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ヴァリ・カヴァリエーレ〜色彩ノ騎士タチヘ〜  作者: 春風邪 日陰
第五話 ギラギラとキラキラ
12/20

PART1

閲覧感謝です!

貴重なお時間にお邪魔します……


あらすじ

魔獣の反応を察知しやってきた瑛人達の前に現れた謎の男女二人組。人間にしか見えない彼等だったが、真の正体はマゾークに雇われた人魔と名乗る人智を超えた存在だった。


「たぁっ!!」


公園の遊具にぶら下がった丸太を相手にザンバの指示の元、木刀片手に剣術のトレーニングに汗を流す瑛人。


「まだ浅い!もっと深く切り込め!」


「っ!」


「そうだ、その調子で切って切って切りまくれ!」


「アンタ達何してんのよ!」


怒る翼の声が聞こえてトレーニングが中断する。


「何って…特訓」


「オレを使いこなすためにはイメージだけじゃなくて実力も必要だからな」


「それはいいんだけどさ…そういうのって普通人目のつかない山とか森の中でこっそりとやるもんでしょ?なんでアンタはこんな真っ昼間から公園で木刀振り回してんのよ!」


「……え、」


「何ヒーローが子供泣かしてんのよ!バカぁ!」


今まで気にしてこなかったが公園に遊びに来ていた小さな子供達は大人に遊具を占領され泣き喚き、一緒に来た親達は俺達を軽蔑した目でこちらを睨んでいる。


「ヤバっ。集中してて気づかなかった……」


「いいから早く片付けて!」


「分かった」


俺は急いで後片付けを済ませ子供達に謝罪をすると大人達の冷ややかな目に耐えられず逃げるようにそこを後にした。


「もう…アンタのせいでこっちまで親に睨まれたじゃない」


「悪かったよ。ごめん」


「はぁ。でもなんで急に特訓?そういうタイプじゃないでしょ」


「……超えなきゃいけない目標が出来たんだ」


前回の戦いで俺は背負う者の強さを見た。でもそれを背負うのは1人じゃ重すぎる。今の俺じゃ手伝うことすらままならない。

だからもっと強くならなきゃ。


「目標ね。悔しかったのね……」


「ああ。俺に少しでも力があればこの前の結果は変わってたかもしれない。だから、出来ることをやるって決めたんだ。自分の為にも仲間の為にも」


「ふーん……。新人のくせにカッコつけちゃって。いいわ。じゃあその心意気に免じて今日は特別に美味しい物奢ってあげる」


「え!マジで!?」


「うん。特別よ」


翼と会ってから一か月程経つけれどこんな事は初めてだ。


「でも、なんで急に?」


「私ね頑張ってる人に頑張れって言うのちょっと嫌なのよ。だからその代わり」


「……」


「だから強くなりなさいよ。私もサポートしてあげるから」


翼が背中を叩き瑛人を鼓舞する。


「…俺、焼肉食べたい!」


「贅沢言うな新人が!!」



翼に髪の毛を引っ張られながら連れて来られたのは焼肉屋。ではなく瑛人が初めてこの町に来た時にもよった惣菜屋だった。


「いらっしゃい!!」


「こんにちはおじさん」


「翼ちゃんいつもありがとうね!…あ、隣にいるのはあの時の兄ちゃんじゃないか。無事だったんだね」


「ええ。まぁ…」


乗り気じゃない瑛人は俯きながら目の前に並べられた惣菜を吟味している。


「おじさん。メンチカツ2つ」


「あいよ!もうすぐで揚げたてが出来るからちょっと待ってな」


1分ほど待っていると揚げたてのメンチカツを食べやすいように袋に入れて手渡ししてくれる。


「お待たせ。メンチカツね!」


「ありがとうございます。じゃあこれ」


翼はメンチカツを受け取るのと入れ違いに小銭を渡し会計を済ませる。


「丁度ね。ありがとう!」


「ほら食べな。美味しいから」


翼はメンチカツ一個を瑛人に手渡す。


「え、メンチカツ?どうせ食べるならあの1番高いフライドチキンが良かったな…」


「いいから黙って食べなさい」


翼の圧力でこれ以上文句も言えず渋々食べたくもなかったメンチカツにかぶりつく。


「!!」


程よい油のテカリとサクッと心地よい音に中から溢れ出る肉汁。具材の甘みと旨みが最高の味わいを作り出している。


これこそ究極。パーフェクトーーー!!


「なんだコレ……めっちゃ美味い!!え、これ本当にメンチカツかよ?超美味いんだけど!」


「だから言ったでしょ。美味しいって」


してやったりと笑顔で笑う翼。


「いやこれは想像以上だ。今まで1番食べたメンチカツの中で1番だ!」


「ありがとうね兄ちゃん!そんな褒めてくれると俺も嬉しいよ!」


「おじさん天才!」


親指を突き出しこれ以上の感謝を伝える瑛人。

最高のメンチカツを片手にこんな幸せが長く続けばいいのに。だなんて思っていると、やはりそうはいかなかった。

魔獣の出現を知らせる警報が商店街に鳴り響いた。


「!!」


「またか。最近やけに多いね……」


「瑛人。どうやらこの近くみたいよ」


「分かった。…おじさんメンチカツありがとう。めっちゃ美味しかった!」


「それは嬉しいけど、こんな時にどこ行くつもりなんだい?」


「大丈夫。腹ごなしの運動みたいなものですから。必ずまた来ます!」


何の確証もない約束を交わし瑛人達は魔獣の元へ向かったのであった……。



「ここだよな?何もいないけど」


「おかしいわね。ここで合ってる筈なんだけど」


「前から思ってたんだけどさ、あの警報ってさどういう仕組みで魔獣の出現を確認してるんだ?」


「この町には至る所に魔獣に反応するセンサーみたいものが沢山仕掛けられてるのよ。それに魔獣が発する独特な気配を察知すると起動して警報が鳴る仕組みになってるはずなんだけど……」


周辺をざっと見渡してみたがそれらしいものは見当たらない。


「どうしていないのかしら」


「もしかして故障?」


「いやそんな筈はないと思うけど…そうだ。ザンバは何か感じる?」


「いいや特にこれといった気配は……ん?」


「どうしたサンバ」


「いつもとは何か少し違う。そんな気がする」


「は?」


珍しく歯切れの悪い発言をするザンバ。

すると遅れて彈達もやって来る。


「待たせたな2人とも」


「あら、今日は珍しくちゃんと来たのね」


「偶にはな。それに丁度さっきプリンセスとのデートが終わったんだ。だからついででもある」


「私の感心返してちょうだい」


「バディ」


何かを察知したレディが彈に警告する。


「どうした?」


「警戒を。何か嫌な気配がしますわ」


「魔獣か?」


「いえ、それとはまた違うまた別の何かですわ」


「別の何かって何だよ…」


一同疑問抱きながら改めて周囲を確認するがやはり怪しいものは見当たらない。


「やっぱり気のせいか」


「……」


何か不穏な空気を感じながらも何も見つけることが出来ないまま手をこまねいていると、目の前から1組の男女がこちらにやって来る。

瑛人達は気にせず周囲を確認し魔獣の姿を探す。


「エイトッ!!」


「バディ!!」


荒げる2人の声が瑛人達を驚かせる。


「おっ、ど、どうしたんだよ?いきなり…」


「ああ、レディらしくない」


「間違いない奴らだ!」


「あ?」


「バディ!目の前の2人から厄介な気配を感じますわ!」


「なに?…」


すると俺達の目の前で男女が足を止める。


「ザンバ。あの2人は人間だぞ。魔獣じゃない」


「そうだ。あの2人は魔獣じゃない。別の恐ろしい何かだ!なんなんだこの強大な殺気は……」


「ええ。今まで私達が相手してきた魔獣とは比べものになりませんわ!最大級の警戒をバディ!」


「マジかよ。そんなにか……」


2人は翼を後ろに下げ武器を構える。


「お前達何者だ!人間じゃないのか!?」


「少なくてもカップルには見えないけどな」


「……俺達兄弟をそんな目で見ないでくれ。それに今の俺たちを人間だなんて下等な生物と一緒にしないで欲しい」


「そうよ。私達は魔獣でも無ければ人でもない。人間を捨て魔を受け入れた。そして私達は変わったの。<人魔>へと」


「人魔?……」


人魔と名乗る2人も武器を構える。

男は大剣を持ち女は背丈程の大鎌を軽々と持った。

その瞬間、ザンバやレディだけではなく俺達まで奴らの悍ましい気配を身に感じた。

身体中全身の毛穴は開き鳥肌が立つ。

これが恐怖なんだと身を持って知ることとなった。


「コイツらなんなんだ……」


「ヤバいな……油断してたら一瞬でやられるぞ。気を引き締めろ後輩」


「そんな固くならないでよ2人とも。まだ自己紹介も済んでないんだからさ。私の名前はシロガネ。そしてこっちにいるのがアニキのコガネ」


「お前達色者を闇へと葬るのものの名だ。忘れるな」


「そういうこと。これからアンタ達は私達と戦って負ける。そして死ぬのよ」


余裕な様子で笑みを浮かべる2人。一見隙だらけに見える状況だけど何かおかしい。まるでこっちから仕掛けて来るのを待ってるみたいだ。


「どうする後輩?アイツら俺達を誘ってるみたいだけど」


「そういう先輩は女性の誘いを断るんですか?」


「いいや無いね」


「そもそも今の俺達に逃げる選択なんて無い。だったらやるしかないでしょ」


「そりゃそうだ!」


「奴らは強い。なら舐められてる今がチャンスだ。2人でギャフンと言わせてやろう!」


「いいねそれ賛成!」


彈が手で合図して翼を安全な場所へと逃げさせる。


「行くぞザンバ」


「ああ」


「準備はいいな。レディ?」


「オーケーよ。バディ」


「「鎧染!!」」


二つの精霊武器が同時に輝き、瑛人はアカキキシに彈クロキキシへと姿を変えた。


「噂には聞いてたけど思ったより強そうじゃん」


「俺達の本気を出せる相手だといいのだがな」


クロキキシが放った銃弾はキラキラと白銀に輝く大鎌で生身のまま簡単に弾き返した。


「ほらね。この程度の攻撃じゃ纏う必要もないもの」


「やっぱ舐められてんなぁ俺達……」


「ハァッ!!」


今度はアカキキシがコガネに飛びかかるが一歩も動かないまま大剣で防がれた。


「ぐっ!!」


「少々腕の立つ奴だと聞いて期待していたのだが、これはガッカリだ」


何も出来ないまま簡単に吹き飛ばされた。


「っ、まだだ!!」


直撃が駄目なら遠距離でと得意の飛び出す斬撃で奴を狙うが。


「駄目だな」


直撃する前に大剣によって斬撃ごと切られてしまう。


「マジかよ……」


「エイト!今度はあっちから来るぞ!」


大剣を引き摺る事なく持ち上げながらこちらへ猛スピードで突進してくるコガネ。

振り落とされる大剣。それに必死に食いつくアカキキシ。コガネの攻撃をかわしてこちらが踏み込めば奴はそれを簡単に受け止め倍の力で返される。

そして圧倒的なパワーと実力の差を見せつけられるとなす術も無いまま首元に剣を突きつけられる。


「ッ……!」


「これで終わりか?」


「まだだ。まだ終わってない」


「どうしてそんな事がまだ言える?俺がその気になれば今にでもお前は死ぬんだぞ」


「まだ死んでないんだよ。負けてたまるかよ!」


「ほぉ……」


突然アカキキシは強烈な一撃で蹴り飛ばされる。


「だったらそれを証明してみせろ」


「な、に……」


「これでもまだ俺に勝てると言うのなら、明日もう一度戦ってやる」


コガネは大剣を消滅させ完全に戦闘体制を解く。


「逃げたいなら逃げればいい。死にたいなら死なせてやる。命を選ぶか、それとも色者としての使命を選ぶか。全てはお前が決めろ」


クロキキシとの戦いを片手間のように済ませるとシロガネも直ぐにコガネの元へとやって来る。


「ねぇ、アニキ。やっぱりあっちも思ったより大したことなかったわ」


「帰るぞシロガネ」


「え、でもいいの?あの2人放っといて?」


「構わん。たった1日寿命を延ばしたところで運命は変えられないからな」


「それもそうだね!…じゃあ2人ともあと1日の人生後悔ないようにね。バイバ〜イ!!」


そして2人の姿は消えた。


「くそッ……」


残った俺達は敗北の味を噛み締めた。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!



次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。

勝手に祈ってお待ちしております。

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