012 能力可視化――ステータス
「まじかぁ...なんでニャルに頼む前に試さなかったんだ」
まじまじと、僕の目の前に浮かぶホログラムみたいな光の板を眺める。
――【能力可視化】
僕が今即興で造ってみた魔術で、この世界の平均能力をレベル0とした時の僕の強さを視れるようにする、といったものだ。
平均能力を取得するときに【虚空記録層】を介すため使用魔力量は他の魔術に比べて割と多いけれど、そんなの僕の魔力量からしたら雀の涙みたいなもの。割とポンポン使える代物になっている。いや、今は申し訳ないという面であんま使いたくはないけれども。
なかったことにする?いや、それはそれで僕の努力が無駄になるし...
うん、普通に使うとしよう。
「えーっと、僕のレベルは――1001?なにこれ、僕が踏破してる層と同じじゃん」
ついつい呆れて声を上げてしまう。
ステータス板――そこに浮かぶのは、そんなふざけたものだった。
いやさ、別に僕はこんなのを求めてるわけじゃないんだよ。そりゃ皆一層も攻略してない人が多いんだし攻略してない人のレベルは0でしょうねぇ?
でもさ、レベルを攻略した層とおなじにするのはひどいとおもうんだ。この魔術作ったの僕だけど。自分に文句言ってるようなもんだけど...!
「...はぁ、じゃあレベルに関してはニャルに頼んだの見ればいっか」
一応、この魔術で見れる項目は他にもある。というか、レベルなんてついでに過ぎないのだから。
――【可視化能力】で見れる項目は、自身に関する情報すべてだ。
【虚空記録層】から自身に関する情報をすべて取得して、それをフォーマットして表示するだけ。見やすいようにいらない項目はそぎ落としているけど、念じれば表示することも可能。なかなかの便利魔術に仕上がっている。
「...存在強度?」
気になる項目が一つ。それは、〝存在強度〟というもの。
――ッスーー、あれ?これさっきニャルさんが話していたものでは?
なぜかこれだけローマ数字になってるし、たぶんあれであってるだろう。
今の僕の〝存在強度〟は――XVとなっていた。
「うーん、こっちがレベルだって言われても信じれるレベル」
攻略層を表しているレベル。なぜローマ数字かはわからないけど、とにかく何かを基準にしているであろうこれの方が信じれるね。
――と、そこまで考えたところで再び空間に切れ込みが入る。
「帰ってきたわよー」
「あ、おかえりー」
そこから出てきたはもちろん、なにか時計のようなものを持ったニャルさんだった。
「その時計がステータスを見れるようにするもの?」
「そうみたいね。ダンジョンの近くにいた一般人を脅してどこで売ってるか聞いてきたからあってるはずよ」
「...盗んできてはないよね?」
「24カラットの金インゴットを10本ほど置いてきたから盗んできたというくくりには入らないと思うわよ?」
なんでそんなもの持ってるんだ...?ま、まぁ。地上で精神汚染連発しなかっただけましかな。ちゃんと対価として金を置いて言ってるしセーフだと思いたい。
「はい、これ。腕につけて『ステータス』といえば見れるみたいよ....あら?あなたもステータス見れてるじゃない」
「あ、なんか魔術作れたんだよね。ただまぁレベルに関してはあてにならないからこっちの時計?に期待かな」
渡された時計をつけながら答える。なにこれつけにくいな。
なんというかゴムバンドとかじゃないせいで手に巻く部分が硬い。ついうっかりおっちゃいそう。
「よし――〝ステータス〟」
バンドに苦戦するも、装着完了。そう唱えると――
――――――――――
名前: 如月 悠
種族: 人間(?)
年齢: 21
性別: 男
レベル: 992
魔力量: XX
スキル: 【魔導】
――――――――――
――そんな、ホログラムが僕の前に現れた。
「...え、僕って人間じゃないの?」
最初に注目したのはそこ――種族の欄。
そういえば僕の名前ばれちゃったななんてことは一切気にしていないことはないけど、それでも身バレなんかより種族のほうが気になっちゃう。
なんだよ『人間?』って、もっとはっきりしてくれよ。僕はちゃんとした人間だからね?
――しかし、そう思うのもつかの間。
「あら?あなた自分のことまだ純粋な人間だと思っているのかしら?」
「え」
「そこまで強くなって置いて人間はないでしょうよ。自覚しなさい?自分の異常さを」
「いや確かにやけにみんなダンジョン攻略遅いなとは思ってたけど」
地上のみんなが困っているであろう10層くらいのボス。
僕はあれを簡単に攻略できた。だからみんな遅いなって、弱いなって思ってたんだけど...もしかして、簡単に攻略できたのそのころにはすでに人間やめてたから説ある?
「あなた、もう純粋な人間種ではなくどっちかというと上位人間種的なポジションなんだからね?誇りなさい」
「わーうれしい。これで外なる神になりやすくなればいいんだけど」
「それはあなたの存在強度によるわね。あなたの【虚空記録層】でわからないかしら?」
あ、そうそう。
存在強度、それに関して聞きたかったんだよね。
「それ、【能力可視化】でわかったよ。なぜかローマ数字で15って書かれてた」
「ならあと少しじゃない。20になれば〝外なる神〟にもなれるわよ?」
1001まで攻略して現在の存在強度が15。なのに20にまでならないと〝外なる神〟になれないのか...えーっと?一応このまま攻略していったら――
「――結局残り340層くらいは踏破しないといけないじゃん」
「あら...そういえばそうね」
「...無理じゃない?」
ニャルが言うには、これから先の層はどんどん難易度が上がるよう。だから僕を生かせないなんてことを言ってたんだし、それは絶対だろう。
じゃあ、果たして4年以内に僕は外なる神になれるのか。
圧倒的に敵の強さが変わるらしいし、僕はたぶん無理だとおもう。
「4年以内に強くならないといけないのに、さすがにこれは無理だと思うんだ。というかひどいと思うんだ」
期待だけさせといて結果は無理でしたなんて僕が一番嫌いなパターンである。もしかしたら~~できるかもしれない、とか言いながら結局「ごめん無理だったわ☆」なんて言われたら、それはも相手が誰であろうが僕は殴り掛かるだろうしね。ということでニャルさんにも殴り掛かってやろうか。
「...まぁ、私の旧支配者ガードで一年は地上に顕現できないようにはできるから、5年で何とかしてもらうしか...」
「...どうなの?僕でできるの??」
「...どうなんでしょうね」
悲しいかな。完全にこれは賭けらしい。
――――――――――――
67 :名無しの観察者 :座標D-17より観測
……誰だ、あの人間に虚空記録層を使わせたのは。
我々の領域まで干渉を開始しているぞ。
68 :名無しの旧支配者 :虚空断層より
存在強度が十五に到達した? 早すぎる。
まだ“器”が定着していない。
あれでは地上の層が歪む。
69 :名無しの漂うもの :
地上へのアクセス権を一時ブロックされた……面白い。
彼女は明確に我々を敵に回すらしい
70 :名無しの暗きもの :
ニャルの仕業だな。
71 :名無しの深淵記録者 :
それでも、まだ彼は“人間”だ。
――それが、救いか絶望かは知らぬが。
72 :名無しのふかきもの :
さぁ―――地上への干渉をはじめよう
ダンジョン化さえ成功すれば――我々の勝利だ
あとがき――――
短くてごめん
おもんなくてごめん
あと少しで一章終わるよ




