さとは?」

「そうねぇ……」

 村長さん考える顔、腕組みしていたんですが、

「うーん、そう言われると本格的な悪さはしてないかしら」

「村長さん村長さん、本格的な悪さってなんですか?」

「うーん、そうねぇ、子供を、生徒を騙くらかすとか」

「だまくらかす……」

 わたし、すぐに思いつくの、

「あのあの!」

「何、何か悪さしてるの?」

「生徒をだまくらかす……ってですね、ポン太にお酒を造らせるのってだましてますよね」

「あー!」

「確か長老にお酒をプレゼントするのが……」

 村長さん、急にバツの悪そうな顔をして、

「あれは……結果オーライ」

「そ、村長さん……」

「だってポン太くんのお酒おいしいのよ、売れてるし、村おこしになってるし」

「でも、だましてるんですよね」

「ポン太くん、喜んで造ってるじゃない」

「だから結果オーライなんです?」

「そう」

 って、村長さん乾いた笑い。

「もしかして、村長さんもだました側だったとか?」

「それはないわよ~」

 でもでも、なんだか結果そっちになってませんか?

 まぁ、つっこむと村長さん怒ってチェンソー持ってくるかもしれないからスルーしときましょ。

「ともかく、あの髭、何かやらかしてないか、情報ちょうだいね」

「もしもチクったらどうするんです」

「叩く」

 村長さんチョップを振りおろすしぐさ。

 まぁ、吉田先生ちょっとくらいやられてもへっちゃらそうだから、なにか荒探しましょう。

 村長さんと吉田先生の「ど突き漫才」も見たいし。

 わたし、出されたお茶を飲みながら学校を見ます。

 村長さんも一緒になって目をやるの。

 学校では……むむ、授業じゃない「なにか」をやってますね。

 ちょっと行ってみましょう。


「よーし、じゃぁ、俺の一存で決めちまうぞ」

 吉田先生、みんなをにらんですごんでいます。

 でも、生徒のみんなはニコニコしてますね。

 なにを「決めちまう」んでしょ?

「よーし、学級委員長をみどりだ!」

 パチパチパチ! 拍手はくしゅ!

 みどり、席を立ってペコペコしてるよ。

「よーし、みどり、一言だ一言」

 吉田先生、みどりの背中を叩いて言います。

 みどりもなんだか目を輝かせて、

「ふ、ふんっ! しょうがないわね、委員長やってあげるわよっ!」

 あいかわらずツンツンですね。

 って、吉田先生、今度はポン太を見て、

「級長はお前だ、ポン太」

 ポン太、引きつった笑いです。

 しぶしぶ席を立つと、

「足りない事もあるかと思いますが、よろしくお願いします」

 って、レッドが吉田先生のズボンを引っ張ってます。

「ねーねー!」

「おお、レッド、どうした」

「ぼくは? ぼくは!」

 吉田先生、レッドを抱きあげて……すぐにポン太に渡してしまうと、

「よーし、レッドは級長補佐だ補佐、すごいなー」

「わーい、ほさ! ほさ!」

 レッド、喜んでますね。

 級長補佐ってなにするかわからないけど、よかったですね。

 よかった……よかったのかな?

 うん? 級長とか……委員長とか……補佐とか……役職?

 わたし、一緒に見ていた村長さんをゆすります。

『あのあの!』

『何? ポンちゃん? 小声で?』

『委員長とか級長ってめんどうくさくないんですか?』

『どうかしら……』

 村長さん考える顔。

 ちょっと近くの千代ちゃんを捕まえましょう。

『ねぇねぇ、千代ちゃん』

『何? ポンちゃん? 小声で?』

『委員長とかめんどうくさくないんです?』

『え?』

『掃除をしたりするんじゃないんですか?』

『掃除はみんなでするかな?』

『じゃあ、委員長はなにするんですか?』

『委員長は学級会の時の司会とかかな?』

『はぁ……じゃ、級長は?』

『級長はプリント持って行ったりかな? 日直や委員長もやるけど』

『……補佐は?』

『私、初耳』

 千代ちゃん笑ってます。

 わたし、ついつい渋い顔になっちゃいます。

 村長さんをゆすって、

『あのー』

『何? ポンちゃん?』

『級長とか委員長とか雑用係みたいですけど……』

『あ、やっぱりそうなんだ、ポン太くんの級長は適任じゃない?』

 ポン太とみどり、前に立たされて早速なにかやらされるみたい。

「それじゃあ、次の演芸会の出し物について決めたいと思います」

「アンタ達、何がやりたいのか言いなさいよっ!」

 ポン太もみどりも違和感ないですね。

『みどりちゃんの委員長もいいんじゃない?』

『それってやらされてるんですよね?』

『でも、二人は適人よ、絶対』

『吉田先生の押しつけじゃないです?』

『そうねぇ、そんな感じかしら……ちょっと呼んでみましょ』

 ポン太とみどりが学級会をバトンタッチして暇になった吉田先生。

 村長さんが手招きすると嫌そうな顔でやってきます。

「なんです、校長」

「ちゃんと多数決とかとったんでしょうね? 級長と委員長決めるの」

「見てたでしょ、ちゃんと多数決しましたよ」

 わたし、思わずつっこむの。

「えっと、しょっぱなで『一存』って言ってましたよね」

 吉田先生ニヤニヤして拳を作ると、

「俺様が白と言えば黒も白」

「とんだ独裁ですね」

「ポン太、メガネで級長顔じゃねーか」

「はぁ!」

「みどり、おでこ広くてメガネで委員長顔じゃねーか」

「かかか顔で決めるんですか!」

「そんなもんだろ」

 村長さんも吉田先生をチョップしながら、

「ちょっとはちゃんとやったらどうですか」

「面倒くせーじゃねぇか、どうせ級長も委員長も誰もやりたがらねーし」

 やっぱり嫌な役回りみたい。

 でもでも、なんだか村長さんはニコニコ。

「村長さん、ここでニコニコしたらダメですよ!」

「え? 何で? わたしもポン太くんやみどりちゃんがいいと思うもん」

「民主主義はどこに行ったんですか? 死んだんですか?」

「そんなの、どこにもないのよ?」

「えーっと、村長さんが、校長先生がそんな事言っていいんですか?」

「私、ちゃんとダメ教師を折檻してるわ」

 って、ニコニコしながら力ないチョップを続けるの。

 吉田先生も頭を低くして、チョップしやすくしてますね。

「痛いー! たすけてー!」

 って、全然痛そうにないですよ、とんた茶番です。

「ポン太くんやみどりちゃんなら、私の言う事聞いてくれそうだし」

「俺もそう思ったんですよ、校長」

「ボンクラにしてはなかなかの人選」

「でしょ」

「教師二人がそんなでいいんでしょうか?」

 って、わたしが言うと、二人、にらんで返すの。

「私、絶対二人でよかったと思うの」

 村長さんあいかわらずニコニコ。

「ポンちゃんよぉ、俺の人選に文句あるのかよぉ」

 吉田先生、もう悪役ですよ。

 ここでひるんじゃダメ。

 絶対わたしが正しいもん。

「こーゆーのは人としてダメだと思うんです」

 途端に村長・吉田先生、笑顔になって、

「二人とも人間じゃないし!」

 ああ、ここに汚い人間が、悪い大人がいます。

 今、ポン太と目が合いました。

 早速テレパシーしてみましょ。

『ポン太ポン太!』

『ポン姉、さっきから後ろで何やってるんですか?』

『級長なんてやらされていいんですか!』

『プリント配る係だからいいです、もう決まってるみたいだし』

『ポン太はそれでいいんですかっ!』

『大人のわがままは黙って聞いてた方が波風立たないんですよ』

 ポン太、すましたもんです。

 むう、こんな聞きわけのいいのが、大人を、人間をダメにするんです。

『みどりみどり!』

『なによ、アンタ!』

『委員長なんて言われて……雑用係ですよっ!』

 みどり、一瞬は固まったけど、

『ふん、ワタシがその雑用係やってあげるわよっ!』

 って、ポン太、黒板をコツコツと指示棒で叩いて、

「では、学芸会の出し物について~」

 むう、確かにポン太とみどり、お似合いですね。

 いい人選って思っちゃいますよ。本当に。


 わたし、お店に帰って来ました。

 テレビの前ではコンちゃんがぼんやりしています。

「……」

 わたし、そんなコンちゃんの席の斜め前に座って、一緒になってテレビを見るの。

「おお、ポン、どうしたというのじゃ」

「わたしもポヤンとするの」

「ほほう、一緒にポヤンとするかの」

 一緒になってテレビを見ます。

 お昼のワイドショーなんかやってるの。

 でもでも……

 なんだか……

 わたし、すぐに我慢できませんでした。

「おお、ポン、どうしたのかの」

「なんだかわたしには合ってません」

「はぁ?」

「トレイでも拭いています」

「うむ、ポンにはそれが似合っておる」

 わたし、レジに立ってトレイやトングを拭くの。

 奥から店長さん出て来て、

「おお、ポンちゃん、頑張ってるね」

 わたし、拭いている手を止めて、コンちゃんを一度チラ見。

「学校でみどりが委員長にされてました」

「へぇ、みどり、頑張ってるね」

「わたし、絶対やらされてるって思ったけど……」

「?」

「似合ってるかなって思いました」

 店長さん、ちょっと考える顔をして、すぐに頷きます。

「もしかしたら、ポン太くんも何かやらされてなかった?」

「ええ、ポン太は級長さんなんですよ」

「ふふ」

「二人とも、なんだか合ってるかな~って」

「二人とも真面目そーだもんね」

「わたしもコンちゃんみたいにポヤンとしようとしたけど、無理」

「そうなんだ」

「わたしもこうしてた方が、なにか仕事していた方がいいです」

「ふふ、そうなんだ」

 って、わたしと店長さんが話しているとコンちゃんが、

「ポン、お茶、お茶をたのむー!」

 わたし、店長さんを見ます。

「でも、この『お茶ー』はなんだか許せません」

「怒っていいよ」

「怒っていいんですか?」

「お茶出したついでにチョップしていいよ、すっきりするよ」

 あ、それ、いただきです。

 チョップ、したくなりますね。

 わたし、いつもイライラしてお茶入れるけど、今日はちょっとワクワクなの。


 わたしはなにかやってる方が、性に合ってるみたい。


 レッド、さっきからレジの前に立ってニヤニヤしてるの。

 体をもじもじ。

 しっぽもふりふり。

 わたしにチラシをくれますよ。

 なにかな?


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