PART2
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貴重なお時間にお邪魔します……
「見つけたぞデカ鳥!!さっさっと降りてきやがれ、そして新居に近づくな!!壊したら承知しないからな!!」
魔獣に追いついた瑛人は声を必死に荒げる。
「ギャァァァ!!」
「あ!」
次の瞬間瑛人の声がフリかと思うほど一瞬で魔獣は新居が入っているマンションを倒壊させた。
「あのヤロウ……とうとうやりやがったな!!文句言うだけじゃ済まないからな。絶対許さねぇ!!」
頭に血が上った瑛人は落ちてた角材を拾うと魔獣の元へ走っていく。
「ちょ、ちょっと待った!」
「!?」
背後から翼が瑛人の手を掴む。
「な、なんだよ!」
「なんだよはこっちのセリフ。何考えてんのよアンタは!!」
初対面の男にいきなり怒号を浴びせる気の強さを見せる翼。
「離してくれ!アイツは俺の新居を壊しやがったんだ。それにこれ以上町が壊れる所を俺は見てられない。1発殴らなきゃ気が済まない!」
「だからって行かせられるわけないでしょ。そんな棒切れ一本で敵うと思ってるわけ。思ってないわよね?」
「だけど!」
翼の手を振り解こうとする瑛人の手を更に強く握り返す翼。
「だけどじゃない!気持ちは分かる。でも黙って待ってなさい。その内魔獣は倒されるから」
「ヒーロがやってきてか?……」
「ええ。そうよ」
「じゃあなんですぐに来ない?もうこれだけ町が壊されたっていうのにまだ来ないのかよ!!」
「それは……」
「もう待ってられない」
瑛人は強引に翼の手を振り解く。
「待ちなさい。普通の人間で勝てるわけがない!怪我じゃ済まないわよ!!」
「だとしてもこのまま黙って待ってるよりマシだ!」
全力で魔獣の元へ急ぐ瑛人。
「なんなのよあの男は……」
翼は急いでスマホを取り出してとある人物に電話をかけるが応答はない。
「しかもなんでコイツは出ないのよ!…あの女ったらしまたサボりね。ったくどいつもこいつも何考えてんのよ!!」
頼みの綱からも返事がないまま仕方なく瑛人の後を追おうとするとリュックの中で何かが動いていることに気づく。
「え?…」
恐る恐るリュックを開けると赤く光り輝いた一本の剣が勢いよく飛び出してくる。
「マジ!?」
得意の反射神経で咄嗟に剣を捕まえる翼。
「もーーっ!なんでよりにもよってこんなタイミングで覚醒するのよ!あ、もしかしてだけどまさかあの男と共鳴したとか?…あっ!」
翼の一瞬の隙をつき剣はどこかへ飛んでいってしまった。
「このデカ鳥ぃ!!いい加減降りてきやがれ!!」
瑛人は地上で挑発しながら石ころを魔獣目掛けて投げ飛ばす。
「!!…」
すると投げた小石が魔獣の頭にヒットしようやく奴はこちらを向く。
「ヨシっ。悔しかったらさっさと降りてこい!お前が壊した俺の新居と町を壊した恨み思い知らせてやる!」
「ギャァ!!」
大声を上げながら魔獣は空高く飛び上がる。
「逃げんな!…え、」
すると突然魔獣は方向を変えるとこちら目掛けて猛スピードで襲いかかってくる。近づけ近づく程その大きさが分かる。コレは近づいたらやばいヤツだ…。
「ギャァッ!」
「やっぱ撤回!こっち来んなぁ!!」
慌てて逃げようとするが時既に遅し魔獣は俺を鷲掴みにするとそのまま空へ飛んでいく。
「くそッ!!……離しやがれ!このデカ鳥!!」
瑛人は恐る恐る下を見て絶叫する。
「っ、今の撤回!!やっぱり離すな!……おい聞いてんのかよ」
「ギャアァァァァーーー!!!」
化け物は男の声に答えるように絶叫すると男を易々と手放した。
「マジかよ!ちょっ、冗談だろーーー!」
男はビルよりも高い上空から速度を増しながら降下していく。
「なんで、なんでこうなるんだよ……!」
咄嗟に今日の出来事が頭に浮かぶ。これが俺の走馬灯か……。
「やっぱり俺は変われないのか」
俺は絶望しながら目を瞑り覚悟を決める。
「いや、変われるぜ!」
何か声が聞こえる。
「こっちを見ろ!」
走馬灯の次は幻聴か?俺もそろそろだな。
「諦めるな、目を開けろ!」
なんなんださっきから。耳元で聞こえるこの声は。
俺は仕方なく目を開くと見えたのはどんどんと地面に近づいてく現実と目の前で輝く一本の剣だった。
「死にたくなかったら俺を引き抜け!!」
「け、剣が喋ってる!?やっぱ俺もう死んだのか?」
「まだだ。そうなりたくなかったら黙って俺を信じろ!!」
「は?」
「時間ががない。つべこべ言わずにいいから急げ!」
何が起きてるのか理解できないまま俺は目の前の剣を掴む。
「そしてこう叫べ<鎧染>」
「……っあああぁぁぁー!鎧染!!」
地面に激突する瞬間言われたまま俺は叫び、剣を鞘から勢いよく引き抜いた。
すると一瞬にして俺の体は赤い光に包まれそのまま地面へ激突する。
「…………死んだのか?」
「生きてるよ。自分の姿をよく見てみな。これが死んだ人間のする格好に見えるか?」
俺はゆっくりと窓に反射する自分の姿を確認する。
「な、なんなんだこの格好!?」
その姿は全身赤い鎧を身につけた俺の姿。鎧越しでも分かるほどそこに映っていた俺は明らかに動揺していた。
「見ての通りお前は変わったんだ。つまりこれからお前の名は<アカキキシ>だ!!見た目通りな…」
「は!?なんだそれ!!意味が分からないぞ」
「そんなもん分からなくていい!」
手に握られた剣が俺を一丁前に一喝する。
「分かってればいいことはただ一つ。今のお前は奴と戦える。その紛れもない事実だけだ!」
目の前にいるのは俺を不思議そうに見つめるあの魔獣。
「やられっぱなしでいいのかよ?文句言うだけじゃ満足出来ないんだろ」
「お前…」
「信じろ。オレも自分自身も。全部まとめて信じ抜け!」
今の俺は分からないことだらけだ。目の前にいる魔獣って名の化け物も当たり前に俺に喋りかける謎の剣も。それにまるで変身ヒーローみたいな姿をしている今の俺。
でもそれなら確かにやるべきことは一つだけだ。
迷う理由なんか一つもない。
だって、望み通り変われたんだから。
「分かった。…要するに今の俺ならあのムカつくデカ鳥を容赦なくぶん殴れる。そういう解釈でいいんだよな?」
「違う」
「え、」
「殴るんじゃない。今のオレ達なら奴を叩っ斬れる。そういうことだ!!」
細かいことは無しだ。ヒーローが来ないなら俺がなってやる!
「なるほど。確かにそっちの方がしっくりくるな!」
「だろ?」
「行くぞ!!」
俺は勢いに任せて奴めがけて飛び出した。
当然戦ったことなんてないし喧嘩の経験すらない。学生時代は生涯帰宅部だったから剣道なんてやったこともなければ見たこともない。
だけど漫画やアニメ。もっと言えば小さい頃憧れた特撮ヒーローの様に動くことが出来れば。
「はぁっ!!」
俺は思ったままに剣を降ると魔獣の片翼を一撃で切り落とした。
「え、」
「ギャアァァァァァァーーー」
完全に気を抜いていた魔獣は余りの衝撃に慌てふためく。
勿論それを簡単にやってのけた俺も驚かずにはいられなかった。
「ど、どうなってんだ!…体が勝手に動いたぞ」
「言ったろ。今のお前は奴と戦えるって」
「だけど」
「細かい事気にしてる場合かよ!来るぞ!!」
「ギャアァァァッッ!!」
完全に俺を敵と認識した魔獣は直ぐに失った片翼を再生。俺めがけて飛びかかってくる。
「っ、このヤロウ!」
魔獣の攻撃をヒラリと避けると咄嗟に奴の頭部を切り付ける。
そのまま飛び上がると更にもう一撃叩き込む。
「ギャァ…!」
「どうだデカ鳥!!これが新居と町を壊され悲しんだ者達の思いの痛みだ!思い知ったか!」
「ギャァオッ!!」
魔獣は羽を思いっきり羽ばたかせ怯ませると飛び上がろうとする。
「アイツ今度こそ逃げるつもりか!」
「空へ飛ばれたら厄介だぞ。それにこれがオレ達の初戦なんだ。引き分けは無しだぞ!」
「分かってるっつーのッ!」
俺は奴の手足に剣を突き刺しそのまま一緒に空へ飛び上がっていく。
「さぁ、これからどうする?」
「そんなの、こうするしかないだろ!」
魔獣が俺を振り離そうと必死に動く力を上手く利用すると魔獣より更に上へ飛び上がる。
「おいおいなんて無茶苦茶な剣の使い方だ!使われる身にもなってみろ!」
「正直自分でも驚いてるよ。でも出来たんだからしょうがないだろ。文句言うな!」
「そうだな……。確かにオレはそういう奴が嫌いじゃない!好きに使え!」
「ギャアアア!!」
それに気づいた魔獣は声を上げ迎撃しようとしてくる。
「今だ叩っ斬ってやれ!必殺技だ!」
「ああ!!」
――――FINSH☆MOVE――――
アカキキシが剣を大きく振り上げると刀身が紅色の輝きを放つ。
「これでどうだぁぁ!!」
剣と人間の息の合った紅色に輝く刃は魔獣を見事真っ二つに切り裂いた。
「ギギャァァァァーーー」
剣を振り払うと大きな断末魔と共に魔獣は消滅した。
「はぁ、はぁ……」
息を乱しながら剣を鞘にしまうと鎧は解除され元の姿に戻った。
「初戦にしては上出来だ。よくやった!」
「お前、なんなんだ…。それに今のは……」
「細かいことは気にするなって言っただろ。そんなことよりこれから一緒に戦う相棒に対してお前呼びは無いんじゃないか?」
疲れ果ててる俺を気にせずよく分からない流暢に喋る剣が相棒とはね。
「……じゃあお前名前は」
「さぁな。お前がつけろ」
「あ?、、俺がつけるのか?」
「当たり前だ。相棒のお前がオレを名付けず誰が名付けるんだよ」
「そんな急に言われてもな……」
正直立っているのもやっとなこの状況で頭なんか回る訳がない。
だけど不思議と1つだけパッと思いつく名前があった。
「気に入らなくても文句言うなよ……」
「それはどうだろうな?聞いてからのお楽しみだ」
「…なら、斬るに刃と書いて呼び名は斬刃<ザンバ>だ。文句は聞かない。いい加減俺の体も……」
「ザンバ……。いいね!気に入った。これからオレの名前はザンバだ。よろしく頼むぜ相棒ッ!!」
「限界……」
ザンバの返答を聞いた瞬間、遂に地面へ倒れ込んでしまう瑛人。
「おい!!しっかりしろ。オレはまだお前の名前を聞いてないぞ!」
「いきなり無理させすぎなのよ」
倒れた瑛人を介抱したのはゴスロリ姿の女、翼だった。
「(まさかこんなタイミングで使い手が現れるなんてね。それにアレとも最初から相性が良かったみたいだし、このまま続ければもしかしたら……)」
「な、なんなんだ!アレは!?」
「2人目の色者。まさかあんな隠し玉がいるなんてな……」
動揺を見せるのは魔獣を町に送り込んだ元凶。
その集団の名はマゾーク。
「1人でも厄介というのに2人目だとぉ……。私は聞いてないぞ!あ、まさかお前は知ってた訳ではないだろうな?」
驚きの余り仲間である男に詰め寄る者の名はマゾークの頭脳バジェリー。
「俺に当たるな!知ってたとしてもなんで一々お前に報告しなきゃならないんだ!」
バジェリーを跳ね除け慌ただしくかっかする者の名はマゾークの特攻隊長ジョロキウス。
「くっ…だがどうする。このままでは我々の作戦に支障が出るぞ。我らも早急に何か策を打たねば」
「そんな物は必要ないだろ」
「なに?」
「敵が増えたのなら倒せばいいだけの話。俺様達がやるべき事は何も変わらない。その為に俺様とお前がこうして共にいるのだからな!」
「フンッ!お前にしては中々と良いことを言うではないか……ハハハハハッ!!」
ジョロキウスに鼓舞されたバジェリーは意気揚々高らかに笑う。
「どんな筋書きになろうと最後に勝つのは我々マゾークだ!!覚えておけぇぇ忌々しい騎士どもよ!!」
こうして変わりたいと願い町に引っ越してきた1人の男は文字通りヒーローへ姿を変えた。
そして彼は同時に巻き込まれた。魔神復活を狙う恐ろしき集団マゾークとの戦いに……。
★――――――――――――
どうやら人間ってのは望みや夢が叶うと今まで見えていたモノが見えなくなるらしい。
お前が本当になりたいモノってなんなんだ?
次回 エゴイストヒーロー
オレがお前を選んだこと後悔させるなよ。
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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。
勝手に祈ってお待ちしております。