009 続々と明かされる世界崩壊級の事実with混沌
「え?」
「え?」
「え? あなた、このダンジョンに底があるって本気で思ってたの?」
「え、ないの?」
「えっ...」
:うわぁ
:草
:まさかの人外が明かす衝撃の事実
:悲報 我らが勇者、帰れないことが判明
:いい加減諦めればいいのに...
:ここまできたんだからもう誰も文句言わないって
さらりと明かされる衝撃の事実。何これ、泣きそうなんだけど。
「え?底ないの??じゃあダンジョン踏破するのって不可能なの??」
「いや、踏破の定義にもよるけど最下層まで行こうとしてるんだったら無理よ? このダンジョン、階層ボスが倒されるごとに新層が造られる仕組みになってるし」
「...えっ」
......ッスーーー...えぇ?
もしかして、これまでの僕の努力は無駄だった? いや、強さを得たという方面で言えば無駄ではなかったんだろうけど。
それでも、目的は達成できないんだし無駄だったってことになるのでは?
...泣いていいかな。いいよね、ありがとう。
「え、ちょッ!そんな泣きそうな顔しなくても!!」
「僕の努力...全部無駄だったんだ...うわぁ......」
「あぁっ、もう!一応、今のあなたじゃ難しいけどダンジョンのラスボス的な存在を倒してクリアすることはできるから!」
...最下層はないけど、ラスボスはいる...?
「なんだ、それを先に言ってよ」
なんだぁ、僕の努力は無駄じゃなかったんじゃないか。
ラスボスというかっていう言い方ってことは、もしかしてその存在、ダンジョンの創造主さんとかかな?
「あなた...本当に記憶完全に戻っていないのかしら?私、それで戻っていないなら、これまで長く生きてきたけどなかなかに怖くなってきたわ」
「そもそも僕はあの投影されたものが自分の記憶だって認識すらできてないし、完全に思い出すにはまだほど遠いと思うけど?」
そういえば、あの僕の前世とやらの記憶の投影も誰かに止められたんだっけ。
クトゥルフ神話にわかを自覚している僕だけど、一応この女――ニャルラトホテプが〝外なる神〟という分類なのは知っている。諸説あるみたいだけど、どうやらそうだという説が一番大きいって何かで見たんだよね。
...何で見たんだっけな、思い出せないけど。
―――じゃあ、僕の記憶の投影を止めたのはおそらくニャルさんの敵ポジションとなるはずだ。
ニャルたち〝外なる神〟の敵といえば、〝ティンダロスの猟犬〟とか〝旧支配者〟とか、そんな感じのサムシングだろう。
ただ、〝ティンダロスの猟犬〟は基本的に違う空間にいるとかをいつかどこかで見た記憶があるし、可能性としては〝旧支配者〟の可能性が高いのかな?
まぁ、どっちだったとしてもSAN値チャックの時点で僕は死んだも同然なんだけど、どうやら僕にSAN値なんて概念はないようで。いいのか悪いのかわからないけど、たぶんやりあうことはできるだろう。勝てないけど...勝てないけど!
...はぁ、いったんマイナス思考はやめにして。
答え合わせ、してみようかな。
「もしかして、僕の記憶の投影を中断させたのって〝旧支配者〟の誰かだったりするの?」
「あら、よくわかったわね。誰かっていうより――ハスター以外の旧支配者、そのすべてがあなたの記憶の投影を邪魔だと判断したようよ」
...ぬぁ? えーっと、たしか〝旧支配者〟って知られている奴らだけでも100体以上はいたよね...?
確か最初にその存在を示唆し始めたのはラヴクラフトで、そのあともいろんな作家が存在を出し始めていたはず。
...そういえば、なんでそんな架空の存在が普通にこの世界に存在してるんだ? もしかして、本当にクトゥルフ神話の創作者たちは〝ドリームランド〟的な空間にいったことがあるとか?
...わからない。だけど、たぶん100体以上いるのは確定だということだけはわかる。
「...やばくない?何体いるのよ旧支配者って」
「少なくとも、100体以上いるのは確定よね。この世界のクトゥルフ神話作家はみんなドリームランドに招待されてあの小説たちを描いたようだし、あそこに出てきている旧支配者はみんなこの世界に来てると思った方がいいわよ」
どうやら予想は当たっていたようで...そういえばこの世界に続々と神々が集まってるって言ってたっけな。
「それって、もしかしてニャルさん以外の〝外なる神〟以外も来てるの?」
「あぁ、さすがに彼らは来てないわ。そういえばなんか異世界に召喚されたとか言ってたわね」
「安心と共にその世界が不憫すぎる。壊されない?」
「...まぁ、何とかなるんじゃないかしら。やばくなったらニグラスが何かするだろうしね」
安心...はできないかなぁ。
少なくともこの世界のみんながSAN値チェックで死ぬことは限りなく...なくなったわけでもないよねぇ。
結局、この世界に人間じゃ手が出ないほどの化け物たちが来てるっていう事実には変わりないんだし。
なに?
「旧支配者って星辰が来ないと目覚めないんじゃなかったの?」
「ダンジョンができた日、あったでしょ?あの日に星辰来たのよ」
「あぁ...あぁ...」
絶望すぎるよ、この現実。
「じゃあ、結局ダンジョンを作ったのって――」
「――あなたの予想通り、もちろん旧支配者たちよ。だからあなたが旧支配者倒したらダンジョンも踏破判定になるし世界も救えるしで最適なんじゃないかしら?」
あぁ、もうね? こんなことじゃ驚かなくなってきた自分が憎いよ。
脳の片隅で「予想通りだやったー(ばなな)」って考えてる僕がいるんだもの。これ、確定で僕も地球も死ぬよね?
回避するには旧支配者を倒すしかないと...100体以上の。
「...僕じゃ無理じゃない?現実的に考えて」
「もうちょっと強くなったら死闘して勝てるくらいになるんだし、可能性は十分あるわよ? 記憶を取り戻したらもうすこし簡単になるだろうしね」
「その記憶を取り戻すのは妨害されるしそもそもあれが僕の前世だという認識はいまだに僕にないしなんなら〝外なる神〟視点のもうちょっとなんて信用できないんですわ...」
それでなくとも神様ってだけで僕たち人間とは圧倒的に時間の感覚とかも違うのに、さらにそこに〝外なる〟を足したらたぶん「ちょっと」だけでも天文学的差だと思うんだ、僕。だってほら――
「あと500層くらいいったら何とかなるんじゃないかしら?」
――普通の顔をしながらこんなとんでもないことを言ってのけるんだもの。
「僕の予想会ってるじゃん...今の速度でいっても5年かかるよ...」
...ん? 神様の感覚は長いって僕今自分で言ったよな?
そしてこのニャルさんは続々と地球に旧支配者が集まってきてると言っていた...あれ?地球につくのも割と先のことなのでは...?
「ねぇニャルさん」
「何かしら?」
「旧支配者ってどれくらいで地球につくの?」
「えーっと...あぁ、後4年くらいかしらね」
1年ッ!あと1年遅ければッ!
僕が500層攻略するのにかかるのは約5年だろう。1年に100層も攻略すると考えれば結構なハイペースだ。少なくともまだ2桁層にもたどり着いていない地上の人たちよりかは進んでいることがわかる。
――――もしかしたら、休みなく本気で攻略し続けたら4年で攻略も可能かもしれない。
1年で100層――つまり、365÷100ということ。
計算すると、3.65になり――1層を攻略するには、約3日と半日を使うことになる。
これでも余裕をもって攻略しているといった現状なので、一応ペースを速めることは...できない事はない。その代わり、いつ反動が来るかわからないといった恐怖状態に苛まれることになるが。
「...がんばって、見ようかな」
人を助けたいとは思わない...こともない。
僕一人になったら、それこそ僕にSAN値が存在しなくてもSAN値直葬される未来しか見えないし。
ここまで僕はコメントのおかげで生きてこれたんだ。それじゃあ、恩を返すといった意味でも頑張ったほうがいいのは確かだろう。
「攻略、頑張ってみようかな」
独り呟く。コメントを覗くことはしていないけど、今もこの状況は配信されているだろう。つまり――この情報は地上にも伝わっている。
地上の人たちが終焉を知ったところで何かできることがあるわけではないが、4年後を恐怖しながら過ごすことになるんだろう。
今動けるのは僕しかいないんだし――
「――じゃあ、行かせてもらうよ」
話は打ち切りだ。ニャルさんが僕についてくれるというのならありがたいけど、そんな可能性ないといっても等しいだろうし。
とにかく急がなければ、地球が――人類が危ういんだ。
あとがき――――
今日から旅行行くんでもしかしたら毎日投稿途切れるかもです
執筆はできるんだけど...Wi-Fi的なあれでね?
キャンプだからさ、しょうがないんだ()




