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子連れ竜生録  作者: こるり
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~四里霧中~  救助と誤解と


 深みのある声。

 それでいながら、安心する響き。

 こういう森の中であるだけに思わず、こういうファンタジー世界からかエルフとかそういうのを予想して、草むらから上半分だけ出た頭できょろきょろと辺りを伺った。

 息子がお腹の上でばたばたとして、思わず「ちょっと待って」と小声で言いつつ、彼を見つけた。

 木の上の太めの枝に片足立ちになった姿勢で弓を引き絞っている姿が見えた。わりと遠くではあるがはっきりと姿をみることができる。

 

 「もう一度言います。ここは立入禁止区域です。国家間避難民条例を知らないわけではないはずです」


 再び聞こえる声。うん、なんか耳にはちゃんと日本語で来る。

 言葉がわかるのはほっとするわ。

 異世界なんだから『ほにゃらか語』的言葉を覚えなくてはならない試練ってのがあったらどうしようかと思ったけど、こうして言葉がわかるならその試練はなしってことだから、安堵する。

 正直、英語とか中国語とかとてもじゃないけども覚えるのが苦手中の苦手なものだったから。

 無論、書き取りも苦手です。

 とにかく、ほっとしている最中目の前の光景では、男たちも彼を見つけたらしく殺意の篭った視線を投げつけていたがそれぞれの懐を確認して最後女を一瞥したあとつばをはいて、各々支え合いながらその場をあとにしていった。

 残った女性はへなへなとその場に崩れ落ちて座り込んだ。

 そこへ弓を背中にかけて木の上の彼は素早く彼女のもとへと駆け寄った。

 颯爽としてるなぁ。

 そんな二人をこうして助けられている現場をみて気持ちに余裕が生まれた。

 二人の姿はそれぞれどういったらいいのか中世と近代の間くらいの洋服か。

 女性は長袖にスカートって感じで、まぁ、町娘っていったらそれまでな感じのちょっと董のたった女性。

 彼は深めの緑というか森に溶け込むような色合いのチュニックに動きやすそうな長いズボン。

 まぁ、どういう名称か、自分には服飾知識がないのでよくわからないけど、でも、少なくとも現代世界ではコスプレでしか見かけないような衣装である。

 で、二人共々、『人』である。

 エルフとか獣人とかそういうのではなく普通の人間である。

 正体不明の物体Xなんてそんな存在では決してない。

 まぁ、ほんとによかった。

 こういう救助のワンシーンは思わず微笑んでしまう。

 やはり逃げようとした手前複雑ではあるものの、こうして人が助けられたというのはほっこりとする。

 足に手当を受けながら女性はじっと彼を見つめていた。

 そだねぇ、女性はかわいい系というよりは美人系ではあるもののどこにでもいそうな雰囲気をまとう一般女性なのだろうけども、助けている彼は俗にいうイケメンという部類に簡単に入るだろう。

 運動能力も良いわけだし、なにやら学のありそうなこともちょっとだけだがいっていたわけだし・・・・・



 ケッ!



 とかまぁ、思うやつもいるんだろうな。

 自分はそんなのはない・・・・といえば嘘になるがそんなに強くはない。

 なにせこの子がいるんだし、もうそれでいいかなって思う。

 


 ・・・・妻には逃げられたけどね・・・・ケッ!



 そうこうしているうちに手当は終わったのか彼は女性に何かを言って森の一方向を指差す。

 女性はそっちを見て彼を見てもう一度森の指さされた方を見る。

 何かもう何言か言って女性はゆっくりとそっちの方へと向かっていった。

 手当中から彼らがどんな話をしているのか聞き取ることはできなかったが、少なくとも女性が向かっていった方向は安全圏なんだろう。

 おもむろにこっちもそちらへ行くとしますか。


「・・・っと、そこにいるものも姿を見せよ!」


 とまた、彼は声をあげた。

 えっ?まださっきの男たちみたいなのがいるの?!

 って、どうも弓をこっちに照準合わせてるぅ?!

 あわてて、草むらから手をあげてばっと立ち上がった。

「む、向けないで!こ、こっちには・・・」

 と、急に立ち上がったからか・・・・



 「うあああぁぁぁぁーーーー」



 あー、ひろちゃんが泣き出した。

 反射的に上げていた手を下ろしておろおろとしながらも体をゆらしてあやす。

 ちょっと、弓をこっちにむけられてるんだから今、泣かないで欲しいってそれをいうのはちと酷なのか。

 あー、どーしよ・・・・



 「ふむ」

 


 ひと呼吸おいて、彼は弓を下ろしてこちらに向かってくる。

 え?なに?

 「赤子連れか。そなたも早めに向こうの安全地帯へ・・・」

 あ、なるほど、ひろちゃんを連れてるから警戒を解いてくれたのか。

 とすればちびちゃんに感謝なんだろうな。

 で、目線を下にやれば・・・・


 「あんまぁ、うぐ、ぎゅわぁぁぁ!」


 あー、いまだに泣き続けらてる。どうにも緊迫感とか安堵感からほど遠いところである。

 「よしよしぃ~」と揺らしてあやし続ける中彼が草むらをかきわけてこちらへ来る。

 彼に関しては知らない人だけど、さっきみたいに女性を助けてくれる人なわけだし、いい人で間違いはないんだろうな。

 そう思って顔をあげると・・・・・



 え?



 なぜ?



 どうしてそんなやたら険しい表情でまた弓を引き絞って矢尻をこっちに向ける?



「ひっ」

「何者だ。どこの所属だ。条例を知らないのか!赤子をさらって」

 息継ぎのような悲鳴をあげている最中、質問をなげつけてくる。 

 え?どゆこと。

 目を白黒させて戸惑っているとさらに言葉を投げつける。

「お前はさっきの軍の一員だろ。『ホーン』よ」

 あっ、てことは、自分はさっきの合戦している一員の一人、というかさっきの男たちと同じ部類って思われてるってこと?!そもそも『ホーン』なによ。自分はそんな名前じゃないぞ。

「質問に答えよ。さもなくば、先の男たちのようにするぞ」

 あ、ご丁寧にいってくれてるところまだ助かるのか?

 でもでもちょっとちょっと、話を総合してみて、もしかして赤ちゃんをさらったってことにこの人の頭の中ではなりかけてるの?

 彼との距離は3mもない。弓ですれば至近距離もいいところ。

 とにかく、ひろちゃんあやしは一時中断!敵意がないことをとにかく彼に伝えないと。

「早く答えぬか!」

 弓をさらに引き絞る。狙い定めるはやっぱり位置からして足なんだろうけども、すぐさま二の矢が弾けるようにもう一本指にひっかけている様子から返答次第ではまじで足に角をはやさせることになりそう。



 さて、どうしよう・・・・

 伝えるためには・・・・




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