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第4話 森へ

 俺たちはレノさんに示された森へと入った。


「レノさん。この森、またさっきの化け熊みたいなのが出ないでしょうね?」


「ああ。少なくとも凶暴な魔物は出ないよ。あの人が居るからね……」


「ん? 何か言いました?」


「いや。気にしないでくれ。曲道を曲がった所にある家だ」


 レノさんの言うように曲道を曲がると、ログハウスが一軒あった。俺たちは、道の脇に戦車を停めた。しかし、辺りを見渡しても、人の気配がしない。巻き割をしていたのだろうか? 積まれた薪とまだ割られていない丸太が残されている。あれ? 斧は?

 俺がそう考えた瞬間、上の方か何かの気配を感じた。俺がその気配の方向を見ると、何かがこちらに斧を振りかざしながら飛び掛かって来た。俺はとっさにBT-2の中に引っ込んだ。その瞬間。ボ――ンッ!! という寺の鐘のような音が鳴った。それと共に、大地震のような車内にとてつもない衝撃が走った。


「ハサキ! ユイカ! 大丈夫か?」


「なんとか……」


「大丈夫や……」


 俺は拳銃を取り出し、素早くハッチから上半身を飛び出した。戦車の正面にはガタイの良い男性が斧を構えて立っていた。俺が引き金を引こうとした時、レノさんが割って入った。


「スト――――ップ!! ドッコイさん。俺たちだよ!」


「お~。なんだレノたちか。となると、そいつは連れか?」


「連れというか、俺たちの命の恩人だよ!」


「そうだったか。そりゃ悪いことしちまったな。すまねえ」


 どうやら戦う必要はなさそうだ。俺はホッとして、戦車から降りようとした。その時、俺の視界には上向きに折れ曲がった砲身と凹んだ砲塔があった。


「ギヤ―――――――――――ッッッッ!!!!」


 俺は驚きのあまり、戦車から転げ落ちてしまった。


「マサ! マサ大丈夫?」


 遠くからハサキの声が聞こえたかと思うと、俺は意識を取り戻した。


「お、俺は何を……」


「マサ。あなたは、戦車から盛大に落ちたのよ……ぷッ」


「ギャハハハハハハハハッッッッ!! マサ。お前ドジやな~ギャハハハハハハハハッッッッ!!」


「てめーら! 友達が気を失ってたってのにそんな笑う事はないだろ!!」


「そうりゃどうでもええねん。(おい!どうゆう事だ!)おっさん。うちらの可愛いBT-2ちゃんを壊してくれたよな? どないしてくれるん?(おい! 話聞け!!)」


「それは本当にすまねえことをした。新手の魔物かと思ったんだ。しかし、俺の一撃を受けてあの程度で済むなんてとんでもなく頑丈だな!」


「この状況で自画自賛とはええ度胸やなおっさん」


 ぶちぎれているユイカに対してどこか楽観的なおっさん。


「ユイカさん。その人はドッコイさんと言って、世界に7人しか認められないSランク冒険者なんだよ」


「元だがな」


 元であんな動きができるんかい! どんなけやばいんだよSランク冒険者……。


「その、ドッコイさん。このBT-2の装甲はそこまで固くないはずですが、そんなに硬かったですか?」


「ああ。俺の一撃はドラゴンの鉄おも超える皮膚をかち割る。隠居したとはいえ、大岩ぐらいならたやすくかち割れる」


 おかしい。BT-2の装甲は機関銃が通らない程度。ドッコイさんのいう様な威力の攻撃に耐えられるはずがない。


「ドッコイさんの攻撃についてざっくりでもいいので教えていただいてもいいですか?」


「ああ。迷惑をかけたんだ。それくらいはしないとな。それで? 何が聞きたいんだ?」


「俺たちの戦車のマニュアルスペックではドッコイさんの攻撃を受けきれるはずがありません。何か特別なことはしていますか?」


「そうだな。斧は普通のその辺の斧だし、攻撃方法も魔力を込めた通常攻撃だし」


 1つ気になる単語が横切った。


「魔力? ですか?」


「あんちゃんら、魔力を知らねえのかい?」


「はい。お恥ずかしながら」


「あの乗り物は魔力で動いているのではないのですか? 私たちが乗っていた辺りから魔力を感じたのですが……」


 セレーナさんが俺たちの顔を覗き込むようにして聞いてきた。もしや、あの謎の液体がそうなのだろうか?


「私たちの戦車には虹色に光る液体を積んでいますが、もしかしてそれのことですか?」


「それはきっと魔力水でしょうね。水に魔石と魔力を込めることで生成することができます」


「これで、なぞは1つ解けたな。それで、おっさんの攻撃に込める魔力ってのは?」


「おっさんは流石に言い過ぎじゃないか? まあいいが。通常、一定の実力のあるやつは自分の攻撃に魔力を込める。その方が純粋に攻撃力は上がるし、魔法に攻撃を当てられたり、魔物に効果的にダメージを与えられる。魔力を込めないと攻撃が当たらない奴もいるくらいだ」


「せやったら、その魔力に対して特殊な装甲が働いている可能性はあるな」


「そうだな。検証してみよう。ドッコイさん。お手数ですが、この頭のような部分に魔力を込めずに攻撃してもらえますか?」


「ちょっと待てい!! まだBT-2ちゃんを痛めつけるんか! 修理すんの誰や思ってんねん!!」


「まぁまぁ、どうせここまで壊されたら砲塔ごと交換しないとだし。検証は大事だろ?」


「ちぇッ。しゃ~ないな」


「ありがとな。それじゃあ、ドッコイさんお願いします」


「ああ。おりゃ!!」


 ドッコイさんにとってジャブのようなパンチを繰り出すと、砲塔の装甲は明らかに凹んだ。さっきより威力が圧倒的に低いのにだ。ということは、BT-2はマニュアルスペックの装甲に加えて、魔力を通さない結界のようなものが張られているということになる。これで俺が密かに懸念していた魔法への耐性は明らかになったが、代わりに普通の物理攻撃への防御力の低さは史実通り懸念材料となった。


「ありがとうございます。これで大きな謎が解けました」


「そうか。それならよかった。こいつの修理は俺も手伝うぜ。力には自信があるんだ」


「ええ。良く知ってますよ」


 その瞬間、その場の全員が大爆笑した。

 俺たちはその日はゆっくり休むことにし、修理は明日から開始する事にした。

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