第3話 倉瀬家へ
そして、倉瀬家にやって来た。
どうしてこうなったんだろう、と考えてみるけれど、それはともかくとして倉瀬家の人たちはとても優しい人ばかりだった。同い年の二葉ともすぐに仲よくなった。二葉はどうやらホラーというのが好きらしく、幽霊や妖怪の話を見つけてくると、卓也にそれを話して、卓也は怖いものが大の苦手なので大いに怖がった。
水都県亜水市にある亜水中学校に転入して、二葉と同じクラスにはいると、四六時中いっしょにいるようになった。髪を切るような状況にはなれず伸ばしっぱなしだった髪もさっぱりきれいに整えてみると、弱々しい雰囲気をしておきながら阿呆な言動をするものだから女子の連中から弟のように扱われ出した。
「中学校ってこんなに大変だったかな……!?」
「お前はなんだか構いたくなるものな」
「そんなぁ……」
それはともかくとして、部活動。
「我が校にはあるぜ」
「なにが……?」
「オカルト研究会だよ! 俺はいつもここで怪談をかき集めてるんだ。怪談だけじゃないぜ。UFOとか、そういうのも研究してんだ」
「ひ、ひェェェェ」
「入部させといた」
「ハァ……?」
二葉とは四六時中いっしょにいた。しばらくそうしていると、教師たちでさえ卓也と二葉をセットで考えるようになっており、どちらかが一人でいると「きょうはいっしょじゃないのか」と声をかけるようになっていて、そういう時「あいついまクソしてます」だとか「おしっこに行ってるんですよ」という返答をする羽目になる。
そうして、夏。
「夏といえば怪談の本番だよ、卓也くん!」
オカルト研究会の部長・千田洋子が卓也の肩をバシバシと叩いてそう言った。二年生に上がって新入部員集めに駆り出されていて疲れ切っていた卓也は「そうなんすか……?」とあいまいな返事をするしかなかった。
「今年の夏は卓也くんがいるからあんまり肝試しとかはしないとして……百物語をやろうじゃないかと思っているんだけれど、どうかな……!? 卓也くん、どうかな……!?」
「き、気絶するっす」
「だよね」
「だよね……?」
「だから、あんまり怖くない恐怖ツアーを計画してんだよね。曰く付きの廃墟があるところまで赴いて、とりあえず外観だけでも観てあとは観光するってやつ」
「楽しそう……」
「でしょ。我ながら天才だって思うね。あと普通に警官の弟を不法侵入に付き合わせるのは人間としてダメだしね」
いまさらなのでは、と二葉を見ながら思う。「倉瀬二葉も警官の弟だけれど、それはいいんですかね?」と問いただしてみたくなる。ただややこしい話になるので黙っておいた。
奴は入部から既に一年たっているのだ。
「それに最近私も親に怒られたしね。中学生が夜中に出歩くなって」
「それ正論ですよ。部長も女性だからご両親は気を揉むでしょうて」
「果たして本当にそうかな?」
「そうでしょうよ」
「ふふふ、そっか」
「変なことは何も言ってませんよ、俺……」




