第1話 日常
俺の名前は大雪 真信。ただの高校生。と、言いたいところだが、正直少しマニアックな趣味がある。それは、戦車だ。戦車に関するプラモやゲーム、アニメなどは大抵通っているし、俺は戦間期から第2次世界大戦間の戦車が特に好きなので、各国の戦車博物館に足を運び、1日中戦車を眺めていることもあった。正直、この帰宅道も戦車で爆走してみたい。
「あ~あ。どこか旅行にでも行きたいわね〜。勉強に部活でクタクタだわ……」
彼女は白雪 繁咲。俺の幼馴染で遠い親戚でもある。普段は凛としていてリーダーシップもあり、成績優秀、弓道部でも大活躍。外見もモデル体型で長い髪が綺麗なお姉さんときた。しかし、案外怖がりでお化け屋敷などには絶対入らないタイプだ。それに、俺達の前ではこうして時々弱音を吐いたりする。それはそれで、信頼されているということでもあるので、なんだかんだ嬉しい。
「そんなんゆうたって、うちらにはどうにもできへんよ。うちらは勉強すんのが仕事」
この子は高坂 結昌。ユイカとは俺とハサキが中学の時に初めて出会った。歌が上手く、手先も器用だ。動きやすいからと髪はショートボブにしている。ユイカは関西からの転校生だった。そのため、方言や文化の違いでクラス内では浮いていた。俺たちが仲良くなったきっかけは、俺とハサキが学校の帰りに公園の前を通ると、1人でブランコに乗っているユイカを見つけた。耳を澄ますと歌が聞こえてきた。それは「3人の戦車兵」だった。それを歌っているのは間違いなくユイカだった。俺たちが聞きほれていると、ユイカに気づかれてしまった。ユイカは逃げ出そうとしたが、2人で歌を歌い始めると、そこからは一緒に歌ったり、少しずつ話すようになり、今では親友とも呼べる仲だ。
「ユイカはいいわよね。高校では周りから素で気に入られて」
「そんなこと言われてもな。ハサキは勝手にやってるだけやん」
「だって。入学しょっぱなに委員長に選ばれて、リーダーのイメージを作らないとと思って...…」
「にしても古いんだよ。凛と構えて、必死に勉強して、急に弓道始めて、お前は戦国大名か」
「だって、リーダーのイメージそれしかなかったんだもん...…」
「流石、戦国オタクやな」
「やめてよ。みんなにバレたらどうしたらいいやら...…」
「普通に物知り扱いされてもてはやされそうだが」
「いや。マサも戦車オタクだからわかるでしょ? そうゆう場面になるとオタクは所謂、早口長話オタクに変身するんだよ」
「たしかに(せやな)」
そんなどうでもいい日常会話を笑いながら話していると、突如として地面が光り出し、あまりの眩しさに一瞬視界を奪われた。
目を覚ますと、そこは暗闇が広がるも、どこか神秘的な空間だった……。