第9話 旅館へ
旅館につく。
「いまオカルト研究会の人たちと旅行に来てるんですよ」
「へぇ~、青春だね」
「たしかあんたも高校生でしょ。そういうのないの?」
「おっと! そこまでだ」
旅館のエントランスで八重と話し込む。そうしていると、「卓也」と声がかかる。光太郎である。そのすぐ後ろにはほかの面々もいた。
「そちらは?」
「さっきそこで知り合って、迷子になるとならないからと付き添ってくれたんです。菊池八重っていいます」
「たっくん左折っつってんのに右折するからだいぶストレス溜まる」
「「わかる……」」
卓也の方向音痴は重度らしい。
「でもなんだか手のかかる弟って感じだね。ね、たっくん」
「なんで俺がその評価に甘んじると思ってんですか」
「ふふふ」
二葉はその様子を見て「やけに親密だな」と思った。
「どういう関係?」
「どういう関係って……さっきも説明したじゃない」
「そこに至るまでのさ。なんか……あるじゃない」
「別に変なことは何もないよ。なんだい二葉、君やけに突っかかるじゃないか。俺に女性のケがあるのが嫌かい?」
「嫉妬なわ」
「君、顔いいんだから彼女くらいできるだろ」
「そういう問題じゃなくってさぁ。なんて言えばいいんだろう、お前ってなんかそういうところがあるよな。自分の範囲のなかにない感情は全部固定観念で決めつけがち。俺の何が分かってんの」
「俺はあんまり人がわかんない……」
「だろうぜ」
八重が言う。
「じゃ、またね! たっくん!」
「ああ、はい、また」
部屋に戻る中で、謎の弁解タイムが挟まる。
「あの時出かけた先で出会ったんだよ。倉瀬家に来るまで同じ町内に住んでたから気が合ったんだ」
「同じ町内ってどこ」
「流川の三丁目」
「どこ?」
「わかんないのか……というかそもそも、君はどうしてそこまで、俺にこだわってんだ。俺にだって女性のケくらいあるだろ。将来俺が結婚するってなった時、君の情緒はどうなっちまうんた」
「そりゃもう狂って全員皆殺しかもしれない」
「こわすぎるだろ」




