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日常で世界を変える(唐沢編)  作者: mei


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7月19日 ミーティング(安堵)

 大会まで残り10日。野球部は、黙々と坂道ダッシュを繰り返しているのを見ながら、俺は中沢たちとこれからのことについて話をしていた。この雨くらいなら、おそらく試合はするだろうなと思う。ただ、今日は練習だし無理に行って体調を壊しても困る。スマホの天気予報アプリでは、あと1時間で止むと言われていた。サッカー部だけでなく、野球部も大会が近づいており練習したいと思っているだろうなと考えていたのだ。


 ー7月13日ー


 スコアは、2対2。いよいよ、次が俺の3本目となっていた。ここまでの展開的にどちらが勝つかは全くよめない。ここで俺が決めることができたら、多少のリードとなる。問題は、工藤がどっちにヤマをはってくるか。それに限るだろうな。俺は、中沢の合図ともにボールをセットする。暖かい空気が肌を刺してくる。もしここで俺が決めれば、一気に優勢になる。ゴールキーパーにいる3年たちは静まり返っており、緊張感が漂っている。おそらく、先ほど工藤がゴールを決められなかったからだろうな。

 俺はゆっくりとボールの前に立ち、心臓に手を当てる。心臓の音が耳に響くくらい、興奮していた。ここで俺たちは、何度も何度も練習したんだ。今更、緊張することなんてないんだ。呼吸を繰り返し、精神を集中させる。過去の練習風景、チームメイトの笑顔がふっと脳裏をよぎる。俺の目の前に立つゴールキーパーの工藤は真っ直ぐな視線を向けながら、威圧感を放っていた。大丈夫、冷静にいけば。工藤が動きそうな方向はどっちだろうか?工藤の動きを冷静に見極めようとした。工藤は、少し右の方に動いている。完全に駆け引きが行われているみたいだった。

 工藤は揺さぶりをかけてくるが、気にしてはいけない。俺は微動だにせず決める方向をあえて右に決めた。すると、審判の中沢のホイッスルが鳴り響く。俺は、助走を開始する。一歩、また一歩。俺の視線はボールとゴールキーパーに。渾身の力を込めてボールを蹴り放った。あっ、右だ。既にボールを蹴り終えた俺は、ただただ祈るしかなかった。ボールは右ポストに向けて一直線。ゴールの隅へと向かって行く。ゴールキーパーの工藤は、外れると思ったのかジャンプすらしなかった。そのままボールはネットを揺らし、サッカー部の3年が大きな歓声が上がった。相田と富山はお互いに笑顔を示し合わせていた。俺が中沢の方を向くと、安堵の表情を浮かべ、喜びを噛み締めているようだった。

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