PART2
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「あの時、どうして邪魔をしたっ!!」
工場に戻ってきて早々瑛人に掴みかかる彈。
「お前が邪魔をしていなければ今頃俺が奴を!」
「だけど死んでたわ」
みかねた翼が間に割り込んでくる。
「奴を倒せるなら、俺の命くらいくれてやる!」
「バカ言ってんじゃないわよ!」
翼は彈の頬を思いっきり叩く。
「!……」
「少しは周りを見なさいよ。どうして私達がアンタを助けたのか。それが分からないとは言わせないわよ」
「……俺がいなくなっても代わりはいる。なら1人の命で厄介な敵を倒した方が後々効率がいいだろ」
「本気でそう思ってるの?……」
「………ッ」
彈は最後に舌打ちするとそのまま黙って去って行った。
「一体どうしたんだ…。アイツはあんな奴だったのか?」
「…瑛人。梓さんの店にあるマリーゴールド見たことある?」
「え、ああ。でもそれがどうしたんだ?」
様子のおかしい彈を心配する瑛人に翼が知る彈の秘密を打ち明け始めた。
「あの花ね、彈の婚約者が好きだった花なの」
「へぇ…あ、その人って店にも来たことある?あるなら俺見たことあるかも。どの女だ?」
「あるわけ無いわ。だって彼女は魔獣に殺されたから」
「え……」
興味津々に聞いていた瑛人も思わず絶句してしまう。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…魔獣は人を襲っても殺しはしない筈なんじゃ」
「確かに奴らの目的はあくまでも人々の恐怖や悲しみなどの負の感情を集めること。殺してしまったら意味がない」
「だったら」
「だけど例外もある……例えば魔獣が襲った建物に人が残っていたとかね」
「おいそれって……」
俺は何か勘違いをしていたのかもしれない。心のどこかで結局は殺さないから絶対大丈夫だって思いこんでいた。そんな絶対あるわけないのに……。
「そうよ。直接的には殺さなくても間接的には殺してる。それなら生き残った人間からは絶大な負の感情が手に入るもの。そっちの方が奴らにとって直接手をかけるより効率よく集められるもの」
「そんな……」
「彈の婚約者は2年前の今日。ジョロキウスが町を襲い逃げ遅れて倒壊した建物の下敷きになった。その頃彼はまだ色者駆け出しで何も出来なかった。救うことも仇を打つことも……」
だから彈はあんなに必死だったのか。
明かされた彈の秘密に胸がギュッと苦しくなる。
「それから彈は人が変わったみたいに女遊びをするようになった。前までじゃそんなの考えられなかったのにね」
「それだけ彈にとって彼女の存在は人を変えてしまうほど大きかった…」
「瑛人。変わったアイツを止められるのはアンタしかいない」
「……」
「ねぇ彈」
「ん?」
「あの花綺麗だと思わない?」
「そうか?俺はよっぽどお前の方が綺麗だと思うけどなぁ」
「ちょっと!…そういうことを真顔で言わないでよね!?」
「悪い悪いついな。でも本気だぜ」
「もう……」
「だけどお前が望むなら」
そう言って俺は彼女にマリーゴールドを手渡した。
「いいの?」
「ああ。お前の次に綺麗な花だ。受け取ってくれ」
「ありがと。…珍しいね。彈が私に何かくれるなんて」
「たまにはな。でもこれからは違う」
「え?」
「毎年この日。お前の周りをこの2番目に美しい花で埋め尽くしてやる。俺が好きでたまらない1番綺麗な君の為に」
俺は勢いに任せて周りの目も気にせず膝をつきいつかの為に用意していた指輪を渡そうとする。
「…もしかしてさっきのプロポーズ?」
「ああ。…え、なんかおかしかった?え、え、どうしようか」
まさかの指摘に俺はしどろもどろになり頭の中が真っ白になってしまった。
「うふふ。冗談」
「え、」
「よろしくお願いします」
「マジで?…」
「マジで」
「よっしゃあ!!ヨシっ!!」
「ちょっと、喜びすぎ」
誰かもしれないたまたま通りすがった人達からも祝われたあの日。
俺は忘れられなかった。
「……」
夜風に当たりながら物思いに耽る彈。
「バディ」
「ん?…」
「探したぜ。先輩」
真剣な面持ちで瑛人がこちらに近づいてくる。
「何しにきた」
「話は翼から聞いた。丁度2年前アンタに何があったのか」
「そう。で、何の用なんだ?」
「俺はアンタを助けたい」
「あ?」
「俺達2人で仇を打つんだ」
その言葉を聞いていきなり瑛人の胸ぐらを掴む彈。
「バディ!…」
「話聞いたくらいで分かった気になるなよ新人が。助けたいと思うならお前は何もするな!アイツは俺1人で十分だ。お前の力は借りない…」
そう言って胸ぐらを離す。
「分かってないのはアンタの方だ!」
すると今度は瑛人が彈の胸ぐらを掴む。
「なっ…」
「俺とアンタじゃ戦う為の思いも理由も全部違う。だけど、目的は一緒だ。力を貸して何が悪い。仲間を助けようとして何がいけない!アンタは俺の先輩で…仲間だろ」
「…………俺は」
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