立ち回りについて 壱
私は銃は好きだが、戦闘に使うのはやはり近接武器が望ましい。
鎬を削るということを体感できる刀剣類が大好きだ。
だが、以外に思うかも知れないが、狙撃はまた大好きだ。
長距離からの着弾は痛快無比だからだ。
戦闘における立ち回りというものは、戦闘時に扱う武器と並んで非常に重要だ。
戦闘局面で戦うことになる相手の性質は、正に千差万別と言っていい。
一撃重視か、手数重視か。
敏捷性に、間合いの広さ。行動時の癖などなど……。
人、或いは怪物の個体それぞれ違うものだ。
ファンタジー作品で例を上げよう。
剣を装備したスケルトンと、槍を携える傭兵とではかなりの違いがあるということは最早誰でも分かる。
同じように、剣士と槍術士では戦い方がまるで変わってくる。
剣というものは、間合いが手の延長となる。長ければ四尺程度だろうか。そこは武器ごとの違いや鍛冶師の違いではあるが、およそ実戦的な大剣の限度は、四尺近い長さでは無かろうかと思う。
当然のことだが、武器はなにも長ければ強いというものではない。
長ければ長いほど、攻撃は読みやすくなるからだ。
斬馬刀などがこれに当たる。尚、ツヴァイハンダーは除く。詳しくは後述しよう。
長くて重い武器は、成る程確かに力自慢の者が振るえば、運動エネルギーが増大し、恐ろしい武器となることだろう。
だが、攻撃は単調になってしまう。
横薙ぎか、打ち下ろしかの二種類しかなくなる。身の丈を越える大剣ともなれば尚更だ。
重量故に、予備動作は当然緩慢かつ隙だらけとなる。
混戦状態で振るわれれば脅威だが、振るい終わればどうなるか容易に分かるだろう。防御体勢を整える前に致命傷を負うだけだ。
廃れてしまうのも頷ける話である。
因みに、話に上がったツヴァイハンダーなるものだが、あれはかなり長い。全長六尺、刀身四尺~五尺とかなりの長さである。
完全に余談となるが、持ち手から一尺程の刀身は刃がなく、持ち手としても使えるのだ。勿論、このような色モノはポールウエポンと言っても間違いないが、槍の穂先付近を切り落とすなどの搦め手も可能らしい。
そうした運用も可能かと考え、私は「ツヴァイハンダーは斬馬刀の類に当たらない」と考えている。
さて、剣の間合いについて触れたが、今度は槍について触れようと思う。
某槍ニキなどで、槍術というものにもスポットライトが当たるが、槍は“兵器の王”と呼ばれるだけのことはあると思う。
なにも、某ぺディアに追随する訳ではないのだが、槍という兵器は実に面白い。棒の先に両刃の剣を装着した、この武器だが特筆すべきはその間合いだ。
実に、手の延長と呼ばれる剣の二倍~三倍の間合いを誇る。棒の先に脇差を差した薙刀もそうだが、攻撃範囲が非常に広く、剣で相手取ると厄介なことがよく分かるだろう。
両刃の剣(薙刀は脇差だが)を装着した為、刺突は勿論、切り払いという芸当が可能となる。剣もその双方が可能だが、忘れるなかれその間合いは剣の二倍以上に相当するのだ。
剣と槍で戦闘を行う場合、剣士が槍術士の三倍の力量を要求されるというのは強ち過言ではない。
勿論、槍は刺突を行えば隙が出来る。刺突をすれば待っているのは停止である。どんな遣い手であろうと、この隙からは逃れられない。とは言え、熟達した遣い手にしてみればその隙はかなり短くなるはずだ。その上術理を知れば鉄壁となりうる。
剣と槍で戦闘を行う場合、何故剣士に三倍もの力量差が求められるのか。もうひとつ話そうと思う。
長柄武器は実に便利だ。間合いが広く、相手の間合いの外側から攻撃を加えられる。
だが、読者諸君は気が付いた筈だ。
『広い間合いは逆に弱点でもある』
──と。
そう。長柄武器は使い勝手がよく、戦闘を有利に進められるが、その広すぎる間合いがかえって仇となる場合があるのだ。
実際、間合いを詰められた場合は非常に困る。中距離が独壇場の槍だが、至近距離は剣士の独壇場だ。
安易に接近を許せば、不利な状態で相手の土俵に上がることに繋りかねない。
──だが、しかしだ。
簡単に打ち負かされていては“兵器の王”たり得ない。
何故か。
槍というものは、棒の終端に“石突”なるものがある。……広く普及していないのは、集団戦で味方を傷付けたりする為だ。
基本的に、固定する為に錨のように鉤爪をもったものや、金属や石で出来たものだ。大抵は個人的な改造らしい。
剣士の間合いに持ち込まれた際に、この石突で有効打を突くことができる。そのまま形勢逆転も狙えるのだ。
要は、切り払いをすると、間合いに入り込まれやすい。そこで、この石突の出番ということなのだろう。
こうして様々考えると、戦闘というものの奥深さを改めて感じることができる。
先人達の流血によって、これらの技術は連綿と受け継がれて来た。そう考えると、なんとも感慨深く感じる。
尤も、無用な流血は忌避すべきではある。
無辜の民が謂われもなく殺戮されるなどということは、私のような戦闘狂にとっても本意とするところではない。
民族浄化など、唾棄すべきだ。
──強者との戦闘、それこそが私の生きる活力っ‼ 殺戮なぞはまったくの不要である‼
……取り乱したこと、深く反省しようと思う。
暗器や打撃武器は……もうお分かりだと思う。
特に暗器はややこしく、特殊なものが非常に多い。加えて、携行性重視かつ偽装に力を入れており、武器としては戦闘というより“最低限の殺傷力と遣い手の技量”に向けられている。
打撃武器は、あまり普及しなかったかと思う。
戦斧を打撃武器として勘定に入れてもいいというなら、それなりに普及したのでは無かろうか。
板金鎧の対策に、戦槌が用いられたことは知っているが、あまり長く普及はしなかったかと思う。
戦斧であればほぼ確実に頭蓋を割る上に、手軽さにしても斧の類が上だ。わざと刃を潰せば、打撃力もかなり高くなり板金鎧も容易く破壊できると思う。わざわざ鍛冶に頼む人間もそうは居ないだろうと思う。
加えて、純金属製などとなると、雨風や摩耗などによる損壊で修理も馬鹿にならないだろう。
ウォールナット材、胡桃などの堅牢な材木に金属の打突部位を装着すれば良いだろう。が、余程打ち所がよくない限り一撃で敵を屠りえないだろう。
存外、人間の頭蓋は堅いからだ。
徴兵された町民や木こりなら、殊更斧を使うだろう。ほぼ日用品と同じだからだ。そう言った兵士だけでなく、傭兵の中にも戦斧を扱うものも居たのでは無かろうか。
相手の苦痛を増大させない為にも、斧がよく使われたことと思う。
少しばかり順序がおかしくなったが、暗器は鉄扇が有名だと思う。
あれは、純金属製のものがあり、鈍器として使用することがある。また、持ち手に仕込み刀があるものもあり、それで暗殺を行うとのことだ。
さて、ここまで武器の特徴などについて述べてきたが、次回は本来の戦闘における立ち回りというものも話して行こうと思う。何より、脱線したのではないかとも思う。私の悪い癖だ、申し訳ない。
ひとまず、ここまでお付き合い頂き、感謝する。
では、また会おう。
次回、戦闘狂が語る立ち回りについて、其の弐。
堅実な立ち回りなどについて言及するつもりだ。