PART2
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「ここが誘善神社か」
「残念。ここを登らなきゃ」
2人の行手をその先延々と伸びる険しい階段が道を塞ぐ。
「マジかよ……本当にこの先に魔獣がいるんだよな?もう移動して近くにいるとか、」
「楽しようとしないの。魔獣はこの階段を登った先にある誘善神社の先の森にいる筈よ」
「間違い無いんだよな?」
「ええ。ここはそういう町だもの。諦めて」
店を出てきた時とは考えられないくらい登るのを嫌がる瑛人をダメ押しする。
「…………しゃあない。登るか!!」
「だからそれしかないって言ってるでしょ。行くわよ」
気合いを入れた瑛人達は駆け足で険しい階段をリズム良くどんどんと登っていった。
「998、999……これで終わり!!ようやくついたーー!!神社までの道のり長すぎだろ…」
「この位で息を上げすぎ。アンタ色者でしょ。この位で疲れててどうすんのよ?」
息を切らしている瑛人が大袈裟に見えるほど翼はこれっぽっちも息を荒げてはいなかった。
「どうしてそんなに平気でいられるんだよ?」
「ここ私の散歩コースだから。毎朝登ってる」
「嘘だろ……」
「さあ行くわよ。魔獣がいるのはこの先よ」
翼の体力に驚かされながらも瑛人は翼を先頭に神社の先にある森へと向かった。
「なぁ、さっき店にいたあの男。アイツっていつもあんななのか?」
「どうしたのよいきなり。あ、もしかして気になってる?」
「違う。そんなんじゃない。ただ何となくな…」
「やっぱ気になってるんじゃない」
曖昧な態度を取る瑛人を茶化す翼。
「そうね。まぁ確かにアイツは女遊びは酷いし仕事もよくサボるただの女ったらし。だから町に住む殆どの男からは嫌われてる。そういう奴」
「……」
余りに想定内過ぎて言葉を詰まらせる瑛人。
第一印象でそんな気はしていたがこんなにも的中するとは。
「だけど悪い奴じゃない」
「え、」
「意外よね。矛盾してる。でも本当なのよ。きっと瑛人もその内分かるようになるわ。アイツの良いところが」
「良いところね……」
考えれば考えるほどあの男の事が分からなくなる。嫌わられてるはずなのに好かれてて認められてる。
アイツは一体何者なんだ。
「なぁ、そろそろ教えてくれるか。アイツは俺にとって何の先輩なんだ?」
「それはね…」
「エイト!」
翼が答えようとした瞬間、ザンバが割って入ってくる。
「あーー、なんだよザンバ!ようやく答えが聞けたと思ったのに」
「それどころじゃない。気を付けろ。魔獣の気配がビンビンするぜ」
「なに!?」
森の中にいる2人は慌てて周囲を確認する。
「どこにいるか分かるか?」
「近くにいるぜ。奴は動いてない」
「瑛人!木の上よ!」
翼の声で上を見ると大木に座り団扇を仰ぐ魔獣らしき姿が。
「アイツか。……なっ、」
目視した瞬間魔獣は姿を消す。
「消えた!?」
「一体どこに?」
「…後ろだ!!」
2人が呆気に取られた隙をつき魔獣は背後から襲ってくる。
「!」
ザンバの声で直ぐに振り返ると咄嗟に体を逸らし攻撃をかわす。
「ケケケッ!!」
奇襲は失敗したにも関わらず魔獣は大口を開けて笑う。
その魔獣の姿は真っ赤な顔に長く尖った鼻。手には羽団扇を持つその姿はまるで。
「コイツ、もしかして天狗か!?」
「ケッケッケッ!!」
こちらを見て余裕な表情で笑う魔獣。
「コイツ……完全に俺達を舐めてやがる」
「だったらアイツの伸び切った鼻を叩っ斬って目にもの見せてやろうぜ。相棒!!」
「だな。翼は下がってろ…」
「言われなくてもそのつもりよ!」
翼は木陰に身を隠しこちらを見守る。
「じゃあ妖怪退治と行きますか。…鎧染!!」
大きな掛け声と共にザンバを勢いよく引き抜き、瑛人はアカキキシへと姿を変えた。
「はぁぁ!!」
アカキキシは直ぐに魔獣の懐に飛び込むが、魔獣の手に持つ羽団扇を使って簡単にいなされてしまう。
「ケケッ!」
羽団扇をアカキキシ目掛けて扇ぐと、風が鋭利な刃としてアカキキシを襲う。
「うわっ!……」
「コイツ風を自在に操れるのか!」
連続に放たれる風の刃は目視も出来ず一方的にアカキキシを追い込んでいく。
「見惚れてる場合かよ!このままじゃ奴に近づけないぞ。どうすればいい」
「簡単だ。オレを使えばいい」
「使うってどうやって?…」
「オレは剣だぞ。剣の使い方なんて一つしかないだろ」
「そういう事か!」
アカキキシは自らを襲う見えない風の刃を直感的に探し当てサンバで切り裂いた。
「この感触、上手くいったのか!?」
「ああ。オレに切れないものはない」
「そういうのはもっと先に言ってくれよ!」
「ケッ……!」
魔獣はさっきよりも速いスピードで羽団扇を扇ぐと四方八方から風の刃が現れる。
これでは直感じゃ間に合わない。
「ザンバ!」
「任せろ。左、右、上、上、斜め左、そして正面だ!!」
「ああ!」
アカキキシはザンバの指示の元完璧に風の刃は捌き切る。
「ケケッ!?」
流石の魔獣も驚きを隠せない。
「あの2人もう互いを信じ合って助け合ってる。1人じゃ無理でも2人なら、か…。」
瑛人がザンバと出会って約1週間。この短い期間で抜群のコンビネーションを見せる瑛人達を見て感心する翼。
「今だ!」
「分かってるよ!」
アカキキシは息のあったコンビネーションで距離を詰めると魔獣に一撃を与える。が、
「浅いか!……」
攻撃が当たる直前魔獣が姿を消した為アカキキシの一撃は擦り傷で終わってしまう。
「どこに行った?…」
「まだ気配はある。油断するなよ相棒!」
「ケケーッ!!」
「上だ!」
声が聞こえて上を向くと空を飛び嘲笑う魔獣の姿が見える。
「コイツ空も飛べるのか!?」
「まぁ天狗だからな」
「そのまま空を飛んで逃げるつもりか?」
「ケッケッケッ!!」
高笑いする魔獣の視線が見つめた先にいたのは、
「狙いは翼か!」
アカキキシは戦闘態勢を解くと慌てて翼の元へ急ぐ。
「逃げろ翼!!」
「え!?」
「ケッ……」
それを見た魔獣は鼻で笑い笑みを浮かべる。
「違う相棒!アレはフェイクだ!!」
「なっ!?」
気づいた時にはもう遅かった。隙のできたアカキキシは切り落とされた大木の下敷きになってしまう。
「ぐっ……」
自身の体に重なった複数の大木がアカキキシの身動きを封じる。
「ケーッケッケッ!!」
今度こそ魔獣は羽団扇を翼へ向け狙いを定める。
「くそッ!!……」
必死に脱出を試みるアカキキシだがこのままでは間に合わない。
「逃げろ翼!!走れ!!」
「ウソでしょ!?…」
「ケーーッ!!」
「翼ぁぁぁぁ!!」
魔獣の甲高い叫び声と共に風の刃を翼に向け放とうとした瞬間、1発の銃声が鳴り響き魔獣を地面へと撃ち落とした。
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