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戦闘論(仮)  作者: 如月 恭二
5/17

立ち回り 参

立ち回りについては終わりかと思ったが、色々詰め込んでみた結果がこれだ。

 前回、立ち回りに関する項目をこれにて終了すると言ったな。

 ──残念、まだ続くようだ。


 諸君らも知っての通り、戦闘では実に様々な局面を迎えることとなる。

 ──そう、それは例えば、こんな状況だ。



 遮蔽に身を隠し、弾丸の雨から逃れる。

 こちらの武装はと言えば拳銃が二挺。だが、あちらは小銃(アサルトライフル)で身を固めている。

 加えて、一対一個分隊ではあまりに分が悪い状況だ。無論だが、装備にも差がある。

 不運を嘆く暇などない。

 この状況をどう切り抜けるかに全神経を集中させた。


 

 さて、この状況を描写してみたが、お気付きだろうか。

 そう、遠距離武器は非常に便利だが、敵に回すと恐ろしい相手に早変わりする。見えないところから仕留められる恐怖は、言うに言えぬものだろう。

 (思ったが、流れ弾もこのくびきに入りそうではある)


 余談だが、私は拳銃を準近距離武器だと考えている。

 物にも依るが、有効射程五〇メートル程度。小銃だと、一般的な物は二〇〇メートル程だったか?

 最近、火器に触れる機会が少なくうろ覚えだ、済まない。また追って火器についても少し話そうかと思う。だが、大体はこの範疇(はんちゅう)に収まるはずだ。

 拳銃は小型の携行用火器だが(デリンジャーはお守りか暗殺用だと思う)、接敵しなければ射程に収められない。ショットガンに近い印象だな──武器の性質はまったく違うが。

 尚、ここで言う“近い”は、あくまで射程のことを捉えているつもりだ。

 

 ──失礼、話を戻そう。

 遠距離からの攻撃というものは、近接武器や射程の短い武器ではあまりにも分が悪い。いや、悪すぎる。


 (某アニメでは、弾丸を斬っているシーン等もあるが、仮に斬れるだけの技量と動体視力、運動能力を持っていても武器が耐えられない。弾丸が持つ運動エネルギーは、人力で振るわれる剣の比にも成らないからだ──この辺りは、大人の事情であろうか。そもそも刀身にダメージが出るのは当然である。鉛は金属の中では重いのだ……。運動エネルギーの差が大きいことも手伝う。最も強靱とされる古刀も、弾丸には敵わないだろう。そもそも、遠距離から狙われている時点で絶望的に不利である。突貫してもいい的にしかならんよ……)

 

 拙作で、シガールの父親が矢玉を受けて瀕死となるシーンがあるが、少し取り上げようかと思う。正直、自作品をあまり引き合いに出したくはないのだが……。

 熟達した射手は、動く獲物を射当てることが可能だ。それが喩え敏捷性を頼りにした立ち回りをこなす者であったとしてもだ。

 口で言うのは簡単だ。

 ここで少し論点をずらしてみよう。


 では、改めてお尋ねしよう。

 “弓矢で或いは銃で、逃げ回る鹿の頭を射抜ける”かね?

 ある程度習熟すると、狙った獲物を狙えるようになるのだ。それも、常に動き回るような動物、或いは敵対する人間。

 勿論、発射と着弾には“ズレ”が生じるし、風も発生する。

 そのような不確定要素すらも見抜き、計算に入れた上で仕留める。熟練した射手というものの恐ろしさがこれでお分かりかと思う。

 シガールの父親が敗れるのも当然だ。一対多と言うのはそれだけでも充分脅威なのだから。その渦中に在って弓兵を相手取れば結果なぞ見え透いたも同然。誰であろうと、奮戦空しく討ち死に必至だ。

 さりとて、射手も百発百中とはいかない。弘法も筆の誤り、だ。(白い死神ことシモヘイヘはまた別問題だが……)

 弓兵相手ならば背後を突くか、一旦出直すかだろう。


 ここまで話を広げたが、武器とはやはり『どこまでも効率的に殺傷しうる』という能力に重きを置く代物だ。

 武器や道具の変遷を見ればおのずと見える。

 始めは石や棍棒。剣、槍、弓。最終的には、各種火器に核兵器。

 本質を突き詰めて行けば行くほど、人殺し──戮殺することに焦点が当たっている。

 それだけではない。遠距離武器は、“離れた安全な場所から敵を屠る”ということを念頭に置かれている。


 剣を振るい、或いは銃で発砲しながら神の愛を叫び、聖戦だと宣うのは何とも笑えてくる。これには道化も苦笑いだろう。こうして見ると刃物を遣って真の意味で人を幸せに出来るのは、料理人だけだとは思わんかね。

 さて、過激派思想に茶々を入れるのはここまでにしておこう。




 戦闘とは、不確定要素を孕む。これは前述の通りだ。

 その想定外には、自分──或いは主人公らが劣勢に立たされるということも往々にして、在るということでもある。

 ここで聞きたいのだが、何故寡兵で多勢を相手どると不利なのか、お分かりだろうか。理論的に語られているものがあるので、ここで少し話そうかと思う。

 ランチェスターの法則を知っているだろうか。

 ランチェスターの第二法則を噛み砕いて話すと下記のようになる。


 一人で五人の、同程度の装備をした人間相手にしたとする。

 寡兵側は、実に五倍の兵力差で不利となる。

 しかし、単純に五倍の戦力差とはいかない。この場合、理論上兵力差の二乗の戦力差と言うことになるそうだ。

 お気付きかと思うが、これはあくまでも理論だ。

 同程度の体格、経験、装備としてのものとされている。


 だが、この理論あながち否定も出来ない。

 仮に十騎対一〇〇騎の野戦となったとする。

 すると十倍の兵力差で、戦力差はなんと一〇〇倍である。

 集団戦闘について知っている方も居ることだろうが、寡兵側は完全に包囲されることになる。

 そうなると、一人で十人以上を相手にするようなものだ。ここまでの状況となると、戦闘どころではなくなり十騎の兵士達は、抵抗も空しく蹂躙されてしまう。

 実際に合戦や野戦を見ると分かりやすい(合戦祭が好例かと思う)が、様々な人が入り乱れるのが野戦、ないしは合戦の常だ。

 だが、そんなものの比ではなく、戦闘では効率的に敵を戮殺することに重点が置かれる。

 そうなると、一人を集中して攻撃する訳だ。

 防御に回っても、一人に対して実に一〇〇倍の戦力差。これを凌ぎきれるのは余程の実力者か、余程集団戦闘慣れしているか、或いは真性の化け物だろう。

 四方八方から複数、それもほぼ時期を同じくして襲い来る白刃を前に、出来ることは限られる。

 強引に血路を開こうとして致命打を貰えば、突破どころか敢えなく討ち死に。

 げに恐ろしきは物量である。

 それを如何に崩し、撃退し、殲滅させるに至るか。或いは、回避させるか。戦局をひっくり返すのもアリだな。


 この辺りも考えると面白いだろう。

 ──む、また長くなってしまった。

 これもまた余談だが、戦場における死因の殆どは何か。


 剣か、槍か、はたまた戦槌?

 違う、答えは弓矢だ。


 流れ弾も馬鹿にならない。急所に当たらずとも、身体の重要な箇所に当たれば、或いは何本も受ければ死んでしまう。臓器を傷付け、そこから体調を崩し死に至る訳だ。


 要は、現実では遠距離武器を相手にするなということだが、創作ではそうもいかない。

 射手から逃れ、打ち勝つ過程を描くと楽しいことだろう。


 これが魔法でも良いだろう。

 魔術師を相手にし、相手が放つ火球を両断。何とも爽快だ!

 戦闘というものは、やはり浪漫も必要だと思う。

 個性を活かし、浪漫ある戦闘を楽しんで頂きたい(勿論、これを読んでいるであろう、作者の貴方も)。

立ち回りはやはり、堅実なものが一番。

危険性は低いし、損害も少なくて済む。

だが、浪漫ある戦闘も良いと思わんかね?

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