第4話 初めての出会い
俺たちは、化け熊に追いかけられていた3人組の傍まで、BT-2を寄せた。近くまで来てはっきりしたが、軽装な女性と、聖職者のような服を着ている女性、そして重装備な騎士のような鎧を身に着けている男性が、ボーっと尻もちをついて座っていた。
俺はサッとBT-2から降りた。そして、3人の元へと駆け寄る。
「大丈夫ですか? お怪我は?」
すると意識がはっきりしたようで、正面にあるBT-2にまた驚いている。
「大丈夫ですよ。これは俺たちの乗り物なので、安心してください」
「そ、そうなのか。てっきり新種の魔物かと……」
「あのグレートベアを一撃で仕留める乗り物って何よ……」
「私、あんな轟音雷でも聞いたことありません……」
全員満身創痍なようだ。
「何度も聞くようですが、お怪我はありませんか?」
「あぁ、ありがとう。大丈夫だ。うちには優秀な僧侶が居るから問題ないよ」
「ドーンッテ、メノマエデ、ドーンッテナリマシタワ……」
なんか魂的なのが出ているような気がするが本当にこの僧侶さんは大丈夫なのだろうか。
「今は、混乱しているようだが、普段は冷静で頼りがいがあるんだ」
「そ、そうなんですね」
「マサ~。そっちの3人はどう? 怪我もない?」
上部のハッチからハサキが顔を出した。
「まだいるのかよ!!」
「いちゃ悪いですか?」
「い、いえ、そんなことは……」
「すまない。彼女はどうも考える前に動くタイプでね。そうだ。自己紹介が遅れたね。僕は戦士のレノ。そっちの今はパンクしてる僧侶がセレーナ、そこの元気な盗賊がミル。助けてくれてありがとう」
「よろしくお願いします。俺はマサノブと言って、ハッチから体出してるのがハサキ、それと……」
「うちは、ユイカ言います」
聞いていたのかユイカは突然運転席のハッチを開けて割り込んできた。ウケ狙いなのかほんとこういうの好きだな。
「まだいんのかよ……」
「いちゃ悪いんかいわれ!」
「すみません」
さっき見たって。
「改めて、助けてくれてありがとう」
「いえ。俺たちはたまたま通りかかっただけなので。そうだ。ここら辺に人の住む町はありませんか?」
「ええ。ありますよ。我々が駐屯している村があるんです。そちらまで案内しましょうか?」
「是非お願いします。それじゃあ、乗ってください!」
「え?」
「は?」
「はひ?」
ブルンッ!! ブ―――――ッッッッ!!
「は、速い!」
「はえ――――!!」
「は、はひ……」
「ちょっとユイカ飛ばし過ぎじゃないか?」
「あ? こうようゆう時はな、遊ばなあかんやろ!!」
「ユイカちゃん。やめてあげて。本当に落ちちゃうよ」
「ハサキに言われたらしゃーないな」
「おい。俺、戦車長なんだけど」
「はいはい」
なんで。冷たくない? 女子ってこういう事してくるよね~。わかる?
そんなことはさておき、ユイカがスピードを落とすと、俺はレノさんたちの様子を確認する。
「レノさんたち大丈夫ですか?」
「うッ、あぁ。大丈夫だ……」
「死ぬかと思った……」
「天子様が見えます~……」
大丈夫じゃなさそうだな。俺はBT-2の中に戻った。
「ちょっと休憩しようか。レノさんたち、案の定ばててる」
「なんや。たった時速40kmやでBT-2なら60は出せんのに~」
「この世界の文明レベルはレノさんたちを見るに中世程度だ。普通に馬を走らせてもせいぜい20km程度だろうし、40kmでも十分速いって」
「わかった。ほな、よさげな場所知ってるか聞いて。森はあるけどまたあんな化け熊と会いたくないし、かといって後は平原やからな」
「わかった」
俺はハッチから体を出し、レノさんたちに聞こえるように言った。
「レノさ~ん。そろそろ休憩にしましょうか? エンジンの上にずっといると暑いでしょうし」
「ああぁ。そうしてもらえると助かるよ」
「この辺に休めそうな場所はありますか?」
「それなら、この先に森の方に逸れる道がある。そこを少し行くと、面倒見のいい木こりのおじさんが居るから、そこで休ませてもらおう」
「わかりました」
俺は戦車内に引っ込み、ユイカにさっき聞いたことを伝えた。
「了解。ゆうてたらそれっぽい道あるわ。それでええな?」
俺は伝令係のようにまたハッチから体を出す。早く無線欲しい……。
「レノさんあの道で合ってます?」
「ああ。合ってるよ」
俺は、伝令するのがめんどくさくなって、トンっとハッチを1回叩いた(前進の合図)。
「了解。前方森へと逸れる道へ前進するで~」
「日陰になるし、これで多少は涼しくなりそうね」
早速戦闘があったりしたが、まぁ、こうしてのんびりドライブも出来たし、まあいいか。数名ばててるけど。
「「「うぇ……」」」