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ツボの中から異世界 ~A step towards a new world~  作者: みたよーき


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42/60

42.命名

「シャープ・スピアーズ」

「いや、万友莉は槍使わないじゃん」

「プリティ・ガールズ」

「いや、自称はイタいでしょ」

「私は顔隠れてるから関係ないし……」

「ずるっ!」

「サラと愉快な仲間たち」

「いや、たちじゃなくて一人だし、愉快なのかよって話だし、私を前面に出し過ぎだ!」

「わがままガール」

「ついに一人になっちゃったよ! って、さっきから私、わがままで言ってるんじゃないからね?」

「サラはすごくスタイル良いし……」

「わがままボディってことかい! ……っていうか、万友莉、そろそろ真面目にやらない?」

「一応、冗談は六割くらいなんだけど……」

「思ったより本気度が高い!」

 サラのノリが良いからついボケてしまうんだよなぁ、と万友莉は心の中で言い訳しつつ、確かにこのままではキリがないか、と気持ちを切り替えた。

 この、宿舎の室内で紛糾している(?)話し合いは、二人のチーム名を決めるためのものだ。先刻はエディに「考えておきます」と答えていたサラだったが、いざ決めるとなるとなかなかアイディアは浮かばないようで、今は万友莉にお鉢が回ってきたという次第だった。

 万友莉としても軽く考えていたのだが、実際に自分に話を向けられると、難しいものだと実感する。アイディアが全く出ない、というわけではない。では何故、難しいと思うのか、万友莉は自問して、そう間を置かずに答えらしき理屈を思いつく。

 自分たちがどう呼ばれるかを、自分たちで決める、ということに、抵抗感があるせいだ、と。

 通り名、二つ名などというものは、恥ずかしい面もあるが、言ってしまえば、他人が勝手にそう呼んでいるだけだ、と割り切ることもできる。しかし、自分たちで決めた名前であれば、それは、責任転嫁ができない。そして、万友莉が抵抗を感じる点はそれだけではない。

「なんて言うか……、横文字ってだけで、ちょっと“厨二”っぽく感じちゃうんだよね。いや、ここでは英語が普通なのは頭では解っているんだけど」

 そう言ってから、二人きりの時はこうして日本語で話していたりするせいで日本での感覚がなかなか抜けないのかも知れないな、と万友莉は内心思う。しかし、考えてみれば、この世界に来てからまだ三ヶ月ほど、サラと出会って英語でも話すようになってからはおよそ二ヶ月ほどだ。しかもその間、万友莉が一人で出歩くようなことは皆無。そんな我が身を振り返って、万友莉は、慣れないのも当然だ、と思い直す。

「……うーん、解るような、解らないような……。でもそれなら、ドイツ語とかの方がそれっぽくない?」

「あぁ、それは、なるほどだわ……」

「でしょ? それと比べれば……と言っても、海外との交流が無いここじゃ、外国語っていう概念がそもそも無いからなぁ。……いや、マスタが別の言語を話すことは知られてるし、だったらいっそ、日本語の名前っていうのもアリか……?」

 サラの、ほぼ独り言のような発言に、これを長引かせたくない万友莉は、流れが変わりそうな気配を感じて便乗することにした。

「良いんじゃない? ほとんどの人は意味を理解できないんでしょ?」

 今、この大陸に、マスタは二人と聞いている。つまり、一般に知られていない万友莉とサラを除けば、悠真ともう一人だけだ。マチルダやアメリアのような例外もいるかも知れないが、日本語なら意味を解されることはまず無いと考えられる。ならば、よほど変な名前でなければ気にならないのではないか、そう考えて、万友莉もだんだんそれが名案に思えてきた。

「そうだね。それに、シゲさんと一緒にいた私がマスタの言葉を話せるって知ってる人は多いし、きっと不自然に思われないよ」

「なら、なおさら良いじゃん、それでいこうよ。……じゃあ、それで、どんな方向性にする?」

「そうだなー、友情、とか、絆、みたいなのはどう?」

「ん……、うん、良いんじゃないかな」

 一瞬、ちょっとそれは恥ずかしいかも、と思った万友莉だったが、代案を求められても困るし、どうせその意味が他人に伝わらないのなら問題無いか、と考え直してそう答えた。

「なら……どうしようかな……。あ、『刎頸の友』……じゃ名前としては締まらない気がするから、そこから取って『フンケイ』とか?」

「いや、それって、首を刎ねる、みたいな意味じゃなかった? まあ、魔物の首を刎ねるって意味じゃ、合ってはいるけど」

「ちょっと物騒か……。じゃあ、『金蘭の契り』で『キンラン』とか」

「それは……『桃園の誓い』的な、蘭の花畑での約束、みたいな逸話?」

「じゃなくて、確か……、強い絆は金を断ち蘭のように薫る、みたいな感じの昔の言葉だったと思う。……けど、だんだん自信なくなってきた……」

「えっと、サラは、そういう、故事成語みたいなのは詳しいの?」

「詳しいってほどじゃないんだけどね。私、こういう見た目だから、子供の頃に日本語のそういう言葉を覚えたら友達できると思って、調べた時期があって。でもやっぱり、ずいぶん前のことだから、結構忘れてるね」

 万友莉は、そんな健気な幼少期のサラを想像して、一瞬、胸にノスタルジアに似た切なさが過ぎるのを感じた。ただ、それは本当に一瞬で、その正体は到底知れなかった。

「そっか……。私はそういうのなら、そうだな……『竹馬の友』とか?」

「メロスだっけ?」

「そうそう。あ、でもそれは、幼なじみ、みたいな意味だったっけ……。うーん、パッと思いつくのはそれくらいだな……。だから、サラが頼りだ」

「えーっ……プレッシャ掛けるなぁ。じゃあ他に、どうしようかな……。……あ、『ヒヨクレンリ』なんてのはどう?」

「えっ!? あ、えっ……?」

「あれ? なんか変だった?」

「いや、変ていうか。……えっと、ちなみに、どういう意味だっけ?」

「ああ、えっとね、『比翼』は、片羽の鳥どうしが力を合わせて空を飛ぶ、みたいなので、『連理』は、二本の木、だったか枝だったかが、支え合って一本の大きな木みたいになってる、みたいなやつ。だから、その二つ合わせて、そういう、お互いに強く助け合うような関係、って意味。……だったと思うんだけど……」

「ああ、そうか、うん、なるほどね。そういうことなら、それで良いんじゃないかな」

「そう? 良かった。私も、もうそんなにアイディア出なさそうだったし。じゃあ、それで決まりね」

「うん……」

 万友莉は、その言葉を知らなかったわけではない。そして、万友莉の認識では、『比翼連理』とは、仲睦まじい“恋人同士”に使うような言葉だった。

 だから、驚いた。

 サラがそれを提案したこともそうだし、それに――それに……、何だ?

 万友莉は、自分の中にあるはずの、自分が驚いた別の理由を探そうとした。だけどそれは、あるはずなのに届かない、そんな曖昧な感覚だけを万友莉の心に残して、明確なものは、欠片一つ拾い上げることは叶わなかった。


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