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ヴァリ・カヴァリエーレ〜色彩ノ騎士タチヘ〜  作者: 春風邪 日陰
第二話 エゴイストヒーロー
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PART3

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……

「ウホホッーー!!」


以前現れた時より体は大きく気性も荒くなっているようだ。


「…見つけた!」


駆けつけた瑛人は模造刀を引き抜き構える。


「……勝てるのか?姿も変わらないただの俺が魔獣相手に」


いざ魔獣を目の前にすると手の震えは止まらず不安が頭によぎる。


「大丈夫だ。大丈夫……俺なら出来る。俺なら勝てる!わぁぁぁぁ!!」


自らを必死に奮い立たせると声を上げながら魔獣に立ち向かった。

背を向ける魔獣めがけて勢いよく刃は振り落とされる。


パキンッ!!


「なっ……」


甲高い音ともに模造刀の刃は真っ二つに折れて飛んでいった。


「ウソだろっ!!」


「?」


こちらに気づいた魔獣。


「ジャマダ、ウセロ!」


「ッ!」


以前よりも凶暴になった魔獣の一発を間一髪避けると直ぐに距離を取る。


「ヤバイヤバイヤバイ……」


そう思った瞬間腰が抜けると地面に尻をつけたまま動けなくなってしまう。


「無理だったのか。やっぱり俺はヒーローになれないんだ。俺は変われない……」


完全に戦意喪失した瑛人を魔獣が相手にすることはなく直ぐに目の前の建物や人々を襲い始める。


「アンタはどんなヒーローになりたいわけ?」


何も出来ない。何もせずに見てるしか出来ないこの状況で思い出したのは翼の一言だった。


「くそ……ようやく気づいた」


俺はテレビで見てたあのヒーローみたいにはなれない。

仮に憧れたヒーローになれるから俺は戦うことを選んだのか?

違う。

町や人々が悲しむ姿を見たくない。

だけどそれ以上に俺は気に食わなかったんだ。新居を壊したアイツらが。最初はそんなシンプルな理由だった。

姿が変わってなくても力を手にしてなくても気づいた時には既に俺は戦うことを選んでた。

俺は何も変わってなんかいなかったんだ。


「このままでいいわけがない……」


力を手にして調子に乗ってた。

ヒーローだから戦うんじゃない。憧れられたいから戦うわけでもない。

俺はずっと自分の為に戦ってた。

まずは自分の為に戦ってそれが回りに回って誰かの為になる。

自分の為に戦えない奴が誰かの為に戦えるわけがないからな!

それが俺っていうヒーローの形なんだ!


立ち上がった瑛人は折れた模造刀の持ち手部分を魔獣に思いっきり投げつける。


「ン?…」


「おいそこの食いしん坊や!あの程度で勝った気になるなよ。お前の相手は俺だ!」


一度コチラに興味を示した魔獣だったが直ぐに目の前の食事に夢中になる。


「っ、無視してんじゃねぇよ!!」


魔獣の背中に思いっきり蹴りを1発入れる。


「こっち見ろ!」


「……!!」


何度も食事を邪魔されたことだイライラが溜まっている様子の魔獣。

瑛人の手には近くの八百屋から拝借したバナナが。


「あんだけ食って腹一杯か?いいやデザートは別腹だよなぁ?」


覚悟を決めた瑛人はまるで人が変わったかのように挑発する。

それを見た魔獣は次第に鼻息が荒くなると他の物には一切目をくれずこちらに襲いかかってくる。


「ソレクワセロォォォォォォ!!」


「食えるもんならな。こっちだ!」


バナナを餌にして魔獣を商店街から人気の無い更地まで移動させる。


「はぁはぁはぁ……ここまでくれば……」


周りに建物も無く人もいない。だが広く見通しが言い分これ以上逃げる場所もない。


「オワリダァ!!」


獲物を追い詰めた魔獣が遂にトドメを刺そうとする。

その時何かを察した瑛人はニヤリと笑う。


「いいや終わるのはお前だ」


「ナニ!?」


次の瞬間、大きなエンジンを鳴り響かせ勢いよく飛び込んで来る一台のバイク。


「お待たせ」


「翼」


「会って間もないのにもう呼び捨て?まぁいいわ。覚悟は決まったみたいだしね」


翼は瑛人の側に止まると背中に背負っていたザンバを手渡す。


「コレ、完璧に治しておいたから」


「ありがとう」


翼に磨かれたザンバは鋭利な輝きに満ち溢れていた。


「待たせたな相棒!」


「ザンバ」


「その目。どうやらなりたいものが決まったみたいだな」


「ああ。俺は俺の為にだけ戦うヒーローになる。だけどこの町に住む人々が悲しむ姿も見たくない。だからついでにそれも守ってやる」


「守るのがついでね。とんでもない自己中なヒーローがいたもんだ!…やっぱりお前は変わってるよ。その歪さ俺が気に入っただけはある!!」


サンバは赤く輝き瑛人の意志に共鳴する。


「それ褒めてるのか?」


「めちゃくちゃ褒めてる」


「そっか。…じゃあやるか!」


「ああ。ここからが本番だ。リベンジマッチと行こうぜ相棒!」


「鎧染!!」


掛け声と共にザンバを引き抜くと赤い光に包まれた瑛人は一瞬で紅き鎧を纏いし騎士アカキキシへと姿を変えた。


「勝負だ、かかってここい!」


「オレガ、ゼンブゥ…クッテヤルーー!!」


魔獣の叫びを合図に戦いのゴングは鳴り響いた。


「来るぞ!」


全速力で向かってくる魔獣を迎え撃つべく剣を構える。


「なぁどうするつもりだ。このままじゃさっきの二の舞だぞ」


「分かってる。だから戦わない!」


「なに!?」


アカキキシを狙った大きく手を振り上げてから放たれる豪快な一発は後ろに飛び上がり回避する。


「どういうつもりだ、相棒!?」


「素早く放たれる奴の攻撃。だけどどれも必ず大きな振りから始まってると思わないか」


「そうか。ならその一瞬の隙を見極めるんだな」


「ああ。だけど俺には無理だ」


「なんだって!?」


「今の俺は奴の攻撃を避けるのが精一杯でそんな余裕は無い!こうやって喋ってるのだってやっとなんだからな」


「オイ、ニゲルナァ!!」


この最中も魔獣の攻撃をギリギリでかわしていくアカキキシ。


「じゃあどうするんだ?」


「ザンバ。お前がやってくれ」


「オレが!?」


「そうだ。剣のお前は俺より目の前でアイツの攻撃を見てる。俺は無理でもお前なら!」


「相棒を俺が助けるのか?剣の俺が?俺は所詮ただの道具だぞ」


「道具じゃない。だって俺達相棒だろ。相棒同士なら互いに助け合うべきだ」


「ヘヘッ!そうだったな。オレ達は相棒だ!ならオレに任せろ!」


アカキキシは剣をギリギリまで魔獣に近づけながら奴の攻撃を紙一重で避けていく。


「チョコマカチョコマカ、ニゲルナァ!」


イラついた魔獣の一発はいつもよりも大振りで乱暴に振りあげられる。


「今だ相棒!!」


「食らえ!!」


サンバの合図を受けたアカキキシは魔獣の土手っ腹に与えた渾身の一撃は魔獣を退け反らせる。


「ウホォッ……」


「これなら行ける!」


「いいぞ。一気に決めろ!必殺技だ!!」


――――FINSH☆MOVE――――


構えた刀身は紅色に染まり強い輝きを放つ。


「「これが俺達の共同作業だぁぁ!!!」」


紅色に染まった刀身から放たれた斬撃が魔獣を真っ二つに切り裂いた。


「……ゴチソウサマデシターー!!!」


断末魔と共に魔獣は大爆発、アカキキシは勝利を勝ち取り再び町に平穏が訪れた。



「お疲れ。ありがとうこの町を守ってくれて」


「いや、礼を言うのはこっちの方だ。ありがとう。翼がいなきゃきっと俺はアイツに勝ててない」


「私は何も。私はただ言いたいことを言って私が勝手にアンタに期待しただけ。貸して」


翼はサンバを手に取る。


「あーあ、もうこんなに傷つけて」


「悪い。そんなつもりはなかったんだが…」


「でもいい使い方してる」


「え、」


「刃物なんだから使えば傷つく。それを一々気にするなら使わない方がよっぽど長持ちするわ」


「だけど、」


「こういう使い方なら使われる方もきっと喜んでる。でしょザンバ?」


ザンバを引き抜き語りかける。


「ああ。最後の一撃はオレもスカッとしたぜ」


「ほらね」


「2人ともありがとう」


瑛人の声に微笑み返すと直ぐに仕事道具を取り出す。


「さてと、なら次の戦いに備えて鍛えますか」


「よろしく頼むぜツバサ」


「ええ」


すると思い出したように翼が告げる。


「そうだ。次からは随時有料だから」


「ええぇぇ!!マジで!?」


「さあね?ふふっ」



戦いを終えた2人が工場に戻り束の間の平和を楽しんでいた頃。


魔神復活を目論むマゾーク達は……


「まただ、またやられたぞ!このままでいいのかバジェリー!」


「ぬぬぬ……このままでは魔神様復活など夢のまた夢。何か方法を考えねばならぬな」


「もういい!今度は俺様が行こう。俺様なら騎士など恐れるに足らん」


意気込むジョロキウスをそっと止めるバジェリー。


「待て。奴に与えられた傷がまだ癒えていないだろ」


「そんなの関係あるか!この程度の傷どうってことないわ!」


「それでやられてしまえばこちらが困るのだ。特攻隊長のお前がいなくなれば我らの士気は下がり、それこそ奴ら騎士に対抗する手段が無くなりかねん」


「ならどうする。他に方法があるのか?」


困ったバジェリーは渋々決断する。


「本当なら奴らの力を借りたくはなかったのだがな、背に腹は変えられん……」


瑛人達はまだ知らなかった。闇夜に輝く2つの眩い光が近づいていることを……


――――――――


モテ期って知ってるか?人間生きてたらいつかは必ず誰かにモテる時期があるらしい。不思議だよな。


いつか相棒にもそんな時期が来るのだろうか…


次回 鎧染!壮麗ナル銃身と黒キ鎧


まぁ、武器のオレにはこれっぽっちも関係ない話だがな。





ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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