第5話 跳躍として
変身も解かずさっさと地面を蹴り跳躍。その場をあとにして空中を舞っていると、何かおかしな気配があった。それはまるで人間ではないようなもので、卓也は思わずその方向に視線を向けた。そこには屋敷がある。
二葉からいつだったか話を聞いたような気がする。彼処は近所でも有名な廃墟で、かつてあそこで一家心中があって、その事件が起こって以来誰も購入者が現れず管理していた男が死んでからめっきりとボロボロになっていったそうだ。
それを見据えながら、何かが起こっているというのがわかると、意識がグワと歪んで、地面に落ちた。なんとか着地してからもう一度あの気配を探ろうとしてみるけれど、何処にも見つからない。
「なんだったんだ?」
家に戻り二葉にあの屋敷のことを聞くともうすでに解体されてしまったとのこと。浮浪者が住み着いて近隣住民が苦情をつけたのだそうだ。その際に壊されるところを見に行ったから間違いないのだとか。
「じゃあ、ありゃあなんだったんだ……?」
「何の話?」
「いや……なんでもないよ。ただちょっと、変なの見ただけなんだ。きっと、それも俺の勘違いだから、取り沙汰するようなものじゃないんだよ、きっとね」
「そうかい? いや、なんか隠してるなぁ」
「隠してない隠してない」
垂れてきた前髪をかきあげてから、誤魔化すように笑った。
次の日、学校が終わるころ、二葉が先輩に絡まれているのが見えた。多少少女的な見た目をしているから舐められるのかそれとも変な目で見られているのか、二葉はよくこういう目にあっていた。
その間に入っていってみると、言われる。
「王子様が迎えに来てくれてよかったなあ、お姫様」
それに少しイラッとしながらも、事を荒立てるのは厭らしいことだと思っていたので簡単な事をすることにした。
「俺からしてみれば、あんた方もじゅうぶんお姫様に見えるね。顔立ちの話でなく、立場として……俺が王子様ならあんた方はお姫様。そうでしょう? あんまり俺の兄弟いじめちゃ切ないよ。せんぱい方」
「舐めてんのかてめぇ!」
「本気だよ」
「ひっ」
身の、もっと局所的な主に尻当たりの危険を察知させてやれば、奴等は逃げていった。
「あんなゴツゴツとしたれんじゅうの事をお姫様なんて言っちゃった。今日の俺ってなんだかおかしいね」
「お前は……他人にああいう言動ができてしまうのが少し腹立たしいなぁ。ケツ狙われりゃ怖くなるのは誰もそうだろ」
「だから有効なんじゃないか。いつまでも男でいられると思ってるようなれんじゅうには、有効なんだよ」
「うーん……罪人!」




