9. クソヤロウの夜
運の悪いことに、ごくごく稀にこうしたこともある。俺の不運属性のせいかよ?
(ごめんテルオさん。俺、あなたの優しさには、応えられなかったよ……)
そこに心も体もホットになった、二名様御一行がご到着。
「残念だったな……お前らついてない。店閉まってるわ」
「んーだと? クソヤロウ!」
「バカか、このクソヤロウが! ついてねぇなぁテメーだろがよぉ!」
お、日本語に戻った。
歌舞伎町で今夜一番「クソヤロウ」を叫んだクズメンどもが、ドヤドヤと上がってくる。
ちょっと油断した。これはもう少しだけ距離を取らないと詰む。
俺は覚悟を決めて、階段の上からジャーンプ! あんどキーック!
不意を突かれた上背あるクズ一男が、俺さまご愛用サルバトーレの靴底を胸に受けて、みごとにひっくり返る。
俺は反動を利用して着地。
腰を階段にぶっつけてアイタタタってのも、着地に含めてくれるのならば。
慣れない大立ち回りをしただけでも、めっちゃ褒めてもらいたい。
もちろんヤドゥルにではなく、あのお方にだ。
いや、そんな呼び方すると、名前を呼んではいけない邪悪なる魔法使いみたいだから訂正――あの麗しき美少女に、だ。
クズ一男は、階段を転げ落ちながら後ろのクズ二男を巻き込んで、二階の狭い踊り場に倒れ込んでいる。
「クソガキが!!」
「こんクソヤロウが!!」
日本屈指の凡庸なる罵声を、ダブルでぷりてぃなマイお尻辺りに喰らいながら、俺はすでに四階へと走り去っていた。
「ぶっ殺す!」
「ぜってー殺す!」
ぜってーこんなことで、殺されたくはないのだ。
以上で厨二版は終了です。
以降は本編を御覧ください。
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