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木の端  作者: 伊井下弦
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猛省

僕ちゃん事、塚本卓は、昼は老舗のコーヒー店でバイトし、夜は紀子の住む街のコンビニで店員として働いていた。しかもコンビニは、紀子の帰宅の途中にあった。紀子は、めったにコンビニには行かない達だったが、学生の自分よりは明らかに年上でありながら、ごく自然に腰が低く、少し甘えた様なしゃべり方をする卓の事は、何気に記憶に残っていた。


卓には、新藤渉という彼が居た。四十を前にしたイケ面の商社マンである。とは言っても四十にもなって十分な収入と経歴があるにもかかわらず、女っけの一切ない彼は、何かと中傷の的になることが多く、会社での自分存在価値を憂う事が、多くなってきたイケ面親父でもあった。


紀子は、映画が終了劇場が明るくなると、それまでの怒りや焦りが一気に萎えて、頬があからむほど猛省していた、恥辱と共に映画館をあとにした。街路に出ると、母親にけいたいからでんわをして、合格したらしいもう一社の情報を伝えた。

「良かったじゃない。おめでとう。今夜はお祝いだわね。」と続ける母親に、

「まだ本決まりじゃないし、決まったらね。」と母親の申し出を丁重に断った。

紀子はこんなモヤモヤを話せるのは、佐江子しかいないと思い、佐江子のLineにメッセージを残した。

『いろんな事があってつかれたよぅ。早急に愚痴会、いやノグチ会したいよぅ。今夜でも?』


佐江子とは、田宮佐江子、紀子とはゼミが同じで気も合う学生だった。男の趣味も全く被らず、紀子の趣味はエリート色が強く繊細な男性であり、佐江子はと言うと、どちらかと言うと体育会系のサバサバした感じの男がタイプだった。。そんなものだから恋愛の上でも、ライバルになることもなく。二人で出掛けたり、飯を食ったりしても、疎通しない男の話題がメインで、そんなところが何より楽な女友達だった。


あとノグチ会の野口とは、野口大智のことで。彼も同じゼミ仲間ではあったが、口数も少なく存在観が薄いひと畜無害な感じで、ゼミの飲み会を皮切りに、何故か二人と行動を共にすることが多かった。飲んでいても相槌を付く程度で、自ら口火を切るようなことはまずなかった。

それ故、女二人とも、彼を男性として見る気はさらさらなく、特に愚痴になりがちな飲み会では、惨めな泣き崩れ合戦のストッパー役で、野口を侍らせていた。そんなものだから、今回の様な食事会のことをノグチ会と呼び、たいてい大智も誘われた。


暫くして、紀子がウィンドショッピングをしていると、佐江子からLineがあった。「いいよ。今直ぐで良かったら、電話下さい。」という返事があった。紀子は電話した。先ず口火を切ったのは、佐江子だった。「どうした、疲れたなんて、もしかして、就活全敗?」ときくと「いやぁ、そんなのじゃぁないんだけど、就活の方は、なんとか決まりかけてんだけど。」「あら、それは良かったわね、おめでとう。じゃぁ就活のお疲れ様会?ってところかしら?私は、決まっているけど。ノグチは、コネ決まりだし、今夜は、空いてるみたいだから。」と言ったところで、紀子が「実は私、今朝電車で痴漢にあって。」とここまで言うと、佐江子が、「ええっ、そりゃ大変だ。で、大丈夫なの?」「まぁ、痴漢は私の間違いで、、、詳しくはあとで、お酒飲みながら」「大丈夫なのね、解った。野口も連れて、7時くらいに、いつもの居酒屋ね。」

「うん、有難う」と紀子は言って、携帯を切った。


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