~七里霧中~ ベッドの上で
夜勤でちょっと遅くなりましたわ。すみませんです(´Д`;)ヾ
家から出てすぐ、ルネさんが集落の入口にたっているのを見つけた。
家から出て横を見ればすぐ先に入口があるのでそれは自明の理。
改めてルネさんに礼をいこうとすると、逆に向こうの方がこっちへと近づいてきた。
「用は済んだようだな」
微笑を浮かべている姿は本当に様になる。
別に、本当にノンケだからね。
そっちの気はないからね。
なんか頭の中で否定すればするほど妙な深みにはまりそうだがそれほどまでにルネは美麗な人だなと改めて思った。
それほどまでにまわりと隔絶しているのに妙にこのあたりと雰囲気があっているので違和感は感じないのもまた不思議なものだけども。
「ええ、おかげさまで。本当にありがとうございます」
ヒィロを前に抱いたまま礼をする。
「いや、なに、職務を遂行したまでですよ、ラス殿」
そういってくれるとありがたい。
にしてもやはりこうして言葉が通じているのはなんともありがたいものだ。
そう思って
「いえいえ、こちらこそ、でも、息子もこれでひとまず安心ですし。それで、折りいって相談ですけども、もし保育施設などあれば、私自身も、ヒィロを預けて役に立つよう働きますし、是非お願いしたいのですが」
「急に、どうされたのです?」
じっと、ルネさんがこっちを見ているけども、自分の思いは正直に言わないとだしね。
「私たち、今、身の所在がないもので、どうにか居場所を得たいと思っています」
「ということは定住の予定で」
ふむ、と考え込むようにあごに手をやる。
やはり、難しいか。
あっちの世界でも難民申請ってけっこう苦労するってあったし、そんな「はいそーですかー」って行ける訳はないか。
「あ、いえ、ある程度の期間で構わないんです。この子のためというのが大きいところですが」
「まぁ、大丈夫でしょう」
へ?そんなあっさり?
「私には多少権限がありますし、ラス殿の様子からだいじょうぶかとも思われますね。それに、むしろ今現在の村々の様子からするとどこででも人手が必要でしょう。少なくとも小競り合いの被害が収まるまでのあいだは居住は可能ですね。それに・・・」
ルネさんはそれからもいろいろといっているが、ふむ、なるね、要は単純に男手がいるってことなのかもしれない。さっきの崩れ落ちた村とか見るに小競り合いが終わったあともここで過ごすことはないだろう。一時避難所と言っていたし、そうなればあーいった村を再建していく必要があるだろう。
無論、こんな事が起こったあとだから極端に人口は減っていることだろう。
逃げていなくなったか死んでいなくなったか定かではないが。
そういうことだから村への新規移住など村の人口を増やすことなら、何でも、というわけにはいかなくても比較的緩い制限で行けるのかもしれない。
角があることについてが思うところがないでもないが村の人たちからの様子を見るとそのあたりは時間が解決してくれる問題だろう。
将来の展望に光が灯る。
「・・・とまぁ、そんなところです。ですからだいじょうぶですよ」
「ありがとうございます!」
にこやかにいってくれるルネさんに頭を大きく下げた。
ほんと、渡りに船どころか地獄に仏、異世界にルネさんってところかな。
「それに」
と、おもむろに真剣な表情でこっちを見た。
「実は私事もありまして、ちょっと貴方に興味がありますのでね」
へぁ?なに?興味?
ちょっと背筋に寒気が・・・・・
「まぁ、こんなところで立ち話しているのもなんですしね。この避難所のそばに私の事務所兼家がありますので移住資格や仕事の斡旋など諸々はこちらでやりましょう」
「はぁ」
んー、まぁ、断る理由が見当たらないし、第一これを断ったとしてもではいったいどこへいくの?って話なので。
というわけで、ルネさんはこのあとすぐに避難状況と争いの推移を確認しに一旦この場から離れていった。私たちはその間、何をするでなく避難所周辺を散策することになったのだが、見た目からかそれとも気力がないだけか、こちらに話しかけてくる人もなく、ふらふら歩くだけであった。
とはいえ、それだけでも今まで見たことのないものが多かったりするし、ちょっとだけ森を眺めて風景をちょっと楽しんだりといい体験はできた。
夕方あたり、ルネさんが職務を終わったのか自分たちを探しに来てくれて、そうして家へと行くこととなって・・・・・
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今に至る。
うん、で今いる部屋は客室にいるわけだ。
特に、雑多に家具があるわけでなく、そこそこ広い室内の窓のそばには小さなテーブルと椅子が向かい合わせに二脚。テーブルの上には水差しとコップが乗っている。そして、壁側にベッド。私たちはヒィロも一緒にベッドの上に座っている。
それまでの食事などは避難所でもらったものもあるし、こっちは平気だった。
ただ、ヒィロはどうもあまり食欲がないのか今の今までくーくーと眠っている。
腹は減らないのか?
それよりもそんなに眠いのか?
揺すってみても軽くぐずってそれからまたこてっと寝てしまい、それを何度か続けるうちに諦めてしまった。
おとなしいならおとなしいでよし。ないたらその時考える方針に切り替えた。
単に破れかぶれという気がしないでもないけども。
そういう私も実はそんなに減ってはおらず、炊き出しにてもらったじゃがいものスープのみでけっこう未だにもっていた。
首をかしげたくなるが、今はこんな非日常が巻きおこっているのだからそういうものなのかもしれない。
胸がいっぱいで、とかね。
やがて、ぷらぷらと足を揺らしてベッドの上でぼんやりとしているとドアをノックする音がした。
「ちょっとすまんな」
そういって、扉をあけたイケメンさん。
ルネさんね。
ちなみに一人暮らしだ。
・・・・あまり関係ないか?
「いえ、別に。それで書類などに関してですよね」
「ああ、そうなんだが・・・・・その前に一つ聞きたいことがあるんだが」
と、言葉を一度きり、何かを探るような目でぐるっと室内を見回したがやがて重めのため息をはいてこう答えた。
「あなたたち、何者だい?」
「・・・・はい?」
いきなり何をいうのだろう?
「いや、変なことを聞くようだが重要なことなんだ。そもそもホーンのことは傭兵以外ではほとんど北方部の自由都市連合でしかあえないものであまり知らないが、それでも、少なくとも・・・・」
じっとこっちを見た。なんか自分の顔を・・・・いや、なんか視線が若干下に言っている。
首あたり?いや違うな、それよりはちょっと上・・・・・口?
はっ、まさかこのシチュ・・・・
イケメンが男に言い寄るようなそんな・・・・・
いやいやいやいや、こっちはせいぜい十人前な容貌だし、赤ちゃんもこうして抱き上げているわけだし、何よりも、そう、私はノーマルなんだから。
BLは読んだことあるし、持ってたけども・・・・でもでも・・・
といろいろと思い巡らせていると、ルネさん、口を開いて・・・・
「言葉の音と口の動きが違う人間がいるものなのか?」
得体のしれないものを見ているようなうろんな目で、こっち見られました。