7月15日 ミーティング(左隅)
沢田と中沢は、ホワイトボードの前に立ち、フォーメーションについて説明していた。みんな納得しているのかどうかはわからないが、この前とは少し違う様だった。
ー7月13日ー
中沢「じゃあ、ルールはこの前と一緒。5本のうちに先に3本とった方が勝ち。先攻か後攻かはジャンケンで決めてくれ」
俺の前には、中沢と辰巳。横には、工藤。ゴールの後ろにその他の3年がいた。宝来に限ってはベンチで座っている。何を考えているかすらわからない。"はじめてくれ!!"。遠くから沢田の声が聞こえた。
辰巳「さっさと始めようぜ」
工藤「ジャンケンはめんどくさい。俺から蹴る。いいだろ?」
頷くしかなかった。俺は、ゆっくりとゴールの方へと歩いていく。正直、この戦いがどうなるかは俺にもわからない。今、気づいたけど工藤って、このチームで沢田に次いでPKが得意じゃなかったっけな?よくないことを思い出してしまった。俺たちは、戦略を考えるまでこれまでの練習試合のデータを全て洗い出していた。これまでの練習試合と大会で10本以上蹴った中で、俺は6番目だ。
【PK決定率上位10人】
1位 沢田亮二 91%
2位 工藤明弥 89%
3位 中沢初登 78%
4位 宝来海斗 77%
5位 唐沢悠太 76%
6位 井川直木 75%
7位 山﨑研治 74%
8位 依田雄二 73%
9位 辰巳慎之介 72%
10位 山岸町 71%
ボールをセットした工藤は、何かを考えている様だった。相田や川上たちが何かを言っている。コイツらは、俺のことを応援してくれているみたいだ。1発目、工藤はどっちに蹴ってくるだろうか?後ろにいた3年たちのざわめきが遠くに聞こえる中、俺は、左に蹴ると決めたのだった。審判の中沢は、静かに笛を鳴らした。キッカーの工藤は深く息を吸い込み、俺の方を向いた。一気に全身に力を入れたように感じる。少し下がり、勢いよく走り出した。左、左、左。蹴った瞬間俺は左の方に飛び込んだ。工藤のシュートはまっすぐにゴール左隅へと突き刺さった。やっぱり左だった。ただ、ボールのスピードが尋常ではなかった。ゴールに吸い込まれた瞬間、後ろにいた相田や川上たちから歓声とため息が聞こえてきた。さすがだな、工藤は。ボールを蹴り終えた工藤は俺の方へとゆっくり歩いてくる。少し遅れて俺は、ゴールネットに吸い込まれたボールを取り、キッカーの方へと歩き始めた。普通に考えたら、この後蹴るのは少しプレッシャーだな、そう感じてしまっていた。




