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子連れ竜生録  作者: こるり
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~二里霧中~  荷物確認と森


「まぁ、まずはっと」


 抱っこひもをかちりと止めて、息子のひろ(この子の名前よ。可愛いでしょ)温かみを服越しから感じつつ、ぱたぱたと、手で体中をまさぐってみる。

 別にかゆいとかそういうものでなく、ポケットとかに何か入っていないかなとか服の確認というか、そういうところ。

 荷物確認は大事ですよ。

 どっかの地下坑道で荷物確認していた某少年みたく、現状認識した上で落ち着ける材料というのはほしいところだしね。

「服はお互いちゃんときてるみたいだし」

 そりゃまぁ、こんな場所で全裸待機しながらのほほんと荷物確認なんぞできやしないしね。

 とりあえず、あのときの・・・ここに来る前の服装のままである。

 ひろちゃんは上下別々のふわもこ寝巻きと下には上下一体の下着にしているロンパース。あと、赤ちゃん用パーカーにちいちゃな靴下。ついで抱っこひも。

 自分は、ちゃちゃっと着替えていたのでジーンズに上は冬用の長袖とワンサイズ大きめサイズで買ったフード付きのメンズのパーカー。

 ちなみにパーカーはサイズを間違えたわけではない。赤ちゃんを抱っこしたままで着られるママコートというのがあるけども、これ、割と普通の服の類からしたら自分からしたら若干値段が高めである。その点、自分の体よりも大きめのパーカーなら、服の伸びもいいし、けっこう抱っこしたままでもチャックがしまる。欠点とすれば後ろからの抱っこが、まぁ、物理的にできたとしても非常に不格好になるのであまりおすすめはできないがそれでも前からの抱っこなら問題なくできるのでけっこう愛用している。

 特に寒くなるにつれて防寒対策は必需品。いくら赤ちゃんの体温が高くて、大人よりも一枚少なく着てもいいとか、たま○よさんに書いてあったとしてもやはり、寒いものは寒いだろうし、念には念をいれないとね。夏場は暑かったからそれでもよかったけどね。

「あとは荷物か」

 と、さっきからぺたぺたまさぐってもポケットには何もない。入れてたはずの鍵もなければ携帯もない。お金ももちろん持ってない。

 と、お金というところではたと思う。

 そういえば必需品たる食べ物がさっぱりない。某少年もけっこう物持ちよくいれていたけども今の自分らには飴玉の一つもない。

 いくら防寒が整っていようともこのままでは・・・・



 飢え死街道まっしぐら。



 不安が増大した。

 それに加えて、今もまだ卵(?)から抱き上げてからさほど時間は立っておらずまだ、眠っているようだけども起きてちょっとしてお腹がすいたと訴えてきたら・・・・・


 阿鼻叫喚?


 赤ちゃんの甲高い鳴き声ってけっこうあわあわしてしまうものだし、第一、こんな森の中。鳴き声に釣られて何が出てくるかしれたものではない。

 とにかく、さっきも考えていた森から出ることが先決である。ただ、今はともかく、

「この角のままで大丈夫なのかな?」

 そう、頭、正確には側頭部にはえた牡羊の角のようなもの。

 普通の人間ならこんなの生えてない。

 右の半分にかけている角はどうにかすれば髪に隠れるかなぁという位のものだが、左はどう考えても髪では隠れない。フードでも被るにしろずいぶんと歪な頭の形になるだろうし・・・・・


「ふぅ」


 ため息。なんかさっきからため息が多いような気がする。

 って、こんなことじゃいけない。前向きにしなくちゃね。

「もう、森から出て考えないとね。最悪、もう、『こんなアクセサリーつけてみました』って・・・痛い人みたいだけども、もうそれで押し通そ」

 踏ん切りがついたところであたり一面を見渡して、辺りをつけつつ歩き出した。

「自分の食べ物は木の根っこでもかじれば済むことだし、木の実でもあればラッキー。あとは人でも通ればいんだけども」

 どう周りをみても深い森の中。

 幾分か辺りを見渡しつつ歩いてもあるのは草や木や落ちた葉と土。たまに昆虫とかちょこちょこと歩いていたような感じ。

 そのくらい。

 とても静かな森の中。


 静かな森。


 ・・・


 ・・


 ってあれ?


「鳥の鳴き声とかも何も、そういえば聞こえないなぁ」

 と、歩いて草をかき分けながら言葉に出してみた。

 そう、草をかき分けたり土や葉を踏む音とかするのにさっきから歩いてみても何の鳴き声もしない。

 それどころか、何かの獣がいるような気配がさっぱりしない。

 ちょっと、妙な気がする。

 以前、山歩きとかしていて時、さすがに人里離れた場所ではなかったので大型の獣とかはいなかったが、鳥くらいはそこそこ見かけたものである。

 ここが異界だからか?

 そもそもさっきの女性の声が本当ならばだけども『霧竜』とかつまりは竜がいる世界なんだから、そういう生態系でなりたっているのかもしれない。

 自分の世界の常識を当てはめて痛い思いをするのはちょっとまずい。

 基本、コメディでは精神的なイタイ思いってのが多いけども、ここでは物理的なものかもしれない。

 赤ちゃんがいるわけだし、特に気を付けないと。

 まぁ、必要以上にびくびくしてはいけないのも事実。

 虎穴に入らずんば虎子を得ずってね。

 にしても、深い森。せめて、いま自分がどこにいるのかわかればいんだけどもなぁ・・・・


 

 そんな感じでさらに歩くこと30分もして・・・・・



「ほんとにここ、どこぉ?」

 もうね、なにもいないの。

 ため息つきたくなるわ。

 どうにもそろそろひろちゃんも足がぴくついてきたし、起きる傾向にある。

 できれば起きる前に人かせめて水場に出たいところなんだけども、さすがに素人が下手に山歩きするのはむりがあったか。いや、まぁ、そもそも山というわけでなく、森の中なんだろうけども、でも森林探索で身一つで出るのは今更ながらにあほなものである。



 無理やり連れてこられたようなもんだけどもね。


 

「ほんとに、どこよぉ、ここぉ・・・・」

 ぽりぽりと頭をかいて、もう何度目になるだろう、耳を澄ませてせめて何か物音がしないか探知してみた。

 

 ・・・・ほんとに・・・・いないのかなぁ・・・・


 また、ため息をつこうとした、つとそのときだった。



 『・・・・・ォォォ・・・』


「ん?」

 ちょっと遠くで大勢の雄叫びを上げる声が唐突にきこえた。

「なんだろ?」

 疑問符はあがる。

 けども、ここにきて初の声らしい声であった。

 複数のあげる雄叫び声というのが妙にひっかかりを覚えるが、何のあてもないよりはましである。

 改めてもう一度、耳をすます。

 音があった方向にむけて・・・・・


 『ゥォォ・・ォォォーー!!!・・・・』


 うん、意識を集中してみて、さっきよりも聞こえる。

 声の方はあっちか・・・・

 意を決して、行ってみよ。

 人がいれば食料もある。

 何かの情報もあるし、今後の指針にもなる。

 とにかく、行ってみよ。 

赤ちゃんの服だけども、個人的にはふわもこのボディオールが好きです。

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