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第128話「ポン太vsポン吉」

「どーして男の子はパンツなんか欲しがりますかね」

「だ、だってオレ、シロ姉好きだし」

「あんな脱いだ汚れパンツのどこがいいんでしょ」

「ポン姉にはわかんないだろ~」

「洗濯物ですよ、普通に」


 わたしが学校に配達に行ったら、ポン吉が走って来ました。

「ポン姉~!」

「ポン吉、どうしたんですか?」

「ポ・ン・ね・えーっ!」

 ポン吉、わたしをつかまえてゆするんです。

 なにかな?

 ちょっと怒ってるみたい。

「ポン姉っ!」

「はいはい、なんなんですか」

「昨日アニキが帰って来て」

「はぁ」

「パンツ持ってたんだ!」

「あー!」

 あの決闘で投げたパンツですね。

「シロ姉のにおいがした!」

「ですね、シロちゃんのパンツですね」

 って、ポン吉の眼に炎が!

「なんでアニキがシロ姉のパンツ持ってんだよ!」

「いろいろあったんですよ」

 説明面倒くさいですね。

 なんだかさっさと帰りたい気分なの。

 って、ポン吉さらにわたしを強く握って……引っ張っていくの。

 むー、こんな時はすごい力です。

 さすが男の子というのかな?

 わたし、ポン吉に保健室に押し込まれました。

「ポン姉!」

「はいはい、なんですか」

「アニキとシロ姉って出来てるのかよっ!」

「はぁ? なに言ってるんですか?」

「だって! だって!」

「ポン太はコンちゃんラブなんですよ」

「知ってるよ、ならなんでシロ姉のパンツ持ってるんだよ」

「そりゃ、シロちゃんがあげたんじゃないですか?」

 本当は投げたんだけどね。

 ってか、シロちゃん回収してなかったのかな。

 まぁ、あの後すぐにミコちゃん発狂してそれどころじゃなかったもんね。

 もう、ミコちゃんすごい怒ってて、シロちゃんチョップを連続で食らってました。

 事情がバレたらわたしも連続チョップだったけど。

「オレもシロ姉のパンツ欲しい」

「わたしのあげよっか?」

「うえ……」

 チョップですチョップ。

「どーして男の子はパンツなんか欲しがりますかね」

「だ、だってオレ、シロ姉好きだし」

「あんな脱いだ汚れパンツのどこがいいんでしょ」

「ポン姉にはわかんないだろ~」

 わたし、店長さんのパンツを洗濯機に入れる事あるし、干す事だってあるけど……

「洗濯物ですよ、普通に」

「だからポン姉結婚できねーんだよ」

 チョップですチョップ。

「わたしは大人だからパンツなんて興味ないんです」

「ホントかよ~」

「中身の方が興味あるんです」

 って、保健室のベットから笑いを堪える音。

 布団の山が動いて、保健の先生が起きてきました。

「ポンちゃん笑わせるわね」

「保健の先生、寝てたんですか」

「昨日吉田先生と用務員と長老とで徹マンだったのよ~」

「そうなんですか……」

「用務員と吉田先生ダウンして、今日のメンツ足りないのよね」

 って、保健の先生、ポン吉を見て、

「そうねぇ、ポン太とシロちゃん、よく一緒にいるわね」

「なんだってー!」

「この間豆腐屋に寄ったら、一緒にいたわよ」

「なんだってー!」

「ポン太、シロちゃんに何か深刻そうな顔で相談してたわよ」

「なんだってー!」

 はて、なんだかそんな景色、よく見るような気がしますね。

「ああ、はいはい、それってよくあるような」

「ポン姉、どーゆー事なんだよ!」

「わたしとシロちゃん、よくお豆腐貰いに行くもん、ほら、貰いに来なさいって言われてるし」

「ああ……パン屋さんにはあげなさいって言われてる」

「わたしとシロちゃんが当番かな、みどりとレッドもだけど」

「……」

「ポン吉ってお店にいない事、多いよね」

「遊びに行ってるもん」

「だからじゃない」

「そ、そんな……子供は遊ぶのが仕事だし」

「ちょっとはポン太を見習ったら?」

「仕事、たまにやるのはいいけど、つまんないぜ」

「ポン吉、本当にお子さまですね」

「だって子供だもん」

 保健の先生、冷蔵庫からパックのコーヒー牛乳を出して配りながら、

「シロちゃんポン太に盗られるんじゃないの?」

 わたしと保健の先生、コーヒー牛乳をおいしく頂きます。

 でも、ポン吉は握りしめて全部こぼれちゃってるの。

「アニキ、もしかしてコン姉に相手にされないからってシロ姉に……」

「ポン吉、わかってるじゃない」

 保健の先生ニコニコして、

「ポン太はコンちゃんに相手にされてないから、シロちゃんにしたのかもよ」

「なぁーにぃーっ!」

 保健の先生あおりまくり。

 でも、言われるとその通りですね。

 ポン太、コンちゃんと遭遇率低いです。

 うーん、たまたまなんだけど……

 コンちゃんお豆腐貰いに行かない事多いですもんね、お店でポヤンとしているの。

 って、ポン吉、つぶれたコーヒー牛乳を投げ捨てると、

「アニキ、殺すっ!」

 飛び出して行っちゃいました。

「ちょ、ちょっと大丈夫?」

「ふふ、面白い事になりそうじゃない」

「保健の先生が言う事ですかっ!」

「だって退屈なんだもん」

「ポン太とポン吉、本当に殺しあいになっちゃうかもしれませんよ」

「まさか~」

「保健の先生は二人の事を知らなさすぎ」

「?」

「『ぽんた王国』知ってますか?」

「知ってるわよ、お豆腐屋さん、土日はニンジャ屋敷」

「二人はなにやってますか」

「ニンジャコスプレ」

「ほらー、二人は本当に修行して強いんですよ」

「まさかー」

「昨日はシロちゃん、ポン太を倒せませんでした」

「え! 本当!」

「色仕掛けでなんとか倒したんですよ」

「パンツの話はそれ?」

「はい」

 わたしと保健の先生で廊下に顔を出してみます。

 ポン吉が怒りに燃える目でポン太の手を引いて出てきました。

「二人して今日は早退かしらね、フケるのね」

「あのー、先生として止めないでいいんですか?」

「面白そうじゃない」

「先生としていいんですか?」

「だって二人はタヌキよね、タヌキ」

 あー、モウ、保健の先生に期待しちゃダメみたい。

 でもでも、二人はどこに行っちゃうんでしょ?

 どこで決闘しちゃうんでしょ?


 わたしと保健の先生で後を尾行たら……

 なんで決闘はパン屋さんの駐車場なんでしょうね。

 二人は印を結んだら、あっと言う間にニンジャ姿に変身なの。

 ここにきて保健の先生もようやく。

「なかなかやるわね、今のでちょっと信じる気になったわ」

「でもでも、戦いは今からですよ」

「すごい戦いになりそうね」

 って、ウッドデッキの席に陣取った保健の先生。

 大きな声で注文するの。

「ミコちゃーん、家庭訪問に来たから、から揚げとビールね」

 台所の方でコケてる音が聞こえました。

 ミコちゃんの機嫌が悪くならないといいけどなぁ。

 って、言っている間にもバトル開始なの。

 ポン太とポン吉、刀を抜いて激しい鍔競り合い。

 離れたと思ったら手裏剣連射。

 リアルニンジャのバトル、かなりの見応え。

 保健の先生もポカンとして、

「本当にすごいわね」

「わたしもびっくりです……ニンジャ屋敷のは接待なんですね」

 そこにから揚げ&ビールを持ってミコちゃん登場。

「保健の先生……家庭訪問って誰の?」

 ミコちゃん髪がうねってるけど、保健の先生平気な顔でから揚げをつまみながら、

「ほら、ミコちゃんも見て、ポン太とポン吉、すごいわよ」

「!!」

 ミコちゃん二人を見て、戦いっぷりに固まっちゃいました。

『ミコちゃん、どうしたの?』

『なに、あれ、どうなってるの?』

『シロちゃんのパンツを賭けて戦ってるのかな?』

 ちょっと違う気もします。

『それって昨日のパンツ……じゃなくて!』

『?』

『二人ともなんでこんなに戦えるの?』

『あー、それ、前に言ってなかったっけ、長老が人間絶滅のために……』

 ミコちゃん青くなって、

「わ、私のせいじゃないもんっ!」

 行っちゃいました。

「ポンちゃんどうしたの? ミコちゃん行っちゃったけど」

「保健の先生、ミコちゃんにもいろいろあるんですよ」

「ふーん」

 わたしもから揚げいただきましょう。

 ポン太とポン吉戦ってますね。

 でも……ちょっと長くないですか。

「わたし、ポン太があっさり勝つと思ったんですけど」

「うーん、ポンちゃんもそう思ったんだ……シロちゃんパンツのパワーかしら?」

「ああ、なるほどー」

「でも、長いわね」

 そこにコンちゃんがねむそうな顔で登場。

「これ、何をやっておるのじゃ……ポン太とポン吉は?」

「あ、コンちゃん、来たの?」

「から揚げのにおいがしたのじゃ」

 それですか。

 コンちゃん空いている席に腰を下ろすとから揚げに手を伸ばしてから、

「二人は何をやっておるのじゃ」

「シロちゃんパンツを賭けて決闘」

「なんじゃそれは?」

 って、まだ勝負つきませんね。

 コンちゃん保健の先生のビールを奪って一口。

「あの二人、本気かの?」

「なんじゃない、ポン吉は本気と思うよ」

「兄弟だから、拮抗しておるのかの?」

「かもね……」

「本気を出しておらんのではないかの」

「!!」

 わたしの予想としてはしっかりしたポン太がしっかり勝つ。

 そのはずがいまだに勝負つきません。

 これはきっとポン太が手加減してるんですよ。

 わたしの頭上に裸電球点灯。

「コンちゃんコンちゃん!」

「なんじゃ?」

「シロちゃんを召喚して!」

「シロをかの? しかしポン、おぬし術をなんと思っておるのかの」

「いいから早く!」

「むう」

 コンちゃんがパチンと指を鳴らすと、おそばを食べてるシロちゃん召喚。

 シロちゃんと保健の先生はびっくり顔。

「本官おそばを食べていたであります」

「召喚してもらったんだよ」

 保健の先生、シロちゃんの手からおそばのどんぶりを取り上げてすすりながら、

「便利な魔法もあるもんね」

 わたしもそう思います。

 では、賞品は揃いました。

 ってか、戦っていた二人も何故か固まってます。

 うん? ポン太がポン吉に「×」のジェスチャー。

 一度休戦で、ポン太がこっちにやって来ます。

「シロ姉、これ」

 って、先日のパンツです。

「洗濯しておきましたから……もうこんな事しないでください」

「ポン太、みんなの前で返したら女のメンツ丸つぶれでありますよ」

「みんなの前でパンツ脱いでた人が言うんですか?」

 ポン太あきれてます。

「アニキー!」

 ポン吉ダッシュで来て、ポン太をチョップ。

「なんでパンツ返しちゃうんだよ、オレにくれよ」

「え、だって女物のパンツなんてポン吉関係ないじゃ」

「だったらアニキはコン姉のパンツ欲しくないのかよ」

「あ!」

 ポン太、真っ赤です。

 わたし、言うんですよ。

「二人は真面目に戦ってませんね」

「そんな事は……」

「えー!」

 二人、わたしを見てふくれてます。

「いいでしょ、二人の決闘、ちゃんとしてもらいます!」

「?」

 みんな頭上に「?」浮かべてます。

「勝利した方にデート権を!」

 途端にポン太・ポン吉に喜びの表情。

 二人は駐車場の中央に戻ってバトル再開。

「ポン吉を殺してコン姉と結婚!」

 デート権なんですけど。

「ふふふ、アニキを殺してシロ姉のパンツ」

 デート権なんですけど。

 バトルはさっきの5割増で熱くなってます。

 コンちゃんわたしの頭をコツコツ。

「これ、ポン、何を言い出すのじゃ」

「だって、全然勝負つかないんだもん」

 シロちゃん、肘でわたしの脇をコツコツ。

「ポンちゃん、人を賭けるとは何事でありますか」

「だって、全然勝負つかないんだもん」

 って、わたし達3人を見て保健の先生、目をパチクリ。

「ねぇ、それって私が勝っても二人をゲット?」

「は?」

 保健の先生の発言にわたし達がポカン。

「じゃ、参戦ね」

 って、保健の先生、白衣の中からポワワ銃出すと、

「死ねっ!」

 ポン太とポン吉を容赦なくシュート。

 しびれて骨格さらしてますよ。

 ああ、二人とも崩れ落ちました。

 保健の先生、ポワワ銃をしまうと、

「じゃ、二人は頂いていくわね」

 って、コンちゃんとシロちゃんを小脇に抱えて行っちゃいます。

「ど、どこに連れていくんでしょうね?」

 わたし、ついついつぶやいちゃいます。

 コンちゃんシロちゃんも意外な展開にされるがまま。

 ポン太とポン吉もすすけて呆然としてるの。


 コンちゃんシロちゃんはマージャンの相手をさせられたんだって。


「お姉さまっ!」

「どうしたの、たまおちゃん、神社は?」

「ポンちゃんには用はないんです!」

「本当にどうしたの?」

「わたしはお姉さまに用があるんですっ!」


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