その4
私は宝くじ売り場の灯子 その4
私は宝くじ売り場の灯子。
ここの、宝くじ売り場で働いている。
時給は安いが、ここから見える人たちを眺めているのが好きだ。
お客さんM
うっぷ、
気持ちが悪い、
昨日、飲み過ぎた。完全に二日酔いだ。
今日一日、持つだろうか?
ビニール袋を用意しておこう。最悪の場合、ここに吐く予定。
しかし、こんな時に限って忙がしい。
次から次へと、お客さんが来る。
早くきれろ〜限界だー
うっぷ、
食道まで嘔吐物が、
うっぷ、
ダメだー
発射5秒前…4、3、2、1、
スゥーーーー
何だ、この爽やかな香りは〜
洗われる〜全身が洗われる〜
全身が高原の深緑に包まれる〜
ミントさんだ!(私が名付けた)
身体中からミントの香りがするお客さんだ。
あー気持ちいいー
吐き気が、飛んで行く〜
私は、深緑の中でワルツを踊る〜
タラララルラ〜
元気100倍!
ありがとう、ミントさん!
キラリ、
歯が光る。
笑顔も爽やかだ、
服も緑、
靴も緑、
髪の毛も緑だ、
それは、どうか?
お客さんF
まぶしい(サングラス着用)
キラキラしている。
このオーラは、芸能人!
サングラスをしているが、
この髪型、
この顔、
このスタイル、
福山だー
福山雅治だー
本物だー
超、カッコイイー
「ロト6、」
お金を出す姿もカッコいいー
同じ人間とは思えない。
「桜坂」を口ずさんでいる。
カッコイイー
「はい、ロト6です」
惚れてしまうがな〜
帰る姿もカッコイイー
サングラスを取る。
あっ!
違う、別人だ。
騙された。
よく見たら、一回り小さいぞ、
思い込みとは怖いものだ。
あいつは、福山モドキと呼ぼう。
お客さんN
プーン、
プーン、
パシッ、
逃したか、
さっきから、蚊が一匹売り場内に紛れ込んでいる。
この狭い売り場で死角はないはずだ。
プーン、
パシ、
逃した。
油断すると、私の柔肌を狙ってくる。
純心な乙女の血を吸おうとは、ふてー野郎だ。(血を吸う蚊はメスだが)
プーン、
パシ、
バシバシバシ、
はあ、はあ、はあ、
頭にくる!
キンチョールを撒くか、
ベープマットを着けるか、
どうする?
①キンチョールを撒くと狭い店内、自分にもかかって苦しい。
②ベープマットを着けると狭いので服に臭いが付いて臭い。
うーん、悩む。
あっ、お客さんだ、
「サマージャンボ10枚」
「はい」
プーン、ピタ、
お客さんの腕に止まった。
パシッ、
御臨終〜
吸血鬼との戦いは、あっけなく終わった。
一夏の、悪夢のような出来事だった。
そし、お客さんNはポリポリと腕をかきながら去って行った…
お客さんO
わーっ、
ゾンビが襲って来るー
たくさんのゾンビが集まって来たー
100人はいるぞ。
売り場を囲まれた、
絶体絶命だ!助けてくれー
ガチャ、ガチャ、ガチャ、
ドアを開けようとしている。
ドンドン、ドカドカ、
窓口から手を入れてくる。
助けてくれー
ガタ、ガタ、ガタ、
売り場を揺すっているぞ、
傾くー
ああー倒れるー
ダメだー
終わりだ…………
コンコン、
「ミニロト、ください」
お客さんOが目の前に立っていた。
「はいっ、」
夢だった。
ひどい夢だった。
しかし、近い将来、
あなたの街にも、
本当に、こんな事が、
起きるかも、しれませんよ…
ふふふふふ…
私は宝くじ売り場の灯子、
今日も宝くじを売る。walking dead