PART1
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貴重なお時間にお邪魔します……
あらすじ
アカキキシが放った無謀な一撃はコガネにも届かないまま相棒を傷つけた。
コガネへのリベンジを誓う瑛人だったが戦う術を失った今何もすることはできなかった。
そんな時、商店街の広場でやっていたヒーローショーに出会って…
「これが俺とお前の差だ」
首元に突きつけられた刃を振り払う。
「もう諦めろ。お前の刃が2度と届く事はない」
「ふざけるなぁぁ!!」
ダメだ。落ち着かないと。落ち着かないと勝てるものも勝てない。
頭では分かってる。
だとしても感情と行動が言うことを聞こうとしない。
「今のままじゃ勝てない。…だったらこの場で更に強くなるしかないだろうが!!黙って力貸せ!」
ザンバの意思とは別に刀身が紅く輝き、アカキキシの体を真っ赤な炎が包み込む。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「(まさかこの土壇場で無理矢理オレのリミッターを解除するつもりか!?こんなの無茶に決まってる)よせエイト!」
瑛人の感情に共鳴するように炎は激しく燃えあがり止まるところ知らない。
「哀れな奴め……」
「はあああああああっ!!」
「……ダメだエイト。止めるんだ。やめろォォォォ!!」
アカキキシの身に纏う炎は激しく燃えあがり焼き焦がす。
「うわぁァァォォォォ!!」
アカキキシが放った死にもの狂いの1発は大剣一本で軽々と受け止められコガネには届かなかった。
「無茶と無謀。そんな意味も分からない奴にこれ以上興味はない」
――――GOLDEN★END――――
黄金に輝く大剣は金色の衝撃と共にアカキキシを切り捨てた。
反動で吹き飛ばされたアカキキシは鎧が消滅し瑛人の姿へと戻ってしまう。
「お前は諦められなかったんじゃない。諦め方を知らなかっただけだったようだな……」
全身火傷を負った瑛人は残された僅かな力を振り絞りコガネを睨みつけたまま意識を失った。
「バディ!」
「分かってる!」
「ねぇ、私を相手にして余所見とは随分余裕なのね」
「まぁな……」
急いで倒れた瑛人の元へ駆けつけたいクロキキシだが
シロガネに邪魔されて思うようにいかない。
ヤベェ…。このままじゃ俺達2人で共倒れだ。ってかこの女、全く底が見えねぇ。しかもあっちのアニキと違ってこっちはまだ生身のまま。それでこの強さだ。正直、アニキよりこの子の方が強いんじゃないか?……。
「どうしたの考えごと?やっぱり余裕なのね?」
クロキキシの連射も相手にせずどんどんと距離を近づけていくシロガネ。
「いいやあんまりにも君の顔が可愛くて、つい見惚れてただけさ」
「そう?だけど残念ね。私、アンタみたいなキザな男タイプじゃないのよ!」
大鎌が円を描きクロキキシの首を掻っ切ろうとした瞬間、当てた1発の銃弾が鎌の軌道を変えると今度はクロキキシが銃口を突きつける。
「悪いがそういう子を振り向かせるのは俺の得意技なんだ」
「キモ……」
躊躇なく引き金を引こうとすると、突然入れ替わるように目の前にコガネが現れる。
「妹には触れさせん」
「っ!男は守備範囲外なんだけどなお兄さん!」
引き金は引かれコガネの体を射止めるが銃弾は潰れ貫く事なく地面へと落ちた。
「マジかよ…ゼロ距離でこれか?……」
「バディ。この男と私達では相性が最悪ですわ。撤退を!」
「逃がしてくれるならな……」
「なら逃げればいい」
「は?」
一か八かで詰め寄った末にこちらに逃げ場は無く絶対絶滅のこの状況。あっちは好調で大チャンス。普通に考えて逃すわけがない。
だからこそ、この男の言葉は信じられない。
「本気で言ってるのか?」
「ああ」
「……信じられないんだけど?」
「好きにしろ。お前が信じたいように信じればいい」
確かにこの状況でならいつでも反撃は仕掛けられた筈だ。
罠としてもここは信じるしかないか……。
クロキキシは銃を下ろし距離を取る。
「……フッ」
するとコガネも鎧を消滅させる。
「一ついいか」
「……」
「なんで俺達を逃すんだ?」
「お前はともかくそこに倒れている男とは戦う理由が無くなった。それだけだ」
そしてコガネはシロガネと共に姿を消した。
ーーーーーーーーー
「アンタ何考えてんのよ!!自分の相棒を殺したいわけ!?」
ボロボロになり意識を失ったザンバを手に瑛人に怒りをぶつける翼。
「……力が足りない」
「あ?」
「今のままじゃ力が足りないんだ!力が無きゃアイツは倒せない!!」
話を聞き入れない瑛人は鬼の形相で翼に詰め寄る。
「力があればいいわけ?それで自分の相棒傷つけて自分も怪我してたら世話ないのよ!」
負けじと翼は瑛人を跳ね除ける。
「…だったらそうならないように全てのリミッターを解除してくれ」
「悪いけどそれは無理」
「なんでだ!?」
「今の状態で全てのリミッターを解除してもアンタはそれを使いこなせない」
「俺なら大丈夫だ!!俺を信じろ!!」
「信じられるわけないでしょ!」
「っ……」
唇を噛み納得のいかない表情を見せる瑛人。
一足早く冷静になった翼はザンバを整備しながら話し続ける。
「…仮に私が今のアンタを信じたとしも結果は変わらない。無理よ」
「なんで……」
「アンタが無茶したせいでサンバの全力にもう刀身が耐えられない。もはやアンタだけの問題じゃないのよ」
「くそ……」
「器から溢れる力は使えない。つまり現状。ザンバは治ってもこれ以上の強化は不可能ってこと。何か他の方法を考えないと…」
膝から崩れ落ち涙を浮かべる瑛人。
「反省するなら他所でやってくれる?邪魔」
縞模様のハンカチを瑛人に投げつけると翼は黙々とやるべき事に集中する。
風が吹き荒れる大雨の中、俺は無心で木刀を振り続けることしかできなかった。
足りなかったのはザンバじゃない。弱いのは俺だ。俺のせいでザンバを傷つけた。
だから負けたんだ。
「たぁぁぁ!!」
公園の遊具に結び付けられた丸太を相手に必死で戦う。
だが剣術の知識も戦いの心得も無い俺は、ただただ直感的に剣を振り回すことしか出来ない。
吹き荒れた風に煽られた丸太が俺の頭に直撃する。
「ザンバがいなきゃ俺は丸太にも勝てないのか……」
大雨に打たれながら地面に倒れる瑛人。自身の弱さと不甲斐なさに絶望した。
「ねぇアニキ」
「どうしたシロガネ」
「さっきの赤い色者。生かしといて良かったの?」
「アイツの事が気になるのか?」
「それはこっちのセリフ。気になってるのはアニキでしょ」
いつものアニキならあそこで逃す事はしなかった筈。
力の差は歴然だった。いつでも勝負はつけられた。
なのにそんな気が無かったみたいに見えて、それが私には気に食わなかった。
「もう興味はない。安心しろ」
「ふーん。だったらいいけど。今度こそはトドメを刺したほうがいいと思うよ」
「…どうしてそう思う?」
「私の直感。ああいう奴は早めに始末しとかないと厄介な気がする」
「ほぉー、お前がそこまで言うとはな。やっぱりアイツの事が気になってるのか?」
「…茶化さないでよ。アニキは本当にアイツの事どう思ってるわけ?」
雰囲気が変わるシロガネ。
多分アニキはアイツに何かを期待してる。なんでそこまでアイツに肩入れするの?
「心配するな。お前が思うようにはならない。だがもしも奴が……いや、それはないな」
微かに笑ったコガネの様子にシロガネは不服そうに微笑んだ。
ーーーーーーーー
雨が止んだその日の午後。
商店街の道を下を向いて歩く俺の耳に子供達の「がんばれー!!!」て声が聞こえてくる。
俺への声援じゃないと分かっていながらも、思わず顔を上げる。
すると目の前には大勢の子供達に応援されるヒーローの姿だった。
「アレって……ジャバンだよな?」
目の前にいたヒーローは俺の子供時代テレビの前で夢中になって応援していた宇宙将軍ジャバンだった。
どうやら今日は町主催でヒーローショーが行われていたらしく、多くの子供や懐かしむ大人達がジャバンの勇姿を見にきていた。
「すげぇ……」
ジャバンの動きは俺の頭に刻まれたテレビでの活躍と全く同じもので驚愕した。ショーだとは思えないほどキレのいいアクション。爆発もCGも無いけれど動きだけでそれが見える。見れば見るほどそんな気にさせる凄いアクションだった。
本物のヒーローとして戦う俺が情けなくなるくらい目の前にはヒーローがいたんだ。
「やっぱり本物は違うよな〜」
すると全身ジャバングッズで身を揃えたガチ勢であろうファンの声が聞こえてくる。
「だけどまさかこの時代にジャバンが生で見れるとは驚きだよな」
「ああ。しかも中身はテレビシリーズと同じ中岩さんらしいぜ」
「なっ、マジかよ!?あのレジェンドアクターとも呼ばれる中岩さんが!?」
「バカっ!声が大きいんだよ!俺達大きなお友達が小さなもお友達の夢壊してどうすんだ!」
「わ、悪い……」
そうか。演じてる人が同じだったからテレビと同じだと思ったんだ。
これが本物……。
俺はジャバンの勇姿をしかと見届けた。
そしてショーが終わった舞台裏。
「荷物貰います」
「ありがとう」
帰り支度を済ませた演者達が続々とバスに乗り込み帰ろうとしていると、そこに待ち伏せしていた瑛人が飛び込んでくる。
「あ、あの!!」
「?」
「俺を貴方の弟子にしてください!!」
「は!?」
帰ろうとしている中岩の前に突然現れた瑛人が頭を下げ弟子入りを懇願する。
「ちょっと、なんだね君は!」
「困るんだよこういうのは……」
周りのスタッフや演者仲間達が瑛人を排除しようとするが、頑として動こうとはしない。
「お願いします!今の俺には貴方の力が必要なんです!」
もしも俺自身が憧れたジャバンのように自在に動く事が出来れば、ザンバへの負担も少なく出来るはず。
これ以上サンバが無理なら俺自身が強くなるしかない。
「…………君面白いね!」
「え!?」
中岩の声に思わず周りのスタッフや仲間達も驚きを隠せない。
「本気ならこの後の稽古一緒に付き合ってくかい?」
「はい!お願いします!」
願ってもない中岩の提案に手を握り喜ぶ瑛人だった。
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