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子連れ竜生録  作者: こるり
7/48

~六里霧中~  in 避難所

 『私の名前はラス。この子の名前はヒィロ。遠い地の難民です』



 なんて、いってから、なんかもうあっという間に時間が流れたような気がする。

 現在はあれから半日以上立って夜の夜中。

 それも彼、ルネさんの家に現在お邪魔してます。

 森林官ってあった時に言っていたが、なかなかどうして立派なおうちに住んでいる。

 部屋数は7つ、うち、広めのリビング、台所、洗面所、それに客間付き。

 5LDK?なんかよくわかんないけども、でも、それなりに広い上に二階付き。

 いや、それ以前に家が建っている場所が場所。

 何せ、巨大な大樹の上に建っているのだもの。

 俗に言う、ツリーハウス。

 けっこう子供の頃に憧れていた建物の一つ。

 それだけに初めてその建物へと案内された瞬間「おおおっ!」と目を見開いて感嘆したものだ。


 で、どうして、現在こうしているかというと・・・・・



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 少し遡って昼前のこと。


 ひろちゃん改めヒィロちゃんのためにまだぐずってはいないが、早いところご飯を上げないとと思い、安全地帯へと足を急がせた。

 さっきの緊迫した場所から離れることいくばくか、意外と近くにそこはあった。 

 全体的にちょっとした集落のような感じでそのうちの一軒の家にルネさんが足早に入りその一区画へと案内してくれた。

 「おじゃましまぁす」とおそるおそるついて行って入ってみると中で赤ちゃん特有の鳴き声が複数聞こえていた。

 ルネさん曰く、ここは乳母さんが集まっている場所だそうで、もともと村などでも一種の母親コミュニティとして、こうして母乳の足らない母親を助けるためにと機能していたものが先の争いからここに一時的に移ってきたとのこと。

 部屋の周りには何人かの赤ちゃんがいて元気にほにゃほにゃ泣いている。それを抱っこしているお父さんお母さん。



 かわいいわぁ。



 列になって並んでるけどどうも順番待ちみたい。とりあえず、ここで、おっぱいをもらっていったらいいと優しくいってくれた。そんな自分らの話をしている最中老若関わらず女性からルネさんに熱い視線を送っている人が多いなぁ。

 そりゃまぁ、これだけイケメンだし性格もイケメンならねぇ。

 目の保養にもなるだろうな。

 その割にはそういえばルネさんはそれらの視線を意に介して無いもよう。


 鈍感なのかな?


 まいっか。

 とりあえず、順番に並んでぼんやりと待ち、その間ちょっと情報交換しようかなと思ったけども、あまりじゃべってくれる人はいなかった。

 っていうか、微妙に距離取られてるのかなぁ?

 ちらちらと頭の角を見てくるし・・・・



 やはり、この角って警戒される?


 

 はわはわしながら待っているといつの間にか自分の番が来て部屋の中に入る。

 中に入ると何人もの乳母さんがいて赤ちゃんをあやしてる。

 なんか保育園みたい。

 とりあえず、その中の一人がこっちを手招きしてるようで近づいていった。

 自分より幾分か歳が上かな。


 ちなみに私自身はもう三十路になりました。


 けっこう、童顔であまりもう少し歳がしたに見られることはあるけども、でも三十路になりました。

 で、まぁ、別に歳の話をするわけでなし、赤ちゃんのごはんをお願いした。

 ちなみにヒィロは待ってる間から今までうゆうゆと動いてあたりの様子をきょろきょろと見ている様子だったが、ちょっと怪しくなってきている様子だった。

 抱っこでかろうじてぐずることはなかったが一歩手前って感じ。

 存外間一髪だったんじゃないのかな?

 とりあえず、母乳をあげることには成功した。

 元気にうっくうっくと飲んでいるようだ。

 本当によかったぁと心の底から安堵した。

 待っている間は当初は「他人のおっぱいを我が子が飲むのか・・・」と迷う気持ちが若干あった。

 そりゃね、おっぱいがなければ赤ちゃん用粉ミルク、もしかキューブタイプのミルクがあるじゃないって日本では思っていたものだけどこういうところではねぇ。

 でも、こうして飲んでいるところをみるとなんていうか、自分の心の狭さを改めて思い知ったというか、こんなときでもどうも前の世界の[自分の常識]というのに囚われている。さっきの争いを見ても呆然とし、逃げようかどうしようかのんきに、優柔不断に考えていたしで、なんていうか今更ながらに情けなくなってきた。

 後ろではうっくうっくと勢いよく飲んでいる音が聞こえほっとなでおろした。

 上げている女の人はにこやかいヒィロを見て幸せ気分になったが、すぐにその光景から目をそらした。

 まぁ、まじまじと見ているわけにはいきませんからね。

 女の人はくすくすと笑って「はずかしがるもんでもねぇのに」と言ってはいたが、価値観の違いか何か知らないけども、こーなんていうか・・そう、




 自分、紳士ですから




 さて、その間、窓があることを幸いに外の景色を見てみた。ちなみに窓にはガラスが張られており、そこから見てみたわけである。

 ガラスがあるっていうことだしそこそこ文明レベルが推し量れるってものだが、それでもやはりというかなんというか、全体的な雰囲気からどうも昔へとタイムスリップしてきたって感じである。

 着ている服やら食べているもの、子どもたちが遊んでいる品々から、本当に昔の時代って感じがする。

 まぁ、ヨーロッパの高原とかに牧歌的に暮らしている人ってイメージがもっとも近いかも。

 ぱっと見、本当に昔の地球にでもタイムスリップしたんじゃないかとおもったが、ところどころで往来する、また地を這いずっている生き物をみてああ、ここは地球じゃないんだなと確信する。

 だって、通り過ぎていく人の流れの中に大八車を牽引している角の生えた馬や牛っぽいけどそれにしては妙に丸まりすぎている動物とか四足どころか八本足の犬を大事そうに抱っこしている少女とか、けっこう変わった生き物がちらほら見受けられた。とはいえ、普通に今までに見たことのある動物もいたので変わりすぎているわけでもない、といったところか。


 到着した時、ルネさん曰く、ここは一時避難所であるらしい。

 大きな藁葺き屋根が数件立ち並び、テントのようなところで炊き出しが行われ、広場では小さな子ども達が遊びまわっている周りで不安げに大人たちが家々の周りで座り込んでいる。

 どうも入りきれなかった人達はそういうふうにしているようだが、それでも人の集まりにいられるだけよい、ということで一時的には満足なのかもしれない。

 子ども達が遊びまわっているところのみを切り取ってみてみれば昔の山村としてのイメージかもしれないが大人たちの暗さが一種異様な雰囲気がある。

 到着時に蛇足混じりでここに避難してきている人たちはさっきの争いの中にあった村の人に加えて、それ以外でもどうも焼き討ちめいた村もほかにあったようでそれらの村人が集まって全部で150人強であるともルネさんは言っていた。

 集落の規模からしたら随分と多い人であるが詰めればなんとかなるといった具合である。

 

 「ふむ」


 と、考え込む。

 そこそこ重要なこと。



 今後のことについて、である。



 とりあえずの屋根と食料(おっぱいも、ね)を確保できたわけだし人心地がついたわけだがそのままでいられるというわけではない。

 むしろ、なんかしたほうがいんじゃないかって気がする。

 


 別に、何もしないという選択肢もないわけではないけどもね、なんも感じないのならば・・・・


 ただ、さっき遊んでた子達も遊びからしばらくして、炊き出しの手伝いをし始めたし、それらを見てから、不安にかられて座り込んでいる人たちも、日頃何してるかなって考えてみた。

 学校とかってあるかどうかはわからないけども何がしかの仕事は絶対してるはず。

 だってみんな、仕事してるって体つきなんだもの。

 少なくとも、ヒィロにおっぱいを飲ませていた女性に、失礼ながらも背中越しから尋ねてみるとやはりというか、あまり怠けている人はいないみたい。日ごろ休んでる人もいるにはいるが、自警団があるとのことでそれに所属し、有事の際は避難誘導したり、人々を護衛したり、もちろん治安維持をしていたりとしているし、休んでいるといってもなんだかんだで訓練はしているようだった。

 もっとも、それを話したあと声は暗くなり、


「でも、今回のことで負傷したり、亡くなってしまった人も少なからずいたからね」


 と、言っていた。

 女の人も、せんだって友人の夫がここにいる人たちの護衛中に流れ矢を受けて負傷してしまい、現在治療しているとかいっていた。

 で、当の女性はというと

「あー、うちは病気でちょっと、ね」

 と言いづらそうにされていたので慌てて謝った。

 振り向いて、もちろん目を閉じたままでいったが、ちょっと周りがしんとなったり息をのんだりしている声が聞こえたが、うん、まぁ、そういう反応だろうな。

 それに、さっきの待合でも角をちらちら遠巻きにするみたいにみられているようだったし、兵隊でないという認識があれど、やっぱり違う人種は異端っぽく見られるのかもしれない。

 それでも、そんな息子に乳をあげてくれるのだからそれだけでも感謝してもしきれないものである。

 

 と、話はそれた。

 で、自分の今後を考えるに、なにかそんな彼女を含めた村人に何か恩返しめいたものはできないか考えてみた。

 そこからあわよくば、何か今後の展望に関してのヒントがあればと思うし、ぶっちゃけた話、この世界のことについてもっと知りたいというのがある。

 それならばまずはその世界の人々の懐に飛び込むのが一番と考えた。

 

 そう思いつつ、ヒィロのご飯も終わり、礼をいう。

 ちなみに、無償であるということを前もって聞いていたのでちょっと甘えるような形になった。

 何も持っていないだけにその好意におんぶにだっこみたいで歯がゆいものがあったが


 「助け合いはこういうときにこそ必要だしね」


 と、にこやかに礼をいったあとに言われて、胸があったかくなった。

 もう一度、礼をすると、邪魔にならないようすっとその場をあとにした。


 

   

  

 初予約投稿☆ 


 むぅ・・・


次回はちょい投稿は遅めで・・・・

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