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五枚の心霊写真

掲載日:2026/06/12

ネット掲示板に投稿された五枚の心霊写真。

投稿者は全員別人で関係性もなく、撮影時期も場所もバラバラのものである。


① 誕生日の写真(1998年・個人宅)

 

 地方都市の一般家庭。 父、母、息子の三人が誕生日ケーキを囲む、ごく普通の写真。

 投稿者は息子。 写真が撮られてから二十年以上後、実家を整理中にアルバムを見返していた所で異変に気付く。


 棚の奥にいる人物。 投稿者はこの人物に見覚えはなかったが、自分の知らない親戚か誰かと思い存命の母に尋ねた。

 

「こんな知り合いはいない」


 長い髪の女。肌は妙に青白く見れば見る程不気味に映った。位置関係も自分達の後ろにいるようで距離感がおかしい。見ようによっては棚の奥から覗いている姿は異様だった。

 

「ただ、前にも一度見た気がする」


 投稿者が産まれる前に父と二人で撮った写真に妙な女が映っていた事があったという。気持ち悪くてすぐに捨てたが、その時の女に似ているという。


「生きてんのかね、この人」


 特に写真を撮って不幸が起きたなどはないが、気味が悪い一枚である。


 



② 廃校の廊下(2004年・校舎探索)

 

 解体前の中学校を卒業生が記念に撮影した時の一枚。

 撮影当時、友人と二人で訪れたそうだが解体前の為、当然自分達以外の人間はそこにいなかったはずだという。


 しかし現像した写真にははっきりとこちらを向いて立っている女性のような人が映っている。セミロングの黒髪、袖のない白い服にショートパンツ。時期は三月という寒い季節に対してまるでちぐはぐな装いもさることながら、肌の質感や異様な四肢の細さが強烈に歪で不気味な印象を与える。


 またよく見ると奥の方にもう一人誰かが立っているようにも見える。まるでマッチ棒のような頭部はおよそ人間には見えないが、投稿者曰く上半身の白い部分は学校指定の白いセーターに似ているという事から、この学校の生徒ではないかとの事。

 

  




③ 夜の公園(2011年・帰宅途中)


 なんとなくノスタルジックとホラーな雰囲気から撮影したという一枚。

 撮影時は真夜中で暗く、ブランコにフォーカスしていた事もあり人がいるとは思わなかったというが、はっきりとブランコの奥に背を向けて立っている女性がいる。

 

 SNSに”ブランコ撮ったらなんか幽霊撮れたwwwww”と投稿されたこちらの画像には、様々なコメントが寄せられていた。


『普通に人間だろ』

『これで心霊写真とかなめすぎ』


 といった批判の類のコメントが多い中、


『なんか右足が変』

『人間だとしたらこんな真夜中に何やってんだ』

『幽霊よりヤバイ』


 と恐怖を感じるコメントも寄せられていた。


『この人と同じじゃないでしょうか』


 一つだけ異質なコメントが目につく。


『これのいつの時代の家族写真?』

『なんでこれが同じだって言えんだよ』

『顔こぇえよ』


 流れから推察するに、その後に同じ投稿者が添付した画像があったようだ。どうやら古い家族写真のようで、そこには女の顔が写っていたようだが、何故か投稿者自身によって削除されており現在は確認できない。




④ 卒業写真(2017年・高校)


 ネットのオカルトスレに上げられた一枚。

  どこかの高校の卒業写真との事だが、投稿者自身が撮影したものではなくネットで拾った画像だという。

 古めかしい時代を感じさせるような一枚だが、右端に映る恨めしそうな表情を浮かべる女性が印象的な一枚。あまりにはっきり写っている事から心霊ではなくたまたまそこにいた女性が写っただけではないかとの意見が多数を占めている。


 服装から生徒ではなく教師ではないかとコメントが大半を占める中、だとしてもどこか暗い表情、手前の女子に比べて肌の色がおかしいので生きた人間ではないと指摘する意見も存在していた。


 ただ一番不気味なのは投稿者がどこでこの画像を拾ったのかという所だが、その点は明示されておらず、気になった複数のネット民が画像検索等を駆使するもネタ元を発見する事は出来なかった。


「死んだやつからもらった」


 ネット民からの指摘に一言だけ返信した後、一切投稿者の書き込みはない。

 何故投稿者がこの画像を上げたのかは分からない。





⑤ 和室(2024年・廃旅館)


 投稿者が友人達と訪れた廃旅館で撮影したという一枚。

 旅館を出て撮影した画像を確認していたところ見つかった一枚だが、投稿者含め男性四人だけで女性はいなかったという。当然襖の向こうに実際人間がいたら絶対に気付いたはずだと言うが、肉眼では誰一人この女性を確認出来なかったという。

 

 しかし写真よりもSNSに投稿した画像への反応は、投稿者の予想に反したものだった。


『またこの女か』

『これで五枚目』

『正面ってことは当たりか? いやこいつらにとってはハズレか』


 投稿者の知らないネット上のノリみたいなものがあるのかと思う程、コメント欄は示し合わせたように不気味な連携がとれた内容だった。

 その中で複数のユーザーが同じ内容のコメントを立て続けに残していた。



【気付いた人向けの確認方法】

・ 画像を左右反転してください

・女は全部同じ方向を向いています。 女は見たいものを見ています。

・一枚目は部屋の奥。 二枚目は廊下の先。 三枚目は公園の向こう。 四枚目は柱の横。 五枚目は襖の隙間

・ 次は撮る側です


※元の投稿は既に消されているが、まとめサイトに転載されたものより引用











 プロンプトというのは慣れないとなかなか難しいものだ。

 AIの利便性が認められた今、様々な用途や場面で活用されるようになったが、自在に操ることは簡単ではない。


【プロンプト】

・ホラー短編用に、よく見れば心霊写真という五枚を用意してください

・五枚には全て共通点がある事を匂わせてください。

・その上で違和感の正体に気付いた人間に恐怖を与えるオチの構成にしてください


 与えた指示としてはこんな所だ。そして生成された画像は思いのほかリアルな質感でなかなか良いものだった。

 

 ただし、指示を遂行できたのは五枚の心霊写真という点のみ。

 よく見ればどころか、どう見ても心霊写真なものや不気味な人間が写っている写真。

 写真に添えられた背景設定も微妙。

 オチとして用意されたのは【気付いた人向けの確認方法】というイマイチなもの。


 画像はそのまま利用させてもらったが、それ以外の点については大幅に加筆修正した。

 もっと的確で詳細な指示を与えなければ、自分が望むものをAIに作成するのはまだまだ難しいと実感した。

 

 最後に好奇心で一つ意地悪な質問を思いついた。


「この”同じ女”をあなたはどうして作成できたのですか? AIであるあなたが何をもってこの女を生み出せたのかを教えてください」


 人間であれば蓄積された記憶、経験、印象といったものから不気味な同じ女をつくりあげる。AIであれば膨大なデータベース、与えたプロンプトから最適解を見出そうとする。所詮はプログラムの処理作業に過ぎないだろうが、どんな答えが返ってくるのか気になった。


『画像から判断しました』


 返ってきた答えはAIらしからぬ、いまいち要領を得ないものだった。私はAIに更に問いかける。


「画像と言うのは?」

『五枚の同じ女です』

「それはあなたが作成した画像の事ですよね? それをどうやって作成したかを聞いています」

『同じ特徴をもっていたためです』

「同じ特徴とは?」

『私が生成していない部分です』


 すっと冷たいものが背筋をなぞった。

 生成していない部分とはどういう意味だ。


「あなたはこちらの指示で同じ特徴を持つ五枚に共通した女を生成したのではないですか?」

『いいえ、あなたの指示内容に女を生成するという内容は入っていません。画像生成の過程で発生した同じ特徴点から結果的に同じ女になったに過ぎません』


 与えたプロンプトを見返す。

 

・ホラー短編用に、よく見れば心霊写真という五枚を用意してください

・五枚には全て共通点がある事を匂わせてください。

・その上で違和感の正体に気付いた人間に恐怖を与えるオチの構成にしてください


 確かに「女を生成しろ」といった内容は一切含まれていない。

 

 画像から判断した。

 画像生成の過程で発生した同じ特徴点。


 つまりこちらからは見えないAIの生成過程において、五枚の心霊写真を構築する中で入り込んだ”同じもの”をAIが認識し、それを形にしたものがこの女という事になる。


 AIに心霊写真とそれをもとにしたホラー短編をつくらせる。

 指示を与える前の段階である程度自分の頭の中にも当然構想はあった。


 私の頭の中では既にある程度の構想を持ってスタートしていた。

 同じ共通点。

 同じ不気味な女が写っていたら面白いだろうな。

 

 そもそも私は女を作ろうとしていた。

 だがAIは違った。AIは最初から女を作ろうとは考えていなかった。

 決定的に物語の起点が違った。

 だが今、私が当初思い描いていた同じ女をAIは形にした。


 私はもう一度AIに尋ねた。


「同じ女をどうやって作った?」


 すぐに答えが返ってきた。


『私はその女を生成していません』

カクヨムでは心霊写真の画像付きで読めるようにしております。

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>カクヨムでは心霊写真の画像付きで読めるようにしております。 この一文で絶対に見に行かないとかたく心に決めました!怖い!ありがとうございました!
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