表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

箱物語

魔法のケシゴム(箱物語9)

作者: keikato
掲載日:2016/10/21

 ユウコが学校から帰るやいなや、お母さんのお決まりのセリフが飛んできた。

「宿題、ちゃんとやんなさいよ」

 ユウコはしぶしぶ算数のプリントを開いた。

 一問目からちんぷんかんぷんだ。

「宿題をやってくれる、そんな魔法のエンピツがあったらなあ」

 ユウコつぶやいたそのときだった。

 エンピツが指から飛び出して、それからクルリとまわって机の上に立った。

「ユウコさん、こんにちは」

 エンピツがちょこんとおじぎをする。

「えっ、そんなあ! なんで、なんで?」

 ユウコはもうびっくりだ。

「ボクって、魔法が使えるんです」

「どういうこと?」

「フデ箱さんが、魔法をかけてくれたんですよ。なんたってフデ箱さんは、魔法の力をお持ちですからね」

――魔法って?

 ユウコはフデ箱を見つめた。

――まさかあ!

 去年の暮れのこと。

 買い物の帰り、お母さんと商店街で福引をした。

 お母さんは残念賞で、ユウコは五等のふで箱。なんとそのフデ箱が魔法のフデ箱だったらしい。

「宿題、ボクにおまかせください。いつもかわいがっていただいてるお礼です」

 エンピツが宿題をやってくれると言う。

――あたしってすごいわ。魔法のフデ箱を当てちゃうんだから。

 願いごとをかなえてくれる、そんな魔法のフデ箱を福引で引き当てていたのだ。

「ほんと? じゃあ、やってもらおうかな」

「おまかせを!」

 エンピツはクルリとさか立ちをすると、プリントの上をすべるように動き始めた。

 答えがスラスラとうまってゆく。

「終わりましたよ」

 息をはずませ、エンピツがもどってきた。

「すごいわ。どうして、そんなにかんたんにできちゃうの?」

「毎日、学校に行ってますからね。先生の話を聞いとけば、こんなのへっちゃらですよ」

「あたしだって聞いてるわよ」

「そうかなあ? ユウコさん、いつもケシゴムさんと遊んでばかりだけど」

「ふーん」

 ユウコはとぼけてみせた。

「三角定規さん、それにコンパスさんも、ユウコさんたら、先生の話をちゃんと聞けばいいのにって」

 エンピツたちの言うとおりで、ユウコは勉強がなによりも大きらいなのだ。

「では、これで失礼いたします。ご用のおりは、またいつでもどうぞ」

 エンピツは魔法がとけたのか、机の上にゴロリと横になって動かなくなった。

 そのときだ。

「おい、ユウコどん!」

 フデ箱からケシゴムが、カカシのような顔をのぞかせた。目も口も、ユウコがラクガキしたものである。

「今日は、ワシの出番はないのかい?」

 これまで一番よく働いていたのが、このケシゴムである。それに授業中、いつもユウコの遊び相手にもなっていた。

「あら、あなたも魔法が使えるの?」

「ああ、もちろんさ」

「じゃあエンピツさんみたいに、フデ箱に魔法をかけてもらったのね」

「フデ箱からだと? はなからワシは、魔法の力を持っておったわい。それも、たいした魔法の力をな」

「でもね。もうこのプリント、エンピツさんがやってくれたから、どこも消すところなんてないの」

「なに? エンピツのヤツがやっただと。そんなズルをしていいのかい!」

「大きなおせわよ」

「なあ、ユウコどん。宿題は自分でやるもんじゃ。まちがってたら、ワシが消してやるからさあ」

「あなたって、おかあさんみたい。ほんと、おせっかいなんだから」

 ユウコはケシゴムのおでこを指ではじいてやった。

「おー、なんてひでえことを」

 ケシゴムがフデ箱から飛び出し、プリントの上をピョンピョンとびはねる。

「宿題、もうおしまいよ」

 ユウコはケシゴムをつかまえると、フデ箱の一番おくにしまった。それからベッドに寝転がり、大好きなマンガを読み始めたのだった。


「ワシの力、みせてくれるわ」

 ケシゴムはフデ箱の底からはい出すと、おでこをプリントにくっつけて走り始めた。

「やってやるぞー。それ! それ! それー」

 おでこの汗が飛びちり、走るほどに答えがどんどん消えていく。

「それー、やけのやんぱちじゃー」

 ケシゴムはがむしゃらに走った。

 どんどんこすれて小さくなっていき、しまいにはすりへって豆ツブほどになった。

 それでも止まらない。

 ついにケシゴムが消えた。

 するとどうしたことだろう。

 なぜかフデ箱の魔法の力も消えていた。

 そのことをユウコが知ったら、さぞかし残念がるだろう。

 でもしかたない。

 このケシゴムも福引の景品。

 お母さんが引いた残念賞だったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これは楽しい童話ですね! [一言] 子どもでも楽しんで読めそうですね! すごくいいです!
[良い点] 伏線がきっちりしていて、すばらしいです。文房具の特質を存分に織り込んだよい作品だと思います。 ユウコちゃんはしっかり自分の力で勉強しないといけないですね。そこまだ意味を込められているところ…
2017/12/16 07:18 退会済み
管理
[一言] オチもあるし、生き生きとして面白いし、なによりも子どもたちにとっていちばん身近なものを扱って書かれているのがいいですね。想像が広がりやすいと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ