表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

第119話「床屋さん」

 今回は床屋さんに行くお話なの。

 えっと、いつもはミコちゃんに切ってもらってるんだけど……

 床屋さんで切ってもらうのとは、どう違うんでしょうね?

 むむ、コンちゃんは前から行ってるみたいです。

 床屋さんの秘密を確かめに行くんですよ。


 今日は老人ホームに配達なんですが……

 老人ホームの配達は配達だけじゃないんです。

 職員さんと一緒におじいちゃん・おばあちゃん達と一緒にいろいろするんですよ。

 ストレッチをしたり、歌を唄ったり、習いごとをやったりするの。

 たまにはお風呂のお手伝いもしたりもするかな。

「村長さん」

「何?」

「老人ホームって大変なんですね」

「そうねぇ……でも、ここは重度の人はいないから、ラクな方かもしれないわよ」

「じゅうど??」

「うーん、ポンちゃんになんて説明していいのやら……」

「??」

「ともかく、起きれない人とかいないでしょ」

「でもでも、車椅子の人とかいますよ!」

「でも、まだ軽いほうじゃないかしら」

「そうなんですか……」

「起きれない人や、体が自由に動かない人だったら、私達が動かさないといけないから」

「うーん、寝たきりの人はいませんね」

 老人ホームにもいろいろあるみたいです。

「それに……」

「なんです、村長さん」

「ここに来た人は、なんだかみんな前向きになるみたいなのよね」

「はぁ?」

「ポンちゃん達のおかげじゃないかしら」

「わたし、なにもやってないですよ?」

「でもでも」

 村長さん、微笑みながら……モフモフしてます。

「タヌキが化けてるところなんて、余所にはないわよ」

「も、モフモフしないでくださいっ!」

「長老さんにポン太くんやポン吉くん、コンちゃん」

「むー、動物大活躍?」

「そうね、長老さんのごはん、すごくおいしいし、ポン太くんの料理もいいわ」

「おそば屋さんで鍛えられたんでしょ」

「ポン吉くんのお魚もいいわね」

「ポン吉は釣りバカですね」

 って、思いましたよ。

「村長さん村長さん、コンちゃんはどこがいいんです?」

「うーん、正直私は微妙に思っていたんだけど……」

「?」

「いつもなにもしないで『わらわは神なのじゃ』でグダグダ」

「ダメじゃないですか」

「でも、みなさんにはそれがいいみたいよ、コンちゃん綺麗だし」

「村長さん、村長さん、わたしは?」

「ポンちゃんはしっぽね、すごいモフモフ、夢のさわり心地」

「綺麗とか、かわいいってないんですか」

「えーっと……そうそう」

 むむ、話題、すりかえますね~

「一番なのはレッドちゃんね」

「そうなんだ……レッドのどこがいいんでしょ?」

「レッドちゃん、なんでも『好き好き~』だから」

 見ればレッド、おじいちゃんの膝でニコニコしてます。

 乗られているおじいちゃんもニコニコしてますね。

 確かにレッドは癒しに一役買っているみたい。

「あ、でもでも!」

「どうしたの、ポンちゃん?」

「わたし、ミコちゃんじゃないかなって思ってるんです」

「ミコちゃん?」

「そう、ミコちゃんですよミコちゃん」

「ミコちゃんのごはん、たまに作ってもらうけど、おいしいわね」

「それもですけど……ミコちゃんは回復系の術あるんですよ」

「へぇ……でも、この間現場監督さんには使わなかったのよね」

「あの時は……ですね」

 って、本人がのこのこやって来ました。

 今日は学校の配達だったはずだから、ついでにこっちに来たんでしょ。

「ねぇねぇミコちゃん、ミコちゃん回復系の術、使えるよね」

「えっと……それは……」

「コンちゃんが言ってたよ、ダメージ与えて回復させてってえげつないって」

「コンちゃん……」

 ミコちゃん、ムッとした顔で指をパチン。

 今頃どこかでコンちゃんに「ゴット・サンダー」が命中してるんですよ。

「まったくコンちゃんはモウ」

「ミコちゃん容赦ない~」

 村長さん笑いながら、

「その回復系の術って使ってもらえないのかしら?」

「えっと……人間には強すぎるからダメなんですよ」

「そうなの、残念ねぇ」

「でも、村長さん」

「なに、ミコちゃん」

「保健の先生がいるから……いいと思うんですけど」

 って、ミコちゃんの言葉に村長さんの微笑みが固まるの。

「長崎先生(保健の先生)いいんだけど……ちょっとね」

「?」

 わたしもミコちゃんも首を傾げちゃいます。

 村長さん苦笑いしながら、

「結構マッドなのよね、ポワワ銃とか持ってるし」

 ですね、気分屋さんのところもあるし。

 どことなーくコンちゃん属性な女なんですよええ。

 きっと今頃、保健室でくしゃみしてるんです。

 村長さん笑顔で、

「ミコちゃんにはいろいろお世話になってるから、これ以上はね」

 って、ホールにまた人がやってきましたよ。

 おじいちゃんとおばあちゃん、新しく入所の人でしょうか?

 むむ、荷物あるけど、そのカバンには1日分の着がえくらいしか入りませんよ。

「村長さん村長さん、新しい人ですか?」

「あ、あの人は床屋さんなの」

「床屋さん……ってなんですか?」

「髪切ってくれる人」

「あー!」

 髪を切ってくれる人だそうです。

「ポンちゃんは行った事ないの?」

「えっと、パン屋さんはですね」

 って、わたしが言おうとしたらミコちゃんが、

「私がチャチャっと切っちゃってます」

 村長さんニコニコ顔で、

「そうよね、お母さんが切ってくれる家もけっこうあるわよね」

 床屋のおじいちゃんとおばあちゃん、すぐに仕事にはいりました。

 姿見の鏡を持ってきて、老人ホームのおじいちゃん・おばあちゃんの髪を整えてます。

「あ、わたし、ドラマで見た事あります」

 そうです、世間話をしながら髪を切るんですよ。

 なんだかほのぼのした空気ですね。

 むむ、そんな散髪を指をくわえて見てるレッド。

 しっぽをブンブン振ってます。

「レッド、お仕事の邪魔しちゃダメですよ」

「むむ、ざんねん」

「レッドはミコちゃんが切ってくれるでしょー」

「でもですね」

 レッド、真剣に見ているの。

 わたしもおじいちゃんのはさみ捌きに見入っちゃいます。

「もしかしたらカリスマ美容師さんでしょうか?」

 床屋のおじいちゃん、笑ってます。

「あんた達がタヌキのポンちゃんとキツネのレッドちゃんかい?」

「けのいろがあかいからレッド!」

「はい、そうです~」

「今度お店に来たらいいよ」

「でも……わたしはミコちゃんに切ってもらうから……」

 って、わたしが言ってたらミコちゃんが、

「レッドちゃんものびてきたし、ポンちゃんもちょっと揃えてもらったらいいじゃない」

「でもでもミコちゃん、お金が……」

 わたしの言葉にミコちゃんが言うの。

「床屋さん、1000円でいいですよね?」

「はいはい、村の人だからサービスするよ」

 でも、床屋のおばあちゃん、考える顔になって、

「あんたのところのコンちゃん……だっけ?」

「え、コンちゃん知ってるんですか?」

「たまに来るねぇ……そこでなんだけど……」

「?」

「ツケ、払ってもらえるかねぇ」

 コンちゃん、床屋さんにもツケをためこんでいるみたいですよ。

 途端にミコちゃんが怒った笑み。

 指をパチンと弾くと雷鳴がとどろくの。

 どこかで女キツネが「キツネ色」に「焼けちゃって」るんでしょうね。


「わらわがテレビを見ていると雷が連射なのじゃ!」

 叫ぶコンちゃんにチョップするミコちゃん。

「ツケ、床屋さんにもためてるんでしょっ!」

「な、なぜそれをっ!」

「老人ホームに床屋さん、来たのよ」

「むむ、あのおばばめ、しゃべりおったな」

「ツケをためる方が悪いんでしょ!」

 ミコちゃん再チョップしながら、

「コンちゃん行った事あるみたいだから、ポンちゃんとレッドちゃん、連れてってもらうといいわ」

「うん、そうする」

「わらわも行くのかの?」

「ツケを払うのよ!」

 ミコちゃん、再チョップしながら、

「で、いくらためてるの?」

 って、コンちゃん顔を青くして指2本。

「2000円?」

「……」

「ま、まさか2万円!」

 ミコちゃん、怒りマークが浮かんでますよ。

「どーして床屋さんにそんなにためるのっ!」

「ぱーまは高いのじゃ!」

「どーしてパーマかけるのよっ!」

「わらわはおしゃれなのじゃ」

 コンちゃん、ゲンコツ食らってます。


 そんなコンちゃんを先頭に床屋さんに出発するの。

「ねぇねぇ、コンちゃん、床屋さんにいつから行ってるの?」

「うむ、復活してすぐなのじゃ」

「へぇ、そうなんだ」

「わらわは美しいゆえ、身なりを整えるのに髪結いは必須なのじゃ」

「で、ツケ、ためるんだ」

「むむ、わらわは神ゆえ、タダで奉仕すればよいのに~」

 って、駄菓子屋さんの近くなんですね。

 むー!

 この神社の前には行った事のないお店がまだまだあります。

 これから出会いがまだまだありそうですね。

 赤・青・白がくるくる回るお店に入るの。

「これ、お婆、来てやったのじゃ!」

「あら、コンちゃん、ツケ、払ってくれるかね」

「今日はちゃんと持って来たのじゃ」

 床屋のおばあちゃんとコンちゃんはレジに行っちゃいました。

 お店の中には……お客さんがいます。

「あ、駄菓子屋さんのおばあちゃん」

「ポンちゃん、床屋さんかい?」

「ええ、わたしとレッドです」

「そうかい」

 ちょうど終わったところみたいで、おばあちゃん席から立ちながら、

「いつもは……ミコちゃんに切ってもらってたのかね?」

「ですね~」

「まぁ、床屋さんもいいもんだよ」

 床屋のおじいちゃん、わたしとレッドを見ながら、

「うーん、レッドちゃんは婆さんにやってもらって、ポンちゃんは儂がやるかね」

 おじいちゃん、子供用のイスをセットしてレッドを座らせます。

 すぐにおばあちゃんやって来て切り始めるの。

「レッド、大人しくしてないとダメですよ~」

「らじゃー!」

「いつも動くでしょー!」

「ですっけ?」

 そうです、ミコちゃんが切ってるといつも苦戦してるもん。

 きっと子供だからじっとしていられないんですよ。

 あれれ……でもでも!

 レッド、もう舟を漕いでいます。

 あっという間に夢の中なんですね。

「びっくり、寝ちゃってる」

 床屋のおばあちゃんは笑ってます。

 駄菓子屋のおばあちゃんが、

「ここの床屋にかかると子供なんかすぐに寝ちゃうよ」

 コンちゃんも胸を張って、

「ここの腕はピカイチなのじゃ、眠たくなるのじゃ」

「な、なにか術とか使ってないよね?」

 床屋のおじいちゃん、ニコニコしながら、

「雰囲気なんじゃないのかな、さ、座って座って」

 わたし、レッドの隣のイスに座らせられると、早速髪を切られちゃうんです。

 ああ、なんだかハサミの「チョキチョキ」が心地いいんですね。

「むー、ミコちゃんはバリカンで切るから、そこが違うのかもしれません」

 切っているおじいちゃん、感心した感じで、

「ミコちゃん……あの老人ホームにいた」

「はい」

「バリカンで揃えるんだ……たいしたもんだね」

「でもでも、ハサミでチョキチョキの方が気持ちいいですよ」

「そんなもんかねぇ」

 って、そんなハサミの音が止まっちゃうの。

 見ればおじいちゃん、びっくりして隣の席を見ています。

 レッドの髪を切っていたおばあちゃんも固まってるの。

 舟を漕いでいるレッド。

 寝ているのに獣耳になっています。

「ちょ、ちょっと、耳が!」

 おばあちゃんびっくりしているの。

「わたしもびっくりです」

「この仔はキツネさんだよね」

「でもでも、テンションあがらないとキツネ耳にはならないんですよ」

「どうしてかね?」

「きっと気持ちいいんですよ……寝てるのに」


 寝ちゃったレッドをおんぶしてお店を出ます。

「ありがとうございました~」

 見送りに出て来たおばあちゃん、

「また来るといいよ……キツネ耳になるのもわかったから、次はびっくりしないからね」

「はーい」

「ほかに……シロちゃんやみどりちゃんも連れてくるといいよ」

「言っておきます」

「コンちゃんはお金持ってきてくれよね」

「おばば、他に言う事はないかの?」

 おばあちゃん、ちょっと考える顔になって、

「ミコちゃんに言うかね?」

「ど、どこでその言葉をっ! まったくっ!」


 そう言えば……レッドとみどりが先にお店に入っていたけど、おばあちゃん顔を出しませんね。

 いつもニコニコして出て来ていたのに……いないのかな?

 なんたって山の……田舎の駄菓子屋さんですよ、鍵もかけないでお出かけかも?

 パン屋さんもほとんど鍵、しませんもんね。

 どうしたのかな?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ