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ピンクの細い棒。先端に付いたきらきらの星型の飾り。宝石だかガラスだか一見しただけでは判別できない飾りがふんだんに使われ、羽のモチ―フも邪魔にならない程度についている。

これはあれだ、一振りすればシャランラと効果音が出そうなあれだ。所謂魔法のステッキと呼ばれる未確認物体だ。液晶画面の向こうか、またはおもちゃ屋さんでほニャらら千円で並んでいる代物のことで間違いない。

そんな珍妙奇天烈なステッキを握らされてどうすればいいのだろう。液晶画面向こうの二次元に送り返せないものか。またはおかーさんに魔女っ子セットを買ってもらえず不貞腐れてるちびっこでも可。っていうか急募します。当方、アラサーの男なんです。



今日の帰り道の事である。

日付変更間近にやっと終わった残業にお別れを告げ、いつものように退社した。この時間なら終電ギリギリだ。何とか間に合うだろう。

警備員さんに会釈をして会社の入ったビルを出て数分歩けば最寄りの駅だ。ICカードを改札口にタッチ。プラットホームに降りたと同時にJRが停車する。よかった、間にあった。これに乗れなかったらどこかの漫画喫茶で夜を明かすことになってしまうのだ。タクシーで帰るより漫画喫茶で一泊する方が安い。

終電だけあって混んではいたけど、朝のラッシュほどではない。酔っ払いのオッサンの酒臭い息に顔の向きを変えたら後頭部の寂しい別のオッサンの加齢臭にぶちあたった。オッサンのダブルコンボに泣きたくなる。自分も数年後、こうなるなんて信じたくない。信じてたまるか。這い寄る混沌と脳内で戦いながら五駅目で降りる。やっとバトルに勝利した。地味にHPを削られたがしかたあるまい。この冷たい外気で回復するとしよう。そこ、排気ガス臭いなんて言うな。

さて、ここでデジタルの腕時計は次の日付を変わっていたことに気付いた。今日も午前様である。駅から出て最寄りのコンビニで飲み物と夜食を購入。タバコはやってないから買わない。弁当はあらかた生き残っていなかった。生存していたのは唐揚げ弁当くらいか。賞味期限は今日だった。コンビニ袋を辞退することなく、白い袋をぶら下げて家路を急ぐ。数時間寝ればまた仕事が待っているんだ。角を三回曲がり、遊具の少ない児童公園に差し掛かる。

「キミキミ、魔法少女にならないかニャン?…うーむ、なんかこう、インパクトに欠ける科白だニャン。捻りがないニャン。おれおれ詐欺の方がよっぽど心を揺さぶれる台詞をえぐりだしてくるニャン」

短い手足にふさふさと揺れる長いしっぽ。バランスの取りにくそうなでかい頭には三角の耳がくっついている。

ねこだ。猫が喋ってる。

猫と言うよりデフォルメされた猫に近い何かだ。最近のゆるキャラブームでしょっちゅう見かけるどこどこ会社のなになにくんかは知らない。

それにしてもやけに出来のいいロボットだな。まったく、遊んだら片づけておけよ。青くてネズミが苦手じゃなさそうな猫型っぽいロボットは児童公園の街灯の下で、入口に背を向けて音声を繰り返してる。やれやれ子供たち、ロボットの電池切れるぞ。電池だってタダじゃないんだぞ。

「ニャニャニャ!?」

ゆるキャラもどきが、こちらに気づいたような反応をする。おいおい性能良すぎるだろう。屋外に放置して壊れたらもったいないなぁ。

猫っぽいゆるキャラロボットは素早く公園出口で立ち止まっていた僕の足下までやってくる。つぶらな瞳がやけにきらきらしい。

「ヘイヘイそこのおにーさん。ミーと一緒に魔女っ子しニャ~い?」

美人局か。ていうか、色も灰色だし、よく見たら猫じゃないやこれ。


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