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猫に見えて猫じゃない喋る謎の生物。
そいつが【マラク】と呼んだ怪物はサイズこそ規格外だけど、一応人の形をしていた。オーロラみたいに蛍光色で、顔はのっぺらぼう。腕のある部分にはカマキリみたいな鎌が4本。ちりちりちり、としか聞こえなかった異音はどうやら鳴き声のようだ。
ステッキを振り回してたら出てきた怪光線で【マラク】とやらはあっさり消滅していった。あっけない終わりだった。
「君が生まれるよりも随分前の出来事ニャ。こことは別の次元でひとつの宇宙が終わりを迎えたニャ。その次元が【劔】。滅亡の理由は簡単ニャ。資源の枯渇ニャ。
この世界でも同じことしてるけど、こっちは人間より自然世界の方が強いから、滅びるとしたら宇宙の中の地球の人類だけニャ。
でも【劔】と【無手】は文字通り次元が違うニャ、【劔】の人間は星も銀河も星雲も、宇宙全体からエネルギーを絞りとったのニャ。人為的なエントロピだニャ。
もうあの次元じゃ時間すら動かないのニャ。そんな【劔】の生き残る手段は解るニャね?他次元への移住ニャ。僕ら調停者の【旗】の警告を無視して、君たちの【無手】へとやって来てるんだニャ」
「それと魔女っ娘の関係性が全く見えません」
「言ったニャよ、【劔】と【無手】じゃ性能がまるで違うのニャ。月とすっぽんどころかブラックホールとミジンコだニャ。【ザムザプログラム】はそんな【無手】の人間を【マラク】と戦えるように強化するシステムニャンだニャ。では君と契約を結ぶに当たって、最初にしてもらいたいことがあるニャ」
すごい、了承してないのに話を進めてくるよこの猫もどき。
「ずばり、ミーの呼び名を決めることニャン。これからミーは君の使い魔になって命令絶対服従の陰に日向にこき使われることになるニャよ」
「なんでも命令していいんですか?」
「なんでもOKニャ」
「契約解雇っていうのは」
「それ以外ニャ」
けちくさい。
「さぁさぁ決めるニャ。でないと一生君はその魔女っ娘の姿で生きていくことになるニャよ」
嫌すぎる。クーリング・オフの効かない訪問販売ってなんて質の悪い商売なんだろう。絶対テレビショッピングなんてしないぞ。押しかけられたら居留守使うぞ。
「決まったかニャ?」
「…じゃあ、ニャンころで」