PART2
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貴重なお時間にお邪魔します……
「翼。彈を知らないか?…」
「ああ。アイツなら丁度さっき出てったわよ」
「マジか!どこに行ったか分かるか!?」
「心当たりはないわけじゃないけど、それ聞いてどうすんのよ」
「あの時のこと謝りたいんだ」
数時間前。
「俺が誤解してるってどういう事ですか?」
彈がカフェから出て行った後、俺は一緒にいた彼女に止められた。
「私は彼に騙されてるなんて思っていません」
「いや、ですからそれは」
騙されてる本人は気づかず客観的な意見に聞く耳を持たない。
最初はただそう思っていた。だけど次の彼女の一言に全てが覆った。
「彼が沢山の女性と同じように接している事も、私に気を遣って嘘をついてる事も全部知ってます」
「え……」
「私だけじゃありません。きっと彼と一緒にいたことある子達ならみんな知ってると思います。私達は遊びだと分かってて彼と一緒にいる事を選んでるんです」
まさかの展開に開いた口が塞がらない瑛人。何とか気を取り戻し話を進める。
「どうして、なんでですか?」
「彼と一緒にいる子達は皆、体や心に傷がついた子達ばっかりで、私もその内の1人です。彼がいなければ今頃私は……。だから私は彼に救われたんです!」
「でも、だからってあの男が貴方達を騙していることには変わりない」
「彼の過去は何となく知っています。だけどそんなの関係ない。彼はどんな時でも本気で私達の事を愛してくれているフリをしてくれる。それだけで私達は嬉しいんです。だから私達も彼とのデートを本気で遊んでるんです!」
「ずっと勝手にアイツは身勝手な理由で女性を傷つけてるって思ってた。だけどそれは俺の誤解だったのか……」
「だから言ったでしょ。ほっとけばいいって。アイツはアイツなりに誰かのヒーローになってるってことよ。何も知らない他人がどうこう言うことじゃない」
真実を知った俺は自分の言動を反省し落ち込んだ。
「俺はまだ彈に謝れていない。それに、きっと今のアイツを支えられるのは仲間だけだから」
「仲間か……そうね。だったら早くまた一致団結して協力しなきゃね」
「ああ!」
「きっと彈はあそこにいる。だけど気をつけて。あそこにいる時の彈はいつもと違うから」
「え?」
「蓮華……」
1人墓地で手を合わせる彈。そして彼女の墓の前にはには墓地に不釣り合いな程黄金色に輝いたマリーゴールドが備えられている。
「ごめん蓮華。最近俺来すぎだな。悪い、やっぱ迷惑だよな。お前を救えなかった俺が来たって」
「そうだ。迷惑だ」
「ちょっとお父さん!」
「お義父さん、それにお義母さん…」
「お前は私達の家族じゃない。その呼び方はやめてくれ」
「すみません……」
彈は深々と頭を下げる。
「嫌いなんだよ。お前もこの花も!どうしてここに来たんだ!?」
「それは……」
「娘の事はもう忘れろ。君が娘を本気で愛していた事は知っている。別に君を恨んでるわけじゃない。だけど、君や蓮華が大好きだったこの花を見ていると私達まで前に進めないんだ」
「…………」
涙を堪えながら想いをぶつける義父。
「もう十分涙は流した。これ以上はもう必要ない。君も私達も、もう前に進むべきなんだ」
「そうよ彈君。蓮華だってきっとそれを望んでる筈だわ」
「……ですね。確かにそろそろ前へ進まなきゃ行かないのかもしれません。だけど、お断りします」
「どうしてだ…」
「俺が本気で愛した女は今もこれからも1人だけでいい。例え蓮華や皆さんががそれを望んでなくても俺にはそれしか出来ないんです」
「どこまで私達を苦しめたら気が済むんだ……」
泣き縋る義父の手をそっと握る。
「俺を恨んで下さって構いません。俺が奴とのケジメを付けるその日まで」
「そろそろ出てきたらどうだ?大分前からバレてるぞ」
「彈……。悪い。盗み聞きするつもりはなかったんだけど」
翼に言われ彈を探しに来た瑛人。墓地での様子を見て気まずそうに姿を現した。
「別にいい。隠すことでもないしな。で、何のようだ?」
「……俺アンタの事誤解してた。それを謝りに来た。申し訳ない」
「お前は悪くない。それにお前が言った事も間違ってない」
「でもあの時の俺は何も知らなかった。女性にとってアンタがどれほど大きい存在なのか」
「……俺がしてるのはただの偽善だよ」
「彈……」
「蓮華がいなくなって直ぐ妙な夢を見るようになった」
一輪のマリーゴールドを見つめながら話し続ける。
「アイツが言うんだ「私の分まで誰かを幸せにしてあげて」って。俺がいくら否定しても蓮華の言うことは変わらなくて……それからだよ。俺が手当たり次第女の子達に手を出し始めたのは」
「それが本当なら彼女の望みを叶えるために変わったってこと」
「俺はそのつもりでずっと生きてる。……まぁ、蓮華を忘れたい俺が自分の行動正当化する為に生み出したただの妄想かもしれないけどな」
「いや、妄想なんかじゃないさ」
「……だといいけどな。アイツが天国でヤキモチ妬いてる事を祈るよ」
蓮華の為にも俺に出来ることはただ一つ。必ず仇を果たす事だけだ。その為なら何だってする。
でのそれと同時に進めなきゃならない事もある。
「後輩。悪いが俺は俺が出来ることしかしない。そういうヒーローなんだ。でもヒーローならヒーローらしく信じてくれた期待には応えたい。だからもう一度俺に力を貸してくれないか?」
「……俺達はそれでいいんだ。俺は自分優先、アンタは出来ることしかしない。そんな身勝手なヒーロー達の集まりだけど俺達だ。やれる事くらいはやるさ!」
2人はガッチリと握手を交わす。
「お前はエイトと違って回りくどい奴だな。正直に手伝ってくれと言えばいいものを」
「バディはこう見えて恥ずかしがり屋ですから。前置きがないと思ったことを上手く言えないのですわ」
2人の様子に笑いながら文句を言うザンバとレディ。
「レディ。余計なこと言うな」
「サンバも言い過ぎ。いいじゃん。キザで回りくどいのがきっとこの人のいい所なんだから」
「なんだか癪な気もするが一応褒め言葉して受け取っておくよ」
2人の間に出来ていた歪な溝は浅くなり距離が縮んだ。
そんな気がした彼らの手元に一本の牛乳瓶が勢いよく降ってくる。
「!……」
それを見事にキャッチすると、牛乳瓶には一枚の手紙が括り付けられていた。
その手紙には「明日、町外れの採掘状で待つ。人間達を救いたければ1人で来い」そう書かれていた。
「どうやらデートの誘いみたいだ」
「間違い無く罠だ。奴らが何も仕掛けてこないわけがない」
「でも誘いに乗らなきゃ救えない。大丈夫だ。既に打てる手は打ってある」
中に入っている牛乳を一気に飲み干しそう呟いた。
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