PART3
閲覧感謝です!
貴重なお時間にお邪魔します……
「翼っ!!」
「……来たのね」
全速力で翼の元へとやって来た瑛人は息も整わないまま話を進める。
「ザンバは」
「今終わったところよ。もうすぐ意識も戻る。そしたら戦えるわ。だけど、」
「分かってる。だから翼、お前に頼みがある!」
「(なんかイヤな予感するけど……)何よ頼みって?」
「ねぇ、そろそろ素直になったらいかが?」
コガネとシロガネの猛攻を一方的に受け続けるクロキキシ。
「……レディ!」
「とっておきですわ!」
クロキキシは激鉄を素早く2回起こし一気に引き金を引き切る。
100発分以上の銃弾が1発の波動砲として放たれる。
「だーかーらー!」
「無駄だと言っている」
コガネとシロガネの息のあったコンビネーションにより渾身の1発は倍以上の威力で弾き返されクロキキシを襲った。
「ぐあああっ!!」
クロキキシの鎧は消滅し元の姿へと戻る。
「さぁキザ男。そろそろお開きにしましょうか」
倒れる彈の元へゆっくりと近づき首元狙って大鎌を振りかぶる。
「バディ。ピッタリですわ」
「そうか…」
彈がニヤリと笑うと寸前の所で大鎌の勢いが止まる。
「…何笑ってんのよ」
「戦いに負けて勝負には勝ったもんだから。つい顔がニヤけちまったんだな」
「はぁ?…」
「……俺は役目をこなしたぜ。あと頼んだぞ後輩!!」
「ああ!!」
サンバを構えた瑛人が元気よく返事する。
「コガネ。昨日の再戦だ」
「……今日は勝てるとでも?」
「勝てるさ。今日の俺は一味違う」
「フッ…。いいだろう。だが今度こそこれで最後だ。シロガネ、お前はそこで見ていろ。奴は俺がトドメを刺す」
「……分かった」
不服そうに返事をするシロガネ。
「さぁ、かかってこい。力の差どこまで縮まったのか。……鎧煌」
コガネは黄金色の鎧を身に纏い瑛人の行動をじーっと伺う。
「サンバ」
「なんだ相棒…昨日の反省か?」
「いや、まずはもう一度俺を信じてくれ」
「……仕方ない。お前はオレの相棒だからな。信じてやるさいつまでも!」
「ありがとなザンバ……じゃあ行くぜ鎧染!」
瑛人はザンバを引き抜きアカキキシへと姿を変える。
「だが相棒。あの強敵相手に何か策はあるんだろうな?」
「当たり前だ」
するとアカキキシは一本の模造刀を手にする。
「コレは…」
「翼に用意してもらった。アイツに勝つために」
時は少し前まで遡る。
「翼、お前に頼みがある!」
「…何よ頼みって?」
「俺が前に使った模造刀。アレと同じの一本貸してくれないか?」
「は?…別にいいけどそんなの持ってどうすんのよ」
「思いついたんだ。俺達が更に強くなる方法を」
「何それ?あ、もしかしてまた無理矢理にでもリミッター解除をしようとなんて思ってないでしょうね!?そんな事したらもうサンバは!」
疑われるのは当然だ。だけどこの方法しかない。
「分かってる。今のザンバじゃ本気の力に受け皿である刀身が耐えられない。そうだろ?」
「そうよ」
「だったら受け皿を増やせばいい。足りないなら増やす。それだけだ!」
「はぁ!?」
そして時は戻る。
「おい相棒。全く意味が分からないんだがそれを使ってどうするつもりなんだ?」
「今のお前は最大限のリミッターが解除してある状態だ。訳を話して翼にやって貰った」
「なっ!!……益々意味が分からない。どうしてそうなる!?今のお前じゃオレの本気に耐えられない!それにオレの体だって」
「その為にコレを使うんだ。この模造刀に受け止めきれないお前の力を分散させる。つまりはザンバ、一時的だがお前をもう一本増やすってことだ!」
「なにっ!?」
「アイツら……レディ、あんな事言ってるけどそんなの可能なのか?」
聞いていた彈も首を傾げレディに問いかける。
「いや普通は無理ですわ。私達精霊武器に変えはない。だから同じ形は作れても同じ物は作れない。それが原則ですわ」
「だよなぁ…だけど翼がサンバのリミッターを解除したってことは、その作戦を認めたって事だよな」
「ええ。それに彼なら例外もあり得るかもしれません。私達精霊に愛された男なら、今までの常識なんて枷でしかないでしょうから」
「…成程ね。確かにそう言われるとあり得るような気がしてきた」
「オレの相棒は毎度なんて無茶苦茶なことを考えるんだ……」
「大丈夫だ。俺とお前。2人でならなんだって乗り越えられる。それが相棒だろ!」
「…分かったよ。そやるぞ相棒っ!!」
サンバの気持ちを表現するように刀身が赤く輝き出すと、それに共鳴するように模造刀も赤く輝き出した。
「双刃覚洸!!」
その瞬間、模造刀はザンバそっくりの刀身へと姿を変え、鎧はキラキラと輝きを放ちながら新たに纏ったマントを颯爽と靡かせる。
「行くぜ…コガネ」
「バッタバッタと斬り倒すぜぇ!!」
意気揚々に吠えるザンバと共にソウジンノキシは派手にポーズを決める。
「……武器を増やしてポーズを決めて、ヒーローにでもなったつもりか?」
「俺達がヒーローなんだよ」
2本の剣を地面へ擦り合わせ火花を散らしながらコガネの元へ駆けて行く。
「力も武器も使いこなせなければ意味はない!」
真っ向から向かいうつコガネ。ソウジンノキシがマントを翻し攻撃を防ぐと一瞬でコガネの後方から一撃浴びせる。
「ッ……どうやら変わったのは見た目だけじゃないようだな」
「当たり前だ」
ソウジンノキシは一本を肩に乗せ、本体であるサンバをコガネへと突きつけ挑発する。
そのポーズは瑛人がかつてテレビの前で応援していた宇宙将軍ジャバンの決めポーズだった。
「舐めるなよ」
今度はコガネが猛スピードで襲いかかる。大剣の重心を生かした重みのある一撃、それをたった2本で受け止める。
「舐めてたら俺も強くなってねぇ!」
2本の剣を滑らせるように逸らし反動を使って大剣の軌道を僅かにずらすと素早く懐に入り込み更に一撃。
「この程度で……勝った気になるな!!」
怒ったコガネの拳がソウジンノキシを吹き飛ばす。だがソウジンノキシも軽快な動きで受け身を取り直ぐに構える。
「…いいだろう。強くなったのは認めてやる。だがたった1人の力でこの俺にトドメをさせるとでも?」
「誰が1人だって?」
「なに?」
「俺は1人で戦ってるんじゃない」
「オレ達は2人で戦ってるんだぜぇ!!」
突然コガネの背後に現れたのはもう一人のソウジンノキシ。寸前の所で攻撃を防いだコガネだったが今起こっている事態に戸惑いを隠せない。
「2人だと!……」
「二刀流だと思ってたなら大間違いだ。なんてったってオレ達は2人合わせて四刀流だからな」
分身として現れたもう1人のソウジンノキシからはサンバの声が聞こえる。
「これが俺達の新しい力だ。互いに背中を守って刃と共に戦う。これが双刃だ!!」
「一緒に決めるぞエイト!!必殺技だ!!」
「ああ!!」
――――FINSH☆MOVE――――
――――FINSH☆MOVE――――
2人のソウジンノキシが同時に赤く輝き、舞うように回転しながらコガネに突撃する。
「「いっけぇぇぇ!!」」
ソウジンノキシは双方向からコガネの体を切り裂いた。
「ハハッ……まさかとは思っていたがここまでとは。想像以上だ。これで終わると思うなよ!!……」
そう言い残しコガネは爆発。爆風にによってソウジンノキシのマントだけが華麗に靡いた。
「ウソでしょ……アニキィ!!」
まさかの結果に絶叫するシロガネ。
妹の叫びに応えるように爆発した筈のコガネの体は黄金色に輝き、その光はどんどんと巨大化していく。
「なんだ!?」
やがてその黄金色の輝きは巨大な魔龍に姿を変えた。
魔龍は雄叫びと共に町を襲い彼らを襲う。
「アニキ…やる気なのね」
「巨大化とかそんなのありかよ!!」
「あの姿は!!……」
「バジェリー!アレはどういうことだ。説明しろ!」
コガネ達の戦いを遠くから見ていたバジェリー達。特にジョロキウスは敬愛する大魔神と魔龍となったコガネの姿に驚きと不満を隠せない。
「アレは魔神化だ。我ら魔獣が行き着く最終形態」
「ならば何故魔獣でも無い人魔がそんな姿になっているのだ!」
「それは…奴らが大魔神様の力を受け入れ人魔となったからであろう」
「なんだとっ!!……」
「アイツらマジで一緒に戦ってるのか」
「それだけじゃありませんわバディ。互いにに助け合うことで精霊武器最大限の力を使いこなしている」
「へぇー。やっぱ両思いは最強ってことか」
「ですが両思いなら私達も負けてはいませんわバディ」
「ああ。俺達が愛で負けてたまるかよ」
立ち上がった彈は暴れるコガネの元へ行こうとしていたシロガネを撃ち抜く。
「……まだ諦めてなかったの」
「せっかく俺の後輩が頑張ってんだ。邪魔すんなよ」
「アンタには興味ないのよ。私にはやるべきことがある」
無視しようとするシロガネを複数の銃撃が無理やり釘づけにする。
「俺は興味があんだよ。いいから黙ってこっち見てろ」
「……」
「コイツ相手ならお前1人で戦った方がいい」
すると分身していたソウジンノキシは姿を消し1つに戻る。
「だけどザンバ。こんな巨大な怪物相手にどう戦えって言うんだ。俺達が初めて戦ったあのデカ鳥とは比べ物にならない大きさだぞ」
「お前が言ったんだぜ。オレ達は1人じゃないって。オレを信じて2本の剣を天に掲げろ!」
「そうだったな…分かった」
ソウジンノキシはザンバに言われたまま2本の剣を天へと掲げる。
すると真っ青に輝く青空ど真ん中に真っ赤な紋章が浮かび上がる。
雄叫びと共に紋章の中から現れたのは真っ赤にキラキラと輝く鎧を纏った一体の紅き竜だった。
「目に目を。龍には竜を。紹介するぜ相棒!コイツの名前は紅き龍<コウリュウ>。オレ達の新しい仲間だ!!」
コウリュウは雄叫びをあげながらソウジンノキシ達の元へ降りてくる。
「!!……」
コウリュウはソウジンノキシを見つめ自信満々な様子で頷く。
「乗れってさ」
「ザンバ、分かるのかコイツの気持ちが」
「ああ。コウリュウはオレの兄弟なみたいなものだからな。あと相棒、名前で呼んでやれ」
「そうだな。コウリュウ、オレに力を貸してくれるか?」
彼らの想いに応えるようにコウリュウの身を包む紅き鎧が更にキラキラと輝きだす。
「よし、みんなでやるぞ!!」
ソウジンノキシが背中に乗るとコウリュウは魔龍目指して勢いよく飛び立つ。
「エイト。奴に近づくぜ!」
「近くで見れば見るほどでっけえな…」
間髪入れない魔龍の攻撃を避けながらコウリュウは魔龍へと近づいていく。
「集中しろ。このデカブツ相手に長期戦は不利だ。一気に蹴りをつけるぞ!!」
「ああ。隙がないなら作ればいい。ぶち壊しててでもな!!」
「決めるぜ。全員息を合わせろ超必殺技だ!!」
――――SUPERFINSH☆MOVE――――
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」
コウリュウ、ザンバ、ソウジンノキシ、3つの心が一つになった時彼らは一つの眩き光を放ちながら魔龍を一撃で貫く。
魔龍は断末魔を上げると金色の煙に包まれながら消滅した。
まるで空からキラキラと舞う金粉が彼らの勝利を祝うようだった。
「嘘でしょ……」
コガネの敗北に下を向くシロガネ。
「次はお前だ。プリンセス」
「……黙れ人間」
鋭い目つきで彈を睨みつけると大鎌を振り翳す。
「鎧煌」
白銀に輝いた大鎌はシロガネの体を白銀の鎧に包み込んだ。
「バディ。彼女からとんでもない気配を感じますわ」
「ああ。俺も感じてる。これが彼女の本気か……」
凄まじいシロガネの殺気に思わず一歩引きながら、銃を構える。
「……!!」
「来る!」
尋常でもないシロガネの狂気に鎧を纏わないまま身構えるしかない彈。
だがシロガネは攻撃をすることなく周囲を白銀の輝きで照らし姿を消した。
「逃げた?……」
「周囲にそれらしい気配は察知できませんわ」
「だけどなんで……」
本気の姿を見せたにも関わらず手負いの俺を見逃した。
兄を倒されたことで一時的に撤退を選んだのか。それとももっと別の理由があるのか。
今の俺達にはそれを想像することしか出来なかった。
バジェリー達の元へと戻ってきたシロガネ。
彼女の目の前には人間の形を保ったまま亡骸となったコガネの姿が。
「アニキ……」
冷たくなったコガネの手を優しく握る。
「だけどしょうがないか」
シロガネは握った手を離し冷たく言い放つ。
「バジェリー。アンタに頼みたい事がある」
「……またか。お前達の頼み事を聞くのはあの時以来だな」
「私はあの時決めたのよ。目的を果たすためなら何でもするって。使える物なら何でも使うわ。それが実の兄だとしてもね」
「……いいだろう。要件を聞こう」
冷たくなったコガネを見つめながらシロガネは冷たく言い放った。
「たぁっ!!」
「いいぞエイト。その調子だ!!」
「またやってるし…」
「いいじゃないか。勝手にやらせとけ」
いつものように公園でザンバと共に周りの視線を気にせず堂々と稽古する瑛人達。
それを遠くから他人のふりして見守る彈と翼。
「それにしてもあんな方法で限界を超えちゃうなんてね」
「しかも練習もせずに土壇場でな」
「もしかしてアイツって天才?」
「いや、ただのバカだろ」
「あ、」
すると無我夢中で稽古する瑛人達の元に青い制服を着た複数の男達が近付いてくる。
「……エイト。誰か来るぞ」
「え?」
ザンバに言われ振り返ると、険しい表情でこちらに向かってくるお巡りさんの姿が見える。
「ヤバっ…」
「どうしたんだ?」
「逃げるぞザンバ。奴らに捕まったら魔獣より厄介だ!!」
瑛人達は逃げるように公園を後にする。
それを見たお巡りさん達も慌てて追いかける。
「な?」
「バカ……」
それを見て思わず笑う彈と呆れて何も言えない翼であった。
何はともあれ相棒との絆を深め新たな力を手にした瑛人達。
己を信じ互いを信じる。気持ちを通じ合わせ背中を守り合う彼らの戦いはまだ続く。
――――――――――
女は男に癒しを求め、男は女にただ幸せを望む。
そんな夢みたいな男を私は1人だけ知っている。
次回 推して推されて愛されて
人は見た目が8割。だけど2割の心で恋をする。
ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。
よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!
次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。
勝手に祈ってお待ちしております。