第122話「水風船バトル勃発」
レッドは頭からお湯をかぶると泣いちゃうんです。
男の子なのに弱虫さん。
でもでも、正直、あんまり泣かれるとめんどうくさいかも。
しかしですね、温泉の神さまがお湯をかけても大丈夫なの。
楽しいといいのかも…ではではどうしましょ?
「それでね、それでね!」
レッド・ミコちゃんとお風呂なの。
わたしはレッドの背中をこすっている最中なんですが……
さっきからレッドはハイテンション。
「おさかなたくさんとれました~」
なんでも川に仕掛けをしたみたいです。
さっきまでポン太とポン吉もいて、収穫のお魚は今夜のおかずなんですね。
でもですね、ポン太とポン吉が来たと言うことはですね、
「レッドがポン太とポン吉を連れて来たんですね」
「ですです、だってりょうをいっししたゆえ」
「そうなんですか、そうなんだ、ふーん」
「で、で、おさかなたくさんとれました~」
「その後どーしたんですか?」
「おやつ~」
「どこで?」
「おうちですよ?」
「おやつ、なんでした?」
「ぷりん、ぷりんぱーてぃゆえ~」
なにが「ゆえ~」ですか。
「プリン、おいしかったですか?」
わたし、怒りで肩が震えまくりなんだから。
湯船で見ているミコちゃん、あきれてるの。
レッド、嬉しそうに体を揺らしながら、
「ちょううまでした、ぷりんさいこう」
「ねぇ、レッド」
「なになにー!」
「レッドがポン太とポン吉を連れて来るとですね」
「たのしー!」
「レッドがね……で、ポン太とポン吉を連れて来ると、二人分プリンが出るよね」
「みんなでたべたゆえ~」
「わたしの分のプリンが無くなっちゃうんですよ」
チョップはダメです。
わたし、お姉ちゃんなので本気で出来ないから。
でも、レッドの復讐せずにはおれません。
地獄へ落ちろっ!
お湯を頭から「ザブーン」なんだから。
「ふぎゃー!」
それ、連続で「ザブーン」なの。
「うわーん!」
レッド大泣き、こっちをにらんでますよ。
「なにをー!」
「男の子のくせに泣かないっ!」
「おにっ! あくまっ!」
「泣き虫!」
「どらやききゅー!」
ふむ、もう一杯「ザブーン」。
レッド目をこすりながらミコちゃんの方に逃げてるの。
お湯頭からかぶったくらいで弱虫なんだから。
「ポンちゃん、弟をいじめるもんじゃないわよ」
「食べ物の恨みはこわいんです」
「私が数作ってなかったからでしょ」
「ポン太とポン吉連れてくるからです、お豆腐屋さんでおやつすればいいんですよ」
ミコちゃん、泣いているレッドの背中をトントンしながら、
「でも、やっぱりお姉ちゃんはそれくらいで怒るべきではないと思うの」
「むー!」
そう言われると、反省しないといけないかな?
でもでも、ミコちゃんも考える顔になってレッドを引き離すとその顔を見つめて、
「ねぇねぇ、レッドちゃん」
「なに?」
「お湯かぶったくらいで泣いちゃダメでしょ」
「だってだってー!」
レッド、また泣き出しちゃいました。弱虫さんですね。
で、時間は進んで翌日のおやつなんです。
今日のおやつはプリンなの。
昨日食べれなかったからミコちゃんが作ってくれたんです。
わたし、テーブルに着いているコンちゃん、シロちゃんの前にプリンをやりながら、
「……な事があったんですよ」
「レッドがお湯をかぶると泣くでありますね」
「うん」
「ポンちゃんはお姉さんですから、泣かせてはいけないのでは?」
「シロちゃんはどうしてるの」
「顔にかからないようにしているであります」
「面倒くさくない?」
「本官、レッドよりもお姉さんでありますから」
「わたし、レッドが強くなればいいと思う」
言いながらコンちゃんに目をやります。
プリンをスプーンですくいながら、
「ポンは器が小さいのじゃ、レッドに優しくすればいいのじゃ」
「コンちゃん言うね」
「胸が小さいと器も小さいのじゃ」
もう、チョップなんだから。
わたし、シロちゃんに目を戻して、
「レッドは男なんだから、強くあるべきと思うんですよ」
「ふむ……それは本官も同意であります」
「大体頭からお湯をかぶったくらいで泣くなんて弱々なんですよ」
「……」
シロちゃん考える顔になって、
「本官、たまにレッドと一緒に帰るであります」
「それが?」
「なんとなく温泉に寄ったりもするであります」
「いいんじゃない?」
「レッド、神さまが頭からお湯をかけても、泣かないであります」
「あー! 確かに!」
神さまが頭からお湯をザブンとやっても泣きません。
「もしかしたら、わたしの時だけ泣いてるんじゃないでしょうか?」
って、つぶやいたらコンちゃんは、
「わらわが失敗してザブンとやっても泣いておった」
「むう、わたしだけじゃなさそうですね」
「しかし胸に顔を埋めておったぞ」
「……」
シロちゃんも視線を泳がせてから、
「本官が失敗しても泣いていたであります」
「……」
「本官の胸に顔を埋めていたであります」
「わたしがザブンとやったら……」
「やったら?」
二人、じっとわたしを見ます。
「モウって言ってポカポカ叩くんですよ」
「やはりのう」
「コンちゃん、なにか言った?」
「ポンは埋める所がないからの」
「叩くよ?」
「こわいのう~」
って、カウベルがカラカラ鳴って、配達人登場なの。
「ちわー、綱取興業っす」
「配達人さん、レッドがですね」
「ポンちゃん、どうかしたの?」
「レッドがですね、頭からお湯をかぶると泣いちゃうんです」
「子供だからですよね?」
「温泉の神さまがザブンとやっても泣かないんですよ」
「温泉の神さま……ああ、あのCGの」
配達人はまだあれがCGって思ってるみたいです。
でも、面倒だからツッコミはしないの。
「レッド、男の子ですよ、強くあるべきと思うんです」
「でも、まだ小さいしなぁ」
「配達人さんははレッドと温泉行ったりしません?」
「うーん、たまにつかまって一緒するかな」
ふーん、レッド、結構温泉に行ってるみたいですね。
「俺、頭洗ってやった事はないかなぁ」
「お風呂一緒したら、体洗ってあげないんですか?」
「うーん、ここに泊る時は洗ってあげるけど、温泉だと神さまがやるね」
「泣きますか?」
「見た事ないなぁ、泣いてないよ、きっと」
「でしょ! でしょ! なんで神さまだったら泣かないんでしょ?」
「シャワーは泣く?」
配達人の言葉にわたし一同固まります。
うーん、家のお風呂にシャワーあるけど、お風呂掃除以外は使いませんね。
泡を流すのは手桶なんです。
「いやいや、家のシャワーじゃなくてプール」
「ああ!」
みんなしてポンって手を打つの。
「たまにプールしますね……泣きませんね」
学校のシャワーで泣いたりしません。
コンちゃんもシロちゃんも考え込んじゃってますが、配達人はニコニコして、
「楽しいと泣かないんじゃないかな」
「なるほど……では、わたしと一緒におふろはつまらないと?」
「どうせポンちゃんレッドを沈めたりしてるよね」
ドキッ!
みんなクスクス笑ってますよ。
「レッドがいけないんです、すぐにわたしをドラ焼き級扱いするんです」
「ともかく、レッドはまだびっくりして泣いてるんじゃ?」
「でも、そろそろ泣くのはやめてほしいです」
「楽しければよくない?」
「楽しい? ですか?」
「温泉の神さまと一緒だと泣かないのは楽しいからじゃないかな」
「エンターテイメントってヤツですね」
「おお、ポンちゃん難しい言葉知ってるね」
「でもでも、その、楽しい事って具体的には?」
「うーん」
配達人も考え込んじゃいました。
コンちゃんが思いついたように、
「遊びから入るなら、水鉄砲はどうかの」
って、配達人もパッと顔が明るくなって、
「うん、水鉄砲?」
途端にシロちゃんの表情が明るくなるの、
「名案であります、本官大賛成であります」
わたしとコンちゃんは嫌な予感しかしませんよ。
この警察のイヌは「鉄砲」って言葉に反応しまくりなんだからモウ。
「そんな事もあろうかと!」
配達人は言うと一度出て行くの。
そしてすぐにダンボールを持って戻って来て、
「最初はぽんた王国に卸そうかと思ってたけど」
中は水鉄砲でいっぱいなの。
大きいのから小さいのまで……
「最初から売る気満々だったんじゃないですか?」
「だからぽんた王国に卸すつもりだったんだってば」
「タイミング良すぎです」
「うーん、何か別の用件もあって……思いついたような気がするんだけど」
って、シロちゃんとコンちゃん、タンク付の大物を手にして、
「わくわくするのう!」
「早くぶっ放したいであります!」
遊ぶ気満々ですね、目の輝きがまぶしすぎ、少女漫画よりすごいですよ。
でも、ちょっと楽しそうかな?
みんなそろってお外で水をチャージするの。
わたしは小さいの、黄色いスケルトンボディ。
配達人もわたしと同じのを手にして、
「俺の子供の頃はこんなのしかなかったように思うんだけど」
「そうなんですか?」
「タンクのついてるのは、高いんだよね」
「貧乏だったのでは?」
「かも……」
わたしと配達人、一緒になって引き金を引きます。
小さいから威力、たいした事なさそう。
でも、なんだか飛び出す水を見てると楽しいかな。
「準備完了じゃ!」
「ふふふふふ……であります!」
ああ、コンちゃんとシロちゃん、喜々としてるの。
二人一緒に発射。
うわ、タンク付き、すごい威力。
遠くまで水が飛ぶの。
「ああ、早く人を撃ちたいのう!」
「快感であります」
この女キツネと雌犬は危険です。
そこにのこのこレッドとポン吉が帰って来ました。
「ただいま~」
「来てやったぜ!」
途端に女キツネと雌犬の銃口、ポン吉に向けられるの。
「もらったのじゃ!」
「タイホっ!」
ポン吉、早速「的」になっちゃうの。
「な、なにすんだ!」
「黙って撃たれるのじゃ!」
「タイホでありますっ!」
二人、ポン吉を追いかけまわすの。
レッドはポツンと一人取り残され。
「なになにー! たのしそー!」
わたし、本題を思い出しました。
ニコニコしているレッドにシュート。
「!!」
顔に水をあびたレッド、固まるの。
そしてすぐに、
「うわーん!」
泣いちゃいました。
配達人、すぐにしゃがんで手にしている水鉄砲渡しながら、
「ほら、レッド、水鉄砲だよ」
「うえ……みずてっぽう??」
レッド、配達人からもらったのを見て笑顔になるの。
すぐにわたしを狙って、
「ふくしゅうするわ、われにあり」
どこかで聞いた台詞ですね。
ニコニコしながらわたしを撃ってくるの。
わたしも撃ち返して、そしておっかけあいなの。
まぁ、ほとんどわたしが撃たれ役……なんですけど。
お姉ちゃんだからやられてあげないとね。
「うわーん!」
追いかけられてたポン吉と合流するの。
レッドの水鉄砲は小さいからいいけど、コンちゃんシロちゃんのは「痛い」っ!
「ポン吉、なんでこっちに来るのっ!」
「だって逃げてるうちにっ!」
「こっちはこれだけなんだよ!」
ポン吉、わたしを盾にして、
「ポン姉シールド」
「こらーっ!」
集中砲火を受けるわたし&ポン吉。
とりあえず綱取興業の車に隠れて、弱々水鉄砲で反撃。
レッドはやられてもニコニコ。
「わーん、ぬれっちった! やられたー!」
コンちゃんシロちゃんはマジで、
「ポンめ、わらわを撃ちおった、許さんっ!」
「本官を撃つとは、公務執行妨害でありますっ!」
コンちゃんシロちゃんは誰かを血祭り(ずぶ濡れ)にしないと気がすまないみたい。
って、盾にしている車のドアが開くの。
配達人、笑いながら再登場。
「なんかすごい事になってるね」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
「いや、俺、水鉄砲持って来ただけだし」
「あのタンク付きのは大げさなんですよ、強すぎなんですよ!」
配達人、ニコニコしながら、
「すごい面白そうだから……俺は今、死の商人」
「は? なに言ってるんですか! 死の商人ってなにっ!」
「戦争の影には武器商人、はい、水風船」
配達人、箱を出します。
なに? 風船? 水が入ってますね?
「おお!」
ポン吉、さっきのコンちゃん達みたいに輝く瞳!
すぐに水の入った風船を投げちゃうの。
こんな時のポン吉は外しません。
レッドもシロちゃんもコンちゃんも直撃なの。
ずぶ濡れになる三人。
「うわーん」
あ、レッド、泣いちゃいました。
「うう……うう……」
あれれ、シロちゃんも泣いてます。
やられて泣くなんて、子供っぽいですよ。
「コロス!」
ああ、コンちゃん、髪うねりまくり。
でも、目に涙たまってます、ここにも子供一名。
って、配達人、そんな三人の所にも水風船持って行くの。
ああ、泣き顔だった三人、あっという間に笑顔えがお。
「ふくしゅうするわ、われにあり」
レッド、さっきも言ってましたよ。
「死刑であります!」
シロちゃん、それはちょっと……
「仕返しなのじゃ!」
コンちゃん嬉しくて髪うねりまくり。
激しい水風船戦争の勃発なの。
もう、みんなしてずぶ濡れ。
「コラー!」
ミコちゃんです、ダッシュでやって来て、
「何やってるの! このバカキツネっ!」
コンちゃんは「バカキツネ」なんだって。
「モウモウモウ! このアホイヌっ!」
シロちゃんは「アホイヌ」……
ミコちゃん、わたしをにらんで、
「先輩なんでしょ! このアンポンタヌキっ!」
わたしは「アンポンタヌキ」か~
ミコちゃん、わたしに詰め寄ると、
「こんな時に一番止めてくれそうなポンちゃんがこのザマ?」
「え、えっと~」
わたし、困っていると、配達人が割り込んで来ます。
「ミコちゃんもどーぞ」
「……」
ミコちゃん、ムッとした顔で水風船を……
「バカ!」
配達人に「パシャ」、水風船当たって爆発します。
「あなたが原因? ねぇ、配達人さん!」
ミコちゃん言いながら水風船をどんどん投げるの。
夜、わたし、レッド、ミコちゃんでお風呂なの。
「まったく、ポンちゃんも一緒になって遊ぶから」
「ミコちゃんも楽しんでたよね」
「ポンちゃん、お外でお休みしたい?」
「うえ……」
って、レッドがわたしの手を引っ張って、
「ちょうたのしかったー!」
わたし、レッドを座らせると、とっとと洗い始めるの。
「レッド、わたしと一緒にお風呂に入ったのが運のつきですよ」
「なにごと?」
「なんで水風船戦争になったか、わかってんですか?」
「ちょうたのしかったー!」
「もう、頭からザブンしても大丈夫ですね、水風船大丈夫だったし」
って、レッド、すごい怒った目でわたしを見るの。
わたし、笑って手桶にお湯をたっぷり。
ふふふ……いつでも頭からザブンできるんだから、泣かしちゃうんだから。
って、ミコちゃんわたしをチョップしながら、
「ポンちゃん、お姉さんなんでしょ」
「むむむ……」
「レッドちゃんにはコレがあるのよ」
って、ミコちゃんがレッドになにかかぶせるの。
「それ、なに?」
「シャンプーハットよ、これで顔に水、かからないでしょ」
わたし、レッドの頭にお湯をかけるけど顔にかかりませんね。
「「おお~!」」
わたしとレッドはもって声をあげちゃいます。
もうレッド、お風呂で泣く事もなくなりましたね。
わ、わたしの復讐の機会がなくなっちゃったのかな??
「これ、ポン」
「!!」
「お茶」
「!!」
わたし、笑顔、引きつるの。