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ヴァリ・カヴァリエーレ〜色彩ノ騎士タチヘ〜  作者: 春風邪 日陰
第七話 推して推されて愛されて
20/20

PART3

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……


「…待っていたぞ。ちゃんと1人で来たみたいだな」


「嘘は吐くが約束は守る。俺はそういう奴なんだ」


彈は魔獣と話を進めながら魔獣の隣にある巨大な牛乳瓶に目をつける。

その中からアゲハや囚われた人々が助けを求めている。


「待ってろアゲハ。直ぐにそこから解放してやる」


「彈、どうするつもり?……」


心配するアゲハの声も助けを呼ぶ彼らの声も外には聞こえていない。


「色者よ。まずはその手に持ってる武器をこちらに渡してもらおうか?」


「…それがお前の望む条件か?」


「ああ。それさえ渡せば約束通り人間達は解放しよう」


「……分かった。レディすまない」


「いえ、お気になさらずバディ。貴方のためなら私はどうなったって構いませんわ」


「おい魔獣。こっちは大切なパートナーを差し出すんだ。約束は守れよ」


「ハッ。当然だ。そうじゃなきゃ意味が無いからな!」


罠か罠じゃないかそんなの考えてる暇はない。今はこれしかない。


「ならいっせーので交換だ。いいな?」


「分かった」


2人は互いに見つめ合い呼吸を合わせる。


「「いっせーーのっ!!」」


彈は銃を魔獣向かって投げる。そして魔獣も人々が入った牛乳瓶から手を離した。


「今だ後輩!」


「ああ!」


物陰に隠れていたソウジンノキシが飛び出し、魔獣の手から離れた瓶に手を伸ばす。


「バカめ!そんなことだろうと思っていたわ!」


「なに!?」


ソウジンノキシが掴んだ瓶に人質は入っておらず、タプタプと牛乳が入っているだけ。


「ダミーか!」


魔獣の手元には瞬時にすり替えた本物の人質が入った瓶が見える。


「ハッハッハッ!まんまと引っかかったな!!」


魔獣は奪った銃を片手に高笑いを上げる。


「お前……約束破りやがったな。何が取り引きだ!」


「は?何言ってんだお前は?」


「あぁ?…」


「約束なんてものは最初から破る為にあるんだよーー!!素直に信じたお前が愚かなだけだ!!」


「テメェ……」


戦うために必要ない銃を失い、奇襲も失敗に終わった。 

人質も助けられず武器も失った。ヤベェ……。

完全にしてやられた彈の顔は青く染まりはじめる。


「いい顔だな。それが見たかった!武器を失った色者を倒すことなど俺でも容易。ずっとこの時を待っていたんだ!!」


「だったら俺が、」


「待て!お前はそこで黙って見てろ。少しでも動いたら人質の命はないぞ!!」


「チッ……」


人質を盾にされた事でソウジンノキシも戦うことが出来ない。


「まずは俺に騙されたお前からだ。お前を倒して俺はジョロキウス様に褒めてもらうのだぁ!!」


魔獣は何も出来ない彈を殴り、めった打ちにする。


「先輩!!……」


「ほらほら〜?どうだ〜?悔しいか〜悲しいか〜それとも死にたいか〜!!」


彈の必死な抵抗も虚しく終わり彈は魔獣の体に寄りかかるように倒れる。


「一方的ってのは最高だなぁ!!」


魔獣は余裕に笑う。


「…………」


血塗れになりながらも彈の視線は真っ直ぐと揺るがなかった。


「さぁ〜そろそろ終わりにしようか!ここでくたばれぇぇ!!」


「彈!!」


アゲハの叫びは瓶の中だけで響く。


「フッ…」


その時彈はニヤリと笑い魔獣の胸元に銃を突きつける。


「お前がな」


「なっ!」


ゼロ距離で放たれた銃弾は魔獣の脂肪を貫いた。


「……何故お前がそれを持っている!?それは俺が持っている筈なのに!!」


魔獣の手には確かに銃が握られている。


「あ、まさか……!?そんなわけ!」


「そのまさかだよ。な、レディ?」


「ええ。上手くいきましたわねバディ」


彈の手にも相棒レディが握られていた。


「お前が今手に持ってるのは精霊も宿っていないただのおもちゃ。ダミーにすり替えさせて貰った」


「なんだと!!……」


「お前の行動は予想できてた。だから俺もお前と同じ事をすることに決めたのさ。ウチには凄腕の鍛治師がいるんでね、側だけそっくりのパチモン作るくらい朝飯前なんだよ」


「貴様ぁ……!!人質がどうなってもいいのか!!」


「あぁ?何処にそんなのがいんだよ?」


「は?お前はバカか!ここにあるだろ、ここに!!……あれ?」


大事に持っていた人質の入った瓶が何故か無くなっている。


「どこだ、俺、どこにやった?」


「ここだよここ!!」


「そこか!なっ……!」


声が聞こえて振り向くと、ソウジンノキシが人質の入った瓶を抱えて笑っている。


「ど、どうしてお前がそこに!?お前はあそこで何も出来ずにいる筈じゃ」


魔獣は慌てて振り返るとまだそこにソウジンノキシはいる。


「いるよな……」


魔獣は確認してもう一度振り返る。するとやっぱり目の前には瓶を抱えたソウジンノキシがいた。


「こっちにも!お、同じ奴が2人!?」


「ナイスだザンバ!」


「オレがやったんだ。当たり前だぜ!」


ソウジンノキシの分身体となったザンバは瓶を抱えて瑛人の元へ合流する。


「俺は1人で来るなんて一言も言ってないし2人で来るとも言ってない。誤解したお前が悪い」


「お前ぇ……よくも俺を騙したなぁ!!」


「言ったろ。嘘は吐くが約束は必ず守るって。俺はそういう男なんだよ。覚えとけ」


「モオォォォォォッ許さんぞーー!!」


怒り狂った魔獣は鼻息を荒くし今にでも襲ってきそうだ。


「アゲハ達の事任せてもいいか?」


「ああ。彈、アイツのことは任せた!」


「ふっ。後輩のくせに呼び捨てかよ…分かった、こっちは任せろ瑛人!」


ソウジンノキシは瓶を破壊し中に囚われた人々を解放すると安全な場所へ避難させる。

彈は人質達が側から離れた事を確認すると、レディを自身の頭に突きつける。


「さぁ、やられっぱなしは終わりだ。そろそろやり返すぞレディ」


「…覚悟の上、そういう事ですわね」


離れた場所から心配そうにこちらを見つめるアゲハ。それに気付きながらも彈は振り返ろうとはしない。


「ああ。これからの希望や未来が守れるなら俺はそれでいい」

「…オーケーバディ美しく参りましょう!」


「鎧染!」


レディの引き金を引ききり彈は黒き鎧を纏いクロキキシへと姿を変えた。


「彈の姿が変わった……」


「モオォォォォ!!」


目の色が変わった魔獣はクロキキシ向かって真っ直ぐに突進してくる。

それを軽々と跨いでかわすと背後から魔獣の体を射抜く。


「どうしたどうした〜さっきまでの威勢は?」


「モォォォッ!!!」


再び突進する魔獣の攻撃を宙に飛び避けると魔獣の背中に乗っかる。


「お前の気持ちちょっと分かったよ。一方的ってのは最高だな」


背中の上から数発球を撃ち込むと魔獣はクロキキシを怒号を叫びながら振り落とそうと暴れ回る。

だがクロキキシは魔獣の角を手綱代わりに持つと体幹を使ってロデオのように乗りこなした。


「フォーーーッ!!いいねーー!!」


「バディ。お遊びはそろそろにして決めたらいかがでしょう?」


「それもそうだな」


クロキキシはレディの激鉄2回起こし、強力な一発を放とうとするが、怒った魔獣が大量の牛乳瓶をミサイルのように自らの体めがけて発射してきた。


「切羽詰まって捨て身かよ!」


「バディ私にお任せを!1発たりともバディには当てさせません」


「頼りにしてるぜレディ。派手に散りな!」


クロキキシは上空から降ってくる瓶に狙いを変えると、1発の弾があらゆる方向に散弾する銃弾を発射。散弾した銃弾は見事に1発も外れる事なく全てのミサイル牛乳瓶を撃ち落とした。


「うぉっ」


だが1発の牛乳瓶に仕掛けられていた仕掛けが作動しクロキキシを魔獣の背中から吹き飛ばした。


「バディ!」


「大丈夫大丈夫。このくらい擦り傷にもならない。……てかアイツどこ消えた?」


「アレを!」


落ち着きを取り戻し勝てないと悟ったのか魔獣は全速力で逃げていく。


「あの腰抜け、やるだけやって逃げやがったな!」


「だけど逃がしませんわ。バディ、久しぶりにあの子を呼んでみてわ?」


「いいなそれ。たまには構ってやんないとレディにヤキモチ妬くからな。出番だコクバ!」


激鉄を4回起こし地面に向かって弾を発射すると、地面に紋章が浮かび上がり黒き光と共に現れたのはツヤツヤに輝く黒い鎧を纏った黒き馬だった。

コクバは彈を見つけると駆け寄り犬のようにクロキキシの周りをくるくると回る。


「可愛いやつだ」


首周りを優しく撫でてやるとコクバは笑顔で喜ぶ。


「さぁコクバ。あの魔獣を追いますわよ」


「……」


レディの声には耳を貸さずあからさまに無視をする。


「バディ思い出しました。私この子との相性最悪なんでしたわ」


「まぁまぁそんなこと言うなって。コクバお前の力が必要だ。いつもみたいに俺達に力を貸してくれるか?」


クロキキシからの頼みには頷き喜んで背中を差し出す。


「なんてげんきんな仲間でしょう…」


「それもコクバの良いところだ。行くぞレディ、コクバ!」



「ここまで来れば奴らももう追っては来てないはず……もっ!?」


妙な気配を感じて魔獣が後ろを振り向くとコクバに跨ったクロキキシが猛スピードで追ってきていた。


「まさかこんな所まで追ってくるとは!……しかし牛には牛のプライドがある。馬なんかに負けてたまるか〜!!」


魔獣は更にスピードを上げ距離をひらこうとする。


「随分必死な牛さんだ。どんだけ逃げても無駄だっていうのによ」


「今の私の射程はどこまででも。狙った獲物は絶対逃しませんわ」


「1発で決めるぞ」


「了解バディ。超必殺技ですわ!」


激鉄を5回連続で起こすと銃にパワーが溜まっていく。


――――SUPERFINAL☆MOVE――――


コクバは魔獣との一定の距離を保ちながら一切のブレなく走り続ける。 


「ターゲットロック」


「命中率100%」


クロキキシはコクバの背中に立ち魔獣に狙いを定める。

レディがキラキラと黒い光を放ち出すとそれに共鳴するようにコクバの鎧も輝きだした。


「無駄だ無駄だ。この距離で当たるわけがないだろ!!」


「やってみれば分かる」


クロキキシが引き金を引くと発射された銃弾は黒き光を纏い馬のように駆け魔獣を追従し速度を上げていく。


「だから当たる訳がな!!」


笑いを浮かべながら後ろを向いた時には魔獣の目の前まで弾は迫っていた。

黒き銃弾は魔獣の体を貫く。


「俺の推しに手を出したお前が悪い」


「モーーー限、界ッ!!!……」


魔獣は断末魔を上げ爆発、消滅した。


「お見事ですわバディ」


「お前もなレディ。それにコクバもありがとな」


コクバの喜びの鳴き声は辺り一面に響き渡り騎士の勝利を伝えた。



「アゲハ!」


「彈!」


元の姿へと戻った彈はアゲハの元へと駆け寄る。


「大丈夫か?怪我はないか?」


「うん。おかげさまで」


「悪かった。俺のせいで危険な目に巻き込ませて」


「ううん。最初は驚いたけど、でも彈のせいじゃないよ。元々は彈の言うこと無視してここに来た私が悪いんだから」


「だかど良かった。美しい花嫁に傷が付かなくて」


「え!?……彈、知ってたの?私が明日結婚すること」


「勿論。それを祝おうとしてせっかく準備してたんだけどな、お前が早く来るせいで間に合わなかった」


「ウソ。私がサプライズで伝えようと思ってたのにまさか知ってたなんて」


すると彈は内緒で持っていた花束をアゲハに渡す。


「だから急いで町中の花屋巡って間に合わせた」


「凄っ……いいのこんな豪華なの貰っちゃっても?」


「貰って貰わなきゃ困る」


「ありがと彈」


「不思議だよな。俺の周りにいる女の子は何故かみんなマリーゴールドを好むんだから」


蓮華が好きだった花を偶々みんなも好きなだけだったのか、それとも嫉妬した蓮華からのメッセージだったりして……。


「アゲハ。ようやく君の手で掴んだ幸せだ。何があっても手放すなよ」


「うん」


「あ、もしも旦那に文句があったら直ぐに俺に言えよ。超特急で駆けつけてお灸を据えてやる」


「大丈夫。彈と違って彼は私一筋だから!


「それは良かった」


「でも一筋なのは彈も一緒でしょ?」


「……幸せにな。俺はそれを祈ってるし俺はずっと君の味方だ。何があってもな……」


何故か薄らと涙ぐむ彈の様子に驚くアゲハ。


「ちょ、どうしたのよ?別れ際に泣くなんてらしくないわよ」


「そうだな……悪い」


「別にもう会えなくなるわけじゃないんだから。結婚式にはちゃんと呼ぶから祝ってよね?」


「ああ、もちろん……」


涙を拭うと彈は笑顔でアゲハを見送る。


「バディ……」


「もうアゲハに俺は必要ない。彼女は前へ進むんだからな」


アゲハは振り返り笑顔で彈に手を振る。


「元気でなアゲハ!」


「そっちもね!今日は助けてくれてありがとう!」


彈も手を振りかえしアゲハとの別れを告げる。


「それでは……」


「ああ…。お前が笑ってくれてれば俺はそれだけでいい」


レディが彈の手元で微かに光り輝く。


「?」


街を去ったアゲハの手には何も握られておらず、道端にはマリーゴールドの花束だけが転がっていた。

そして2度と彼女が過去に振り返る事は無かった。



「彈が救った彼女の記憶を消した!?どういうことだ!」


翼の言葉に衝撃を受ける瑛人。


「前に聞かなかったけ?どうしてこの街が魔獣の危機に脅かされてることが他所に伝わらないのか」


「それは国が情報規制や隠蔽で管理してるからだろ」


「それだけじゃない。精霊武器の力で目撃者達の余計な記憶を操作してるからよ」


「操作?」


「そ。私達は町を出て行こうとする人間の記憶から魔獣や色者についての情報を削除しているのよ」


だから今まで魔獣についての噂が他所に流れることがなかったんだ。


「魔獣を目撃しただけなら魔獣についての記憶や恐怖だけを消せばいい。だけど今回はそういかなかった…」 


「彈が鎧を纏う姿を彼女が見たから」


「うん。世間からしてみたら魔獣と互角に戦う色者は化け物と一緒だもの」


「だからって彈に関する記憶全てを消す必要は無かっただろ!」


「彈が決めたことよ」


「え」


「もう二度と彼女を危険な目に合わせない為に。これが最善の方法だったのよ」


彼女の記憶から涼鉄彈という人間がいなくなれば彼女がこの町に近づく可能性は少なくなる。この町にさえ来なければ今の所は魔獣の被害に遭うこともない。

だから彼女の記憶からいなくなる事を選んだのか。


「そんな……悲しすぎるだろ。そんなの!」


「それが色者として戦うってことなのよ!……アンタも色者なら覚悟しときなさい」


「くっ……」


「それが嫌なら町以外の人間とは極力距離を取ることね。例え嫌われたとしても守るために」



――――――――


町に突如出現した不可思議な巨像。


やがて人々はそれを奇跡と謳い町を守る神と信じた。


次回 荒ぶる神撃


信じる者は裏切られる、それがお約束。





ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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