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ヴァリ・カヴァリエーレ〜色彩ノ騎士タチヘ〜  作者: 春風邪 日陰
第二話 エゴイストヒーロー
3/20

PART1

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……


あらすじ

魔獣と戦う力を手に入れた瑛人。〈鍛治師〉を名乗る翼からこの町の秘密を知ったことで戦う覚悟を決める。しかし子供の頃に憧れたヒーローのようにになれたことでどこか浮かれ気味。そんな中、町に現れたゴリラの魔獣の強大なパワーになす術なく打ちのめされてしまう。

「ここは……!!」


目を覚まし辺りを見回すとそこは見たこともない部屋の一室だった。


俺は昨日自分に何が起こったのか。それを振り返りながらゆっくりと部屋を出る。

何も上手くいかない自分に嫌気がさして、変わりたくてこの町に引っ越してきた。

そして度々現れる魔獣と呼ばれる怪物達が平然と町を襲っていた事実に驚愕した。

そして気がつくと俺は空から落とされて、喋る剣に言われるがままその剣を引き抜くと姿が変わっていた。

まるで変身ヒーローの様な姿になった俺は見事に魔獣を倒した。

確か昨日はそんなんだったはず。それで俺は意識を失ったんだ。


「ここって……」


部屋を出て通路を通り見えた場所は鉄くさい工場だった。


「あ、ようやくお目覚めね」


煤埃を払うと一本の剣を片手に翼がやって来る。


「あ、貴方は…」


「私は南梨翼。宜しく」


「どうも。あ、俺は弥咲瑛人です。助けてくれたみたいでありがとうございます」


「ほぉーエイトって言うのか。気に入った!そうだオレの自己紹介はいらないよな?相棒」


ここでは当たり前のように話す剣を見て昨日の出来事をはっきりと思い出した。


「やっぱり気のせいでも夢でもなかったんだな」


「あ?何言ってんだオレの相棒は?」


「起きたばっかで寝ぼけてんのよ。…ねぇ良かったら少し時間はずれちゃったけどお昼でも一緒にどうかしら?それぞれ話したい事も気になる事もいっぱいあるだろし」



そう言われて連れてこられたのは一軒のカフェだった。


「実はこの店この町の中でも1番の人気を誇るお店なの。ピーク時は並ばなきゃ入れないのが当たり前だしね」


「そんなに美味しいのか。じゃあ何が有名なんです?」


「いや、味はそこそこ。値段も特別安い訳じゃないしこれといった物があるわけじゃないわ」


「え、でも人気なんでしょ?」


「入ってみれば分かるわ。何が本当に人気なのか」


扉を開けると率先して店主に顔を見せる翼。


「あ、いらっしゃーい!翼ちゃん今日も来てくれたんだねー!!」


俺達を明るく迎えてくれたのは、ほのぼのした雰囲気に笑顔が美しい美人という言葉だけじゃ足りないほど特別綺麗な女性だった。


「どうも。いつもの席って空いてます?」


「ええ。どうぞー。あれ、一緒にいるこの人は?」


「ああ。この人は、」


「もしかして翼ちゃんの彼氏さん!?」


喋る翼を遮り体を乗り出し翼に詰め寄る美人店主。


「違います!変なこと言わなでくださいよ。この人は今日からこの町に引っ越してきたただの他人です」


「そうなの?」


「そうです。ちょっと訳あって知り合ったんでついに色々とこの町の事を紹介しようと思ってここに来たんです」


「あら、ごめんなさいねー。私ったら勘違いしちゃって」


すると今度は俺に近づいて来ると手をそっと握る。


「!?」


「私、高宮梓って言います。この町もこのお店も今後とも是非ご贔屓にしてくださいね〜〜」


「あ、ハイ!」


暴力的に可愛すぎる笑顔でこちらを微笑む梓さん。


これにやられない男は男じゃない。


「はいはいニヤけないの。さっさと席に座りなさい」


翼に連れられ渋々席に座る。


「分かった気がする」


「なにが?」


おしぼりで手を拭きながら瑛人の声に耳を傾ける翼。


「この店が人気な理由。彼女がいるから、そうだろ?」


「周り見てみなさい。私達以外の他の席客は皆男ばっかり。つまりはそういうことよ」


「やっぱり」


「この店、梓さん1人で切り盛りしてる店だから時間が掛かるのはしょうがないんだけど、客の目的は皆梓さんだから中々席が回らないのよ。それがこの店の混む理由」


「それなら納得。俺も通わなきゃな」


「やめてよこれ以上混んだら私が通えなくなる」


チラチラと梓を気にする瑛人の目線を遮るようにメニュー表を渡す。


「さっさと決めて」


「分かった…」


「だけど彼女のこと諦めるのが身のためよ」


「なんでだ?」


「彼女はこの町のマドンナだからライバルが多い。アンタじゃきっと相手にならないわ」


「そんなのやってみなきゃ分からないでしょ。昔の俺なら分からないけど今の俺なら」


「呆れた」


中々メニューを決めようとしない瑛人に腹を立てた翼は勝手にナポリタンを2人前頼む。


「あ、俺はまだ」


「食事はついで。他に話さなきゃいけないことがあるでしょ」


「……」


翼に諭され我に返る瑛人。


「貴方が今聞きたいのは、梓さんと付き合えるかどうか?それともこの町を襲う魔獣や貴方の姿を変えた喋る剣について。どっち?」


「そんなの魔獣についてに決まってる」


「よろしい」


「魔獣と呼ばれる怪物達をこの町に送り込んでるのはマゾークと呼ばれる魔獣の軍団よ」


「マゾーク?」


翼は淡々とマゾークと名乗る怪物達について話し始めた。


「マゾークの目的は封印された魔神の復活。分かりやすく言えば奴らは親玉を蘇らせようとしてるってこと」


「蘇らせるって」


「これはあくまでも推測でしかないけど、奴らは恐怖や怒り悲しみといった人間の負の感情を集めてるみたい。だから簡単に人は襲うけど簡単に殺しはしないのはそういう理由。この町に住む人間が滅びちゃったら負の感情を集めるどころじゃないもの」


突拍子も無い内容の筈なのに不思議とスッと頭に入ってくる。きっと似たようものをテレビやマンガで見たことがあるからだろう。


「なぁ、なんで俺はこの町に来るまでこんな事になってるって知らなかったんだ?魔獣とか化け物が出たっていうならもっと騒ぎになっててもいいはずだろ。知ってたら引っ越さなかったわけだし」


「でしょうね。だからその理由は簡単。この町に関してどんな情報も国が管理して情報を操作してるから。新しく人がやって来なきゃ町も潤わないもの」


「そんなの許されるのか」


「許して貰わなきゃ困るわ。それが国の考え方なんだから」


こんなのまるでフィクションだ。普通はあり得ない。そう考えるのが当たり前だ。でも昨日の出来事でその当たり前は覆された。だからこんな突拍子も無い説明も信じられてしまう。


「驚いた?」


「ああ。でも全部納得は出来た……」


「そ。ならコレ渡しておくわ」


テーブルに置かれたのは僅かに膨らんだ封筒。


「コレは?」


「そっと見てみなさい。そっとね」


俺は言われるがま封筒少しだけ開き中を除くと、そこから見のは十数枚の札束だった。


「何コレ」


「割に合わないからって私に文句言わないでよね。私の方がもっと安いんだから」


「文句じゃない。なんでこんな大金を俺に渡すのかと聞いてるんだ」


なーんだと拍子抜けした様子を見せた翼はすぐに答える。


「昨日の報酬よ」


「昨日のって、あの魔獣を倒したから?…」


「そういうこと。少ないけどね」


「このお金は君から?」


「なわけないでしょ!なんで私が、これも国からよ国から!!」


八つ当たりばりに俺に攻め入る翼。


「あのね、私達はこう見えても公務員扱いなの。まぁ、公務員と言っても色々と例外だらけで給料は成果に応じた歩合制だけどね!」


「もしかしてそれって口封じも兼ねてだったり?」


「あら、思ったより察しがいいのね。そうよ。ヒーローだって金がなきゃ生活できないもの。仕方ないわ」


金は渡すから命かけて戦えって事か。ヒーローって聞こえはいいけど要するに都合のいい兵隊になれて言ってるのと同じだ。


「文句でも言いたそうね。だけど国だって焦ってるのよ。今はマゾークの侵略はこの町だけで済んでるけど、下手したら首都にだって攻撃を仕掛けて来るかもしれない。そんな事になったら日本どころか世界全てが滅ぶかもしれないんだから」


「……」


「怖くなった?恐ろしくなった?辞めるなら今のうちよ」


「いや辞めない。せっかく変われたんだ。このチャンス無駄にはしたくない。ヒーローとして!」


男の子なら誰もが一度は憧れるヒーローの存在。勿論俺もその内の1人だ。それに俺はなれたんだ!誇らしくないわけがない!

俺はヒーローとしてこの町を守ってみせる。あの頃憧れたヒーローのように俺もいつかは憧れられる存在になるために。


そんな覚悟を俺は今の一言に込めたつもりだった。


「ヒーローね…。意気込むは買うけどさ、アンタがなりたいヒーローってなんなの?」


「そんなの決まってる。皆が喜んで憧れるテレビで見たヒーローのようにだ」


「そ…それもいいかもね。だけどそれじゃヒーローになるどころか何も守れないと思うけど」


「え?」


2人の会話に曇り空が見えてきた頃、ようやくテーブルにナポリタンが運ばれてくる。


「さ、食べましょ」


「なぁ、今の意味ってどういうことなんだ?…」


「気にしないで。私の独り言みたいなものだから。ほら、そんなことより早く食べなきゃ冷めたらそこそこがそこそこじゃなくなるわ」


何気ない翼の一言に引っかかりながらも俺は夢中でナポリタンを頬張った。


そうしていると魔獣出現の警報が店に鳴り響いた。


「!!」


「来たわね」


「よしっ、俺の出番だな!」


急いで残りのナポリタンを飲み込むと意気揚々と席を立つ。


「待ちなさい」


翼がザンバを投げ渡す。


「1人で行ったってしょうがないでしょ」


「だな。行くぞザンバ!」


「ああ!!」


駆け足で店を出ていった瑛人心配そうに見守る梓。

「察しがいいのか悪いのか。どっちにしろこのままじゃ結果は見えてるけど」


「ねぇ、翼ちゃん。こんな時に外出なんて大丈夫かしら?」


「さあ、どうでしょう?」


翼は他人事のように呑気に食後のコーヒーを嗜んでいた。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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