PART1
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あらすじ
マゾーク特攻隊長ジョロキウスが町に現れた。得意のパワーを活かした戦法で瑛人達を追い詰めていく。そんなジョロキウスを前にとある思いを胸に秘めた彈が命を賭けた攻撃に出る。
「まさかお前が梓さんの弟とはな。未だに信じられない……」
「まだ言ってるのか?」
ある日、瑛人と彈は梓に頼まれ共に買い出しに行っていた。
「そりゃそうだろ。だって顔も性格も全然似てないじゃないか!」
「そうか?よく見てみろよ」
「ん?」
「目元や口元は姉さんにそっくりだろ」
「いや、全然似てないね」
何故か頑なに兄弟である事実を認めようとしない瑛人。
「とにかくお前みたいな女ったらしが梓さんと家族だなんて俺は絶対信じないからな!」
「だったら好きにしろ。何があっても事実は変わらないけどな」
「大体何で兄弟だったら2人とも名字が違うんだよ」
「それは俺達が幼い頃に両親が離婚して別々に引き取られたからだ」
「え、」
「俺を引き取った父親は今じゃ俺を捨てて他の所で家族作って幸せにやってる。姉さんを引き取った母親はちょっと前に病気でな……だから今は俺達姉弟2人で暮らしてるんだ」
淡々と過去を話す彈になんだか変な意地を張って不躾な質問をした事を申し訳なく思う。
「ごめん……」
「謝られても困る。なにせこっちは何とも思ってないからな」
買い物を終えた2人は店へと戻ってくる。
「あらおかえり2人とも。お使いご苦労さま〜!」
まるで天使のような微笑みで疲れた俺達を出迎えてくれる。
その笑顔だけで俺の体は疲れを忘れて何倍も元気が湧いた。
「単純な奴だ…姉さん荷物ここに置いとくよ」
「うん。彈もありがとね」
「ああ。俺もついでがあったし」
譚はチラッとカレンダーに視線を向けると梓もそれを見て頷く。
「もう2年だね……」
「そうだな……」
「ちゃんと間違えずに買えた?…」
「もちろん。間違えるわけがない」
2人の会話には耳も貸さず次々自ら仕事を見つけ馬車馬のようにこなしていく瑛人。
普段なら余り気にしていなかったカウンターに置いてある一輪のマリーゴールドに目が行った。少し前までは元気に咲いていた筈の花だったが今は枯れて萎れている。
「(もうゴミだな…)梓さんこの花枯れてるんで捨てときますねー」
「え、あ、ちょっと待って!」
「止めろ」
花瓶から枯れた花を抜こうとした瞬間、彈が思いっきりその手を掴む。
「な、なんだよ……」
「俺がやる。お前は触るな……」
「いいよこのくらい。俺の仕事だ」
「いいからその手を離せ……!!」
今までの彈からじゃ想像出来ないほどドスの効いた低い声で静かにキレる。
「わ、分かったよ。悪かった……」
「……」
彈の気迫に圧倒され渋々瑛人はそれを諦めた。
店内の空気は凍りつきピリついたムードが漂う。
(なんだよアイツいきなり雰囲気が変わったような……。でもなんで急に?…)
「やっぱり2人ともここにいたのね」
すると翼が少し慌てた様子で店に駆け込んでくる。
「って、何よこの雰囲気?」
「まぁ、ちょっと色々とあってな……。で、翼は何しに来たんだよ?」
「魔獣が目撃されたわ」
「それを早く言え。場所は!?」
「ここからすぐ近く」
「分かった!」
瑛人は翼からザンバを受け取り魔獣の元へ急ぐ。
「……彈」
「……俺もか?」
「そうよ」
「悪いが俺はパスだ。別にいいだろ2人も行かなくても」
「奴が現れたのに?」
「なに!?……」
翼の一言で彈の顔色が変わる。
「間違いないのか?……」
「ええ」
「分かった」
すると翼はレディを彈に渡す。
「アイツのザンバもそうだけど整備と精錬は完璧に済ましてある。だから今度こそ必ず勝って」
「言われなくてもそのつもりだ」
「バディ。奴の気配を辿りましたわ。急ぎましょう」
「ああ。…姉さんはここにいてくれ。何があっても絶対にここから離れないで」
「う、うん。でも彈や瑛人君は?」
「大丈夫。別に危ない事はしないさ。…ケジメをつけに行くんだ」
彈は翼に駆け寄るとそっと頷く。
「翼。ここと姉さんは頼んだ」
「分かったわ。気をつけて」
「…行くぞレディ」
「参りましょうバディ」
彈を見送った翼は飾られたマリーゴールドに視線を向ける。
「(よりにもよって今日とはね……)」
「ここら辺であってるんだよな?」
「ああ。近くからバシバシと強敵の気配がするぜ」
魔獣の目撃場所に向かった瑛人達
「俺様はここだ!!」
声が聞こえて振り返った先にいたのは屈強で大柄な肉体と自分の背丈よりも大きいハンマーを軽々と携えた魔獣がこちらを見て笑っている。
「ハハハッ!!会いたかったぞ色者ども!!」
「コイツ…今までの奴とはなんか違う」
「気を付けろエイト。感じていた強敵の気配は間違い無くコイツだ!」
「俺様は大魔神様の僕にしてマゾーク特攻隊長ジョロキウス!!お前達色者ともう一度戦える日を楽しみにしていたぞ!!」
もう一度?どういう意味だ。
「剣の色者よ。お前の戦いはずっと見ていたぞ」
「なに?」
「お前が初めて色者として戦った時からずっと思っていた。一度は戦ってみたいとな!」
「へぇ〜そりゃあ嬉しいね」
「だがそれも一度きりで終わりだろうな。ここでお前は俺様に倒されるのだから!!」
ハンマーを瑛人に向け挑発する。
「言ってくれるな」
瑛人のザンバを握る手にも力が入る。
「やるのか?」
「やるに決まってる。ここまで言われて逃げれるわけがないだろ」
「それもそうだな。…だがくれぐれも無茶はするなよ。力の差は歴然だ」
「やってみなきゃ分かんねえ。鎧染!!」
力を込め勢いよくザンバを引き抜くとアカキキシへと姿を変えた。
「はぁーー……」
普段ならここで一気に飛びかかる事が多い瑛人だが一度息を大きく吸いながら剣を構え精神を整える。
「…行くぞザンバ!!」
「ああ!!」
ここだと決めた自分のタイミングで覚悟を決め思い切って前へ飛び込む。
「ほぉー。いきなり前面突破で来るのか。随分潔いな。力で俺様に勝てるとでも!?」
ジョロキウスも力の限りハンマーを振り回し、パワーでアカキキシの攻撃に対抗する。
「来るぞ!」
サンバの合図でジョロキウスの攻撃を見事に避けるとそのまま地面に打ち付けられたハンマーを踏み台にしてアカキキシは大きく飛び上がりジョロキウスの頭上に狙いを定める。
「先手必勝!一気に決める全力で!!」
「分かった。行くぜ必殺技だ!!」
――――FINSH☆MOVE――――
「くらえ!!」
瑛人の合図に応えて刀身が輝き出し渾身の一撃がジョロキウスを襲う。
「無駄だ!!」
「なっ!…」
ジョロキウスは片手で剣を掴みアカキキシの動きを止めた。
アカキキシは何も出来ないまま力任せに吹き飛ばされる。
「ぐああっ……」
「この俺様の得意がパワーだけだと思ったなら大間違いだ!」
ハンマーが突如変形すると中にはミサイルが仕込まれていてアカキキシ目掛けて発射される。
「起きろエイト。来るぞ!」
「くっ……」
すると動けずにいたアカキキシを狙ったミサイル全弾が何者かによって撃ち落とされた。
「!」
爆風が周囲に立ち込め視界を遮る。
「……鎧染」
1発の銃声が聞こえると直ぐに数発の銃声が鳴り響く。
後から聞こえた数発の銃声は的確にジョロキウスの体を撃ち抜いた。
「この攻撃……。やはり懲りずに現れたか」
爆風が晴れるとアカキキシの目の前にはクロキキシの姿があった。
「お前…」
また良いところを持ってかれると悔しい気もしたが、なんだが様子がおかしい。
「久しぶりだなぁ……ジョロキウス!!」
らしくないほど怒りに満ち溢れた彈の声は鬼気迫るものがあった。
「数年ぶりだな、銃の色者よ。俺様も会いたかったぞ」
「2年だ忘れんな!!」
怒りに身を任せクロキキシは銃を構え狙いを定める。
「どうしたんだアイツ……」
「エイト。アイツらを1人で行かせるな」
「どういうことだ?」
「アイツら死ぬつもりだぞ」
「な!?…」
クロキキシは激鉄を2回起こし銃身を輝かせる。
「おい何するつもりだ!?」
「お前は黙ってここで見てろ。奴は必ず俺が倒す…」
「待て。奴相手に1人で挑むのは無茶だ。俺もやる」
ザンバの助言もあってかなんとか体を起こし立ちあがろうとするが、
「いいから黙ってろ!」
「!……」
「……レディ。派手に乱れて輝け!」
「オーケーバディ。撃ち尽くしますわ!」
引き金を引くと数千発の黒く輝く銃弾がジョロキウスだけを狙って雨のように振り尽くす。
「無駄だ無駄だ!!」
ジョロキウスはハンマーを頭上で高速回転させ雨のように降り注ぐ銃弾を弾き返す。
「何度やっても同じこと!」
「いいやこっからだ」
ジョロキウスの視線が上に向いたのを狙って一気に懐まで入り込み銃を突きつける。
「懐かしいな。前もこうやって俺様の体に傷をつけたんだっけか」
「次は外さねぇよ。これで終いだ!」
ゼロ距離で引き金を引ききるクロキキシ。強烈な銃声が鳴り響きジョロキウス体を貫いた。
その筈だった。
「なっ……」
「お前はバカか。同じ攻撃がこの俺様に通用するとでも!」
放たれた銃弾は体を貫く事なく地面へと落ちる。
巨大なハンマーを振りかぶった強烈な一撃がクロキキシを吹き飛ばす。
「チッ……」
「バディ。無事ですか!?」
「ああ。なんとかな……」
「奴の体は以前戦った時より強固になっているようですわ。残念ですが今のままではあの体を私達に貫く手段は……」
口にもしたくない結果なのか口籠るレディ。
「だったら奥の手だ…」
「バディ!」
「無茶なのは分かってる。お前も巻き込んじまうしな。だけど頼む。最後まで俺と付き合ってくれないか」
「当然です。バディの想いに応えるのがわたしの生きがいですから。どこまでも一緒ですわ」
クロキキシはレディを片手に頷き、激鉄を起こを黒い炎がつつむ。
「その姿…アイツら一体何するつもりだ!?」
「やっぱりそうか。エイト2人を止めるぞ!アイツら自爆して奴を道連れにするつもりだ!」
「なに!?」
「このままじゃレディの放つ精霊武器のパワーに器が耐えられずに大爆発を起こすぞ!」
「マジかよ!……」
少しずつ時間が経てば経つほど体を包む黒い炎は大きくなっていき次第にパワーも大きくなるのが分かっていく。
「これなら……この力なら!」
「ほぉ……ならばその覚悟全部受け止めてやる!無様に1人でくたばるがいい!」
「上等だぁぁ!!」
怒りに身を任せジョロキウ目がけて走りだすクロキキシを慌ててアカキキシが背後から捕まえる。
「やめろ!もっと他に方法がある筈だろ!!」
「離せ!!…離せ!…もうすぐなんだ……もうすぐで奴をこの手で倒せるんだ!邪魔をするなぁ!」
クロキキシを包む黒い炎はアカキキシをも巻き込み燃え始める。
「マズイ!このままじゃ…」
「エイトここは撤退だ!」
「でもどうやって!?」
「この前みたいに俺を投げろ!」
「え、でも」
「大丈夫だ。2度目だしもう驚かない」
「よし分かった。頼むぞザンバ!」
「ああ」
アカキキシはクロキキシを押さえながらザンバを投げ飛ばす。
「これでも食らえ!」
ザンバは一直線で飛んでいくと奴に当たる直前赤く強烈な光を放ち視界を光で包み込む。
「ここにきて目眩しか!……ちょこざいな!」
「今だ!」
「ああ」
この機にアカキキシは無理矢理クロキキシを連れ撤退していく。
「やめろ……やめろ!!奴だけは奴だけは必ず俺がぁ!俺がぁぁぁ……」
クロキキシの叫び声は徐々に遠くなっていき目眩しの効果が無くなった頃には既に彼らの姿はジョロキウスの前からいなくなっていた。
「逃げたか…。まあいい。あの様子ならまた直ぐにこの続き出来そうだ」
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勝手に祈ってお待ちしております。