プロローグ
「総力戦」
それが文字通り全力と全力の殴り合いだというのなら。俺達に果たして「あれ」を倒す術はあるのだろうかーーーー
ーー魔法暦1202年ーー
人類滅亡まで 「あと少し」
死体の連なる戦場で響くのは、部隊長の指揮と剣戟、砲弾の空を切る音。
「後衛魔法師団!前線の魔法戦士達にありったけの支援魔法を!ここで仕掛けるぞ!」
魔法師団が事前に決められた作戦通りにバフを掛けるもの、シールドを付与するものなど、三者三様に己の魔力限界を超えたオーバーロードもいとわずに魔法を掛ける。色とりどりの魔法陣が光る中、俺達前衛の魔法戦士もそれぞれの流派の奥義を繰り出すため、魔力を練る。
しかし
ここは戦場である。そして、俺達が相対するは、人類史上最悪の「災害」である。魔法師が、そして魔法剣士達が見せた隙を「あれ」が見落とすはずもなく。
「なんだ!?一体何が起きている!あれが最終段階ではなかったのか!」
それまで、「あれ」は人にドラゴンを無理やり合わせたかのような不格好な造形をしていた。だが今は違う。もう枯渇が近いはずのマナをあたりから吸い上げ、轟音とともにその姿形を変えていく。気づけば完全な人型に戻り。肩から砲身をはやし、その皮膚を見る見る内に強固な「壁」へと変えていく。俺達が呆気にとられている間に「あれ」はみるみる内に姿形を変え、巨大化していく。その形はまるでーーー
「要...さ」
そう呟いたのは、一体誰だったろうか。隣のセラかもしれない。後ろのユウキだったかもしれない。俺がそれを確かめる間もなく、要塞から数えるのも億劫な量の砲弾とビームが発射される。考えるより先に体が動いていた
手加減などしてられない。支援魔法も中途半端な中、俺は迎撃に向かう。全身に炎を纏い、飛来する砲弾を斬る、斬る、斬る。
だが、俺はすぐに己の失敗に気づくこととなる。俺の得意属性は炎だ。それしか使えないと言って良い。そして「あれ」は学習する。すぐさま要塞は攻撃手段を実態を伴わず、炎の影響を受けないビームへと切り替えてきた。
「どけ!お前がここで出てどうする!?」
割り込んできた声の主にビームの処理を任せると、ようやく戦場全体を見回す。俺の目に飛び込んできたのは、後衛魔法師団がいた「はず」の場所に横たわる、大量の死体だった。絶句。あまりの現状に、言葉も出てこない。だからだろうか、俺は飛んでくる魔法に気が付かなかった。
氷系統魔法最上位ムスペルヘイム
瞬く間に俺を飲み込み、戦闘不能へと追い込んだーーーー
ーー3時間後ーー
ようやく魔法から抜け出した俺の目に飛び込んできたのは、死体の海に浮かぶ黒鉄の城だった。
もう、守る者もいない。守る物もない。何もできなかった自分を呪い殺したくなるが、今は現状をどうにかしなければ。
今は亡き彼らの努力か、要塞はもう元の形を保つのがやっとと言った具合だった。俺が最後に見た形態から何段階進化したのか、歩兵を吐き出し、戦闘機までもが周囲を警戒している。
この災害を終わらせる。それが何も出来なかった自分の、彼らにできる唯一の贖罪だ。
■■■■最上位魔法 ■■
クリムゾンレッドに輝く魔法陣が目の前に出現する。とてつもない温度によりプラズマ化した蒼炎が、瞬く間に要塞を飲み込む。
刹那、人型に戻った「災厄」が俺の眼の前に現れる。
■■■■■■流 ■■
「おおおッ」
裂帛の気合とともに己の剣で斬りかかる。対する「やつ」は拳。キィンという独特の音とともに互いの得物が衝突する。魔法師団長が健在の頃なら、泡を吹いて倒れるであろう魔力のぶつかりあい。
ものすごい衝撃波とともに、更地を耕してゆく。
「■■■■ねンもイきテ、それダケのつヨサをテニイレ、おまエはサラになにヲのゾム?」
「戦闘中に私語か!?ずいぶん余裕じゃねぇか!」
■■■■■■流 ■■
「今の」俺に出せる全力で持って得物を叩きつける。対する「やつ」は腕をクロスさせてガード。王国最強としての意地か、あるいは火事場の馬鹿力か、「やつ」の両腕を破壊し、吹き飛ばすことに成功する。
「一体どこで、間違えたかな」
俺と人類史上最悪の「災害」しかいない戦場で俺は誰に聞かせるでもなく独りごちる。
「あれ」は何度の進化を遂げたかも覚えていない。覚えていることと言えば最初は人型で、要塞にもなれることぐらいだ。今はまた人型と化し、その拳を振るい、攻撃する暇も与えてくれない。
轟音を伴い飛来する魔力弾を避けながら考える。魔法師団も、王国最高戦力の「黒」も失った現状で、何をどうしたら「あれ」に勝てるのだろうか。見渡す限り死体が転がり、大地に血がこびり付いている。
俺の魔力ももうのこりわずかだ。当たり前だ、一撃一撃に、宇宙を一つ作り直すほどのエネルギーが発生しているのだから。もう俺に選択肢など残っていまい。現状から考えられる、最悪の最善策。「あいつら」が天国で俺を見ているなら、ものすごい形相で罵詈雑言を吐くレベルだ。俺は覚悟を決め、詠唱を始めたーーーーー
はじめまして、サンと申します。初投稿につき至らぬ点も有るかと思いますが、温かい目で見ていただけると幸いです。忌憚なき感想お待ちしています!




